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第二話 クラスメート。

今回はちょっと長いです。

「おはよー」

「はよー」


 愛佳と別れて教室に入ると、何人かの生徒が俺たちの方を見た。そして、数人の女子が寄ってくる。


「ゆーじおはよ! 元気?」

「ちょっとアリサ、下の名前は馴れ馴れしすぎでしょ」

「いーじゃんナナ」

「ユカも呼んでたしねー」


 うるっさ……。俺は顔をしかめた。健太と天音も嫌そうにしている。

 こいつら、なんか俺らにくっついてくるから嫌なんだよな。うるさいし。


「ねーねー、今日一緒に帰ろー!」

「いや、俺部活あるし」

「いーじゃん一日くらいサボったって」

「一緒に帰ろーよぉー」


 ぐいぐいと腕を引っ張られる。うっぜえ……。

 俺は健太たちに助けを求めようと後ろを振り向く。目が合うと、ちょっとにやにやされた。ひど!

 ……しかし。


「……ちょっと、俺の友達に絡むのやめてくんない?」

「え」


 口を開いたのは、天音だった。冷たいオーラを感じる。あーこれは、毒吐くな。


「ブスのくせに調子乗ってんじゃねえよ。裕二が嫌がってんのわかんねえの? バカ? 頭おかしいんじゃねーの」

「……っはー!? マジで最っ低! 金沢ウッザ!」


 なんか逆ギレしてる。でも、その女子たちは離れていってくれた。さすが天音。


「天音さんきゅ」

「これくらい余裕だし♪」


 無邪気に笑う天音が、逆に怖かった。余裕って……。いや、ありがたいんだけど。ありがたいんだけどさ。


「ほんと天音は怖いなー」

「なーにー健太ー?」

「うおやっべ」


 健太の何気ない言葉に反応した天音が健太を追いかけている。あいつ、陸上部だったっけ。速いなー。

 健太もサッカー部の中では速い方だけど、陸上部エースには敵わなかったらしい。とっ捕まえられていた。


「天音走んのクソはえーよ」

「だろー?」


 そんな感じで話していると、何かがが倒れる音とともに女子たちの悲鳴が聞こえた。目を見開いて音のした方を見ると、誰かの机が倒れていた。

 それを見て怯えたようにうずくまる女子の姿がある。そしてその子の前には、なんというか、怖い顔の男子が立っていた。なに、修羅場!?


「ふざけんなよお前!」


 男子の方が怒鳴っている。女子は怯えて頭を抱え震えていた。やべえ、全然名前わかんねえ。

 俺、名前とか覚えない派だからなあ……。どっちも顔は見たことあるような気がするんだけど、名前が分からない。まあいいか。

 そう思いながら様子を見ていると、男子が手を振り上げた。――――とっさに、体が動いていた。

 気づけば、俺は女子の前に立っていて、男子の手を掴んでいた。……うわ、やっちゃった系だ。


「なんだよお前、割り込んでくんな!」


 わめけばいいって話じゃねーだろ。こいつバカかな。無駄に声でかくて超うるさい。


「普通、男子が女子に暴力振るおうとしてたら止めるだろ」


 俺は男子のことを睨みながら言う。見上げないといけないというのが少し癪に障るけど、仕方ない。

 すると手を振り払われたから、もっかい睨んでおいた。あーウザい。ほんと、暴力しか頭にないやつはやだな。

 振り返ると、女子が震えていた。わ、こっちのがやばい。


「……大丈夫?」


 座り込んでいる彼女に合わせて俺もしゃがむ。女子はこくこくと頷いた。


「もう、大丈夫だから」


 そう言うと、彼女は少しだけ笑って、小さな声で「ありがとう」とささやいた。なんだか、あたたかい気持ちになった。

 その子は深呼吸をし、顔を上げてもう一度口を開く。


「ありがとう、浅井くん」

「ん!?」


 あれ!? この子俺の名前知ってる!?

 ……いや、もう七月だし、クラスメートの名前くらい覚えてるか。覚えてない俺の方がおかしいんだよな。


「ごめん、ちょっと名前分からなくて……」

「あ、私、平中(ひらなか)和子(かずこ)。よろしくね」

「え? う、うん、よろしく」


 何がよろしくなのかよく分からないけど。とりあえずよろしくと言われたのでよろしくと返しておく。

 平中、和子。なんか、和菓子を連想させる子だな……。見た目が。着物とか似合いそう。


「裕二、大丈夫か?」

「裕二かっこいー♪」

「あ、健太……と、天音」


 天音は相変わらずテンションが高い。なんかぴょんぴょん飛び跳ねてるけど気にしないことにしよう。てゆうかかっこいーってなんだ。

 健太に頭を撫でられながら話していると、さっきの男子の怒鳴り声がすぐ近くで聞こえてきた。


「ふざけんな!」


 うお、怖っ。まだ落ち着いてねえのかよこの男子。平中さんめっちゃびくびくしてるしやめろよな。これだから自己チューは……。

 するとそいつは近くにあった椅子を持ち上げた。えええええ! 振り上げたっ! 怖!


「わっ!」


 椅子は俺に向かってぶつけられそうになった。一応椅子の足を掴んで押さえつける。ちょちょちょ、俺を殺す気かこいつは。頭に当たってたらやばかった。

 後ろを見てみると、平中さんもう泣いてるし。とりあえず彼女の避難を天音に頼んだ。天音は能天気だからちょっとは和ませてくれると思う。

 一方、健太は男子の手から椅子を取り上げようとしてくれていた。男子が俺の方に体重をかけてきているから、さっさと椅子を取り上げてくれないと危ない。なんかクラスの女子とかも先生呼びに行ってくれたしそろそろ解決するかな。

 すると突然、男子が俺を睨みつけながら静かに言った。


「お前なんて……お前なんて死ねばいいのに!」

「は……!?」


 死ねばいいのに!? なんだよそれ意味分からん! 俺は普通に平中さん助けただけなんですけど!

 マジで意味分からん! バーカバーカ!


「何やってんだお前ら!」


 やっと先生が来た。救世主だ。

 椅子は取り上げられ、俺はなんとか無事だった。安心安心。

 ところで健太がまた頭撫でてくるんだけどなんですか。


「裕二、怖かった?」

「いや別に」

「そこは怖かったって言えよ!」

「なんでだよ!」


 健太の言ってることの意味が分からない。なんで怖くもないのに怖かったって言わなきゃいけないんだ。


「まー突然あいつが椅子振り上げたのはびくったけど、もしお前が死んでも俺がドラゴンボールで生き返らせてやるから安心しろ」

「黙れアニオタ」


 なんか健太って、すぐドラゴンボールネタ出してくるんだけど、なんなんだろうな。漫画とかアニメとかすげー好きなのは知ってるけど。

 でも、アニオタって言ったら怒るんだよな。あ、早速怒ってる。めっちゃ睨んできてる。


「俺はアニオタじゃない」

「いや、なに謙遜してるんだよ」

「謙遜じゃねえよ」


 健太、ボケもできるのにツッコミもいけるんだな。すげー。


「なーなー裕二、平中すんがもっかいお礼言いたいって」

「すんってなんだよ」


 天音が平中さんを連れてくる。ツッコミを入れているのは俺じゃなくて健太。健太、結局ボケとツッコミどっちにするんだよ。

 まあ、別にどうでもいいけどな。


「お礼さっき聞いたけど」


 俺が言うと、平中さんはふるふると首を横に振った。なんか小動物っぽい。


「言葉だけじゃ、足りないかなって。だから、その、なんか……私にできることがあればします!」

「えっ」


 なんか嫌な予感しかしねえ! 平中さんにできることってなんだよ! 名前も知らなかった俺が知ってるわけねーだろ!

 ……落ち着こう、俺。


「……じゃ、一個聞いてもいい?」

「はい」

「あいつと、どういう関係?」

「あいつ?」


 平中さんは首を傾げた。俺も表現に困る。というか分かってよ!


「だから、さっきの男子」

「あー……あの人は、彼氏です」

「彼氏!?」


 え、え、そういうのってある? え、彼氏ってそういうやつだっけ? あれ?

 俺そういうのよくわからないけど、とりあえず彼氏にしてはやばいよな? 殴ろうとしてたし。セクハラ? パワハラ? なんだっけ。

 混乱する俺をなだめようとする天音。あれ、この人こんなに優しかったっけ。


「じゃ、平中すんそれ別れた方がいいよ」

「や、やっぱりそうですよね……」


 天音と平中さんが謎の会話を交わしていた。疎外感がする。恋愛のこと、あんま分からねえからな、俺。


「裕二大丈夫?」

「なんか健太、さっきからそれしか言ってねえな」


 クラスメートの名前、覚えてみようかな。初めて、俺はそう思った。

こんな男の子に出会ってみたいものですわー(棒)

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