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肉だ、肉をくれ!

ドラゴンさん、敬語遣いにしました。

その方が萌え……げふんげふん。

 さて。懸念していたタイムリミットがあっさりと過ぎ去ってしまえば、人間の三大欲求が蘇ってくる。

 いや、そこ!変な想像しないように!

 食欲ですよ、しょ・く・よ・く!


 つまりですねぇ。一週間の果物&木の実生活に飽きてきたんです。

 切実に、お肉が食べたい!甘い物も食べたい!

 人間の世界にいきたーーーーーい!!!


「ルゥ、ルゥ。お願いがあるの。人間のいるとこまで連れていって」


 思い立ったが吉日とばかりに、昼食用の果物を持ってきてくれたルゥに頼んでみる。すると、ルゥは私の前でピタリと動きを止めた。


「?」


 そしてそのまま、首がうなだれるように下がった。金の瞳も下に向いている。


 なんだろう、この捨てられた子犬のような哀れさは。

 こんなに大きいのに、可愛いじゃないか!


 きゅうん、と胸がトキメク。

 あれだよね、可愛いは正義。

 図体がでかくても、可愛いなら許す。


 でもなんでこんなに、しおれてるの?眉毛があったら、絶対へにょ~んってしてそうな感じだ。


「ルゥ?どうしたの?人間のいるとこって遠くて行けない?」

「……シアは……」


 ルゥがチロリと私を見た。人間の瞳じゃない、爬虫類の瞳。だけど今ではとっても好きな瞳だ。金色じゃなければもっと好きなんだけどな~。

 まあルゥだから、それでも好きだけどさ。


「私とここにいるよりも、人間のいる所に行きたいのですか?」

「へ?」

「確かにシアは雛といえども人に近い姿をしていますけど……だから人の住むところへ行きたいのですか?」

「え、それ勘違いだよ!」


 ちょっと待った~!

 なんでそんな勘違いしちゃうの?


「私はルゥがいるから、ここで安心して生きていけるんだよ。今さら捨てようと思っても返品不可だからね!私が人間のいるとこに行きたいのは、ちょっと違う物を食べたいからなの。や、まあ、ルゥが持ってきてくれる果物とか木の実もおいしいんだけどさ、お肉とか甘い物が食べたいの~!」

「シアは……肉食なのですか?」

「いや別にお肉だけ食べるわけじゃないよ?果物も好きだし。でもたまにはお肉も食べたい!」


 はるか昔の記憶の彼方にある焼き肉が食べたいなんて贅沢は言わない。ステーキの醤油ソースなんて無理難題も言わない。

 せめて、ソーセージでいい。ハムでもいいから、何かお肉が食べたい~~~~!


 肉だ!肉をくれぇぇぇぇぇ。

 私は肉に飢えているんだぁぁぁぁぁぁぁ。


 だってさ、召還の陣の解明をしてる時はずっと非常食を食べてたんだもん。料理する時間があったら研究していたかったから、堅いパンと水だけで約1年を過ごしたんだよね。よく栄養失調で死ななかったなぁ。


「そう……ですか。分かりました。シアがそこまで肉を食べたいというのなら仕方ありません。私のしっぽの先でもいいでしょうか」

「しっぽ?」

「はい。堅いかもしれませんが、それでも良ければ食べて下さい」


 しっぽ……?

 しっぽって、このルゥのしっぽ?


「あの……一応聞くけど、ドラゴンのしっぽって切ったらまた生えてくる?」


 ドラゴンもトカゲの一種っぽいから、もしかして、と思ったけど。


「いえ。生えません」


 だよねぇ。だったらダメじゃん!しっぽ切るとか、痛いじゃないの!


「いや、食べないから!ルゥのしっぽは食べないから。っていうか、ドラゴンは食べないから!」

「そうなんですか?シアだったら食べられてもいいかなと思ったんですけど。それに雛のお世話は保護者の楽しみですし」


 お世話が楽しいのか。それは良かった。でもね。


「ルゥのしっぽ切ったら私は泣くからね!そんなに綺麗で立派なのに、切っちゃダメだよ!」

「綺麗、ですか?」


 しょぼーんとしていたルゥが目をキラキラとさせて私を見下ろす。

 くっ。なんだろう、この可愛さ。

 ルゥがこの大きさで良かった。もし腕に抱えられるサイズだったら、撫でまわして抱きかかえてひゃっほ~と踊りまくってたに違いない。


 や、でも、しがみついて撫でまわそう。


 思いっきり抱き着いて鱗をなでなでしていたら、ルゥがしっぽを丸めて私を包んでくれた。

 うん。これだよ、これ。

 やっぱり私の癒しの為にも、しっぽは必要不可欠。

 絶対に切っちゃダメ!


「ルゥは体も心も全部キラキラしてて綺麗だもん。だから私の為に鱗一枚でも失くしちゃダメだよ」


 本当に、ルゥは綺麗。

 生きるために動物を殺す事もなく、植物を殺す事もなく、ただ空気中の魔力だけを糧に生きている。

 きっと、だからこんなに綺麗。だからこんなに優しい。


 私とは全然違う、綺麗で優しいルゥ。

 でもお願い。こんな私でもずっと側にいさせて?


「分かりました。でも、お肉はどうやって手にいれましょうか」

「だから人間の住むところに行けば食べれるんじゃないかと思うの。町には食堂くらいあるんじゃないかなぁ」

「マチですか。それはどこにあるんでしょう?」

「もしかしてルゥって人間の住む所には行ったことない?」

「そうですね。そういえばありません。人間という生き物は見た事がありますけど」

「う~ん。適当に空から探せば見つかるかなぁ?」

「そういえば黒いのがよく人間のところに行っているみたいですよ」

「黒さん?へ~、そうなんだ」


 私にはドラゴンの名前が聞き取れないので、ルゥもお友達の事は黒いのとか赤いのとか呼ぶようにしてくれている。お友達がルゥを呼ぶ時は金の、だ。


 ふむ。そうなると、ルゥの名前を全然聞き取れなかった場合、私はルゥを金さんって呼ぶハメになっていたんだろうか。

 金さん……なんだろう。背中に桜吹雪が見えるよ。


「では私はちょっと黒いのに話を聞いてきますね。シアはここで待っていてください」

「うん、分かった。気をつけてね~」


 バサバサッと飛び立つルゥを見送った私は、とりあえず昼食用にルゥが採ってきてくれた果物でも食べて待っているかと、一番好きな桃に似た果物にかぶりついた。 

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