別れと始まり
先程まで光牙と創造神が話していた場所は、夢か幻ではないかと錯覚するほど変わり果てていた。光牙が創造神と話す前の状態。またもや、静寂がその場を支配している。
『行ってしまった、か。灰城光牙、不思議な人間じゃったな』
創造神は、何十、何百億年という長い時の中で光牙と話していた時間がとても楽しく、充実していた。と、自覚する。
『よもや、あのような人間がいるとは。地球もまだまだ捨てたもんじゃないの』
創造神は、光牙が持つ魅力に引き寄せられていた。神にとって、それはありえないことである。なぜなら、今までに前例がないからだ。
しかし、不思議と創造神は悪い気はしなかった。
そして、光牙が先程までいた場所に向けてポツリと呟く。
『異世界に渡るのに、神から力を与えられなくて不安に思うお主の気持ちも分かる。じゃがの』
創造神は、今までの比にならないほどの慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、
『お主には、自身が気づいていないだけで突出したものを持っておる。強靭な肉体、魔力の才能、人を惹きつけるカリスマ性。転生した先の世界で、伝説となるじゃろう』
その声が虚空へと消えていく前に、創造神は光牙の生き様を見ることを決心するのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ーー神は退屈であった
何もないこの場所にたった一人
未来永劫このまま孤独であることにーー
ーー天地を創造し
気を紛らわそうとしたーー
ーー万物の根源を与え
七体の精霊を生み出した
後の世に《霊王》と呼ばれるーー
ーー破壊と再生
世界は繰り返すーー
ーー神は何もしない
祝福も与えず
裁きを与えることもないーー
ーー誕生から終焉
自然のままを望む
絵本の物語を楽しむ子どものようにーー
〈レーシェル創世記 序章〉