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そして異世界へ

 召喚の陣を見つけた私は、持てる知識を総動員してそれを解析した。タイムリミットは学園でパーティーが開かれるまで。

 運命の強制力なのか、必ずその日に私は断罪されるのだ。だからその前日までに陣を解析して異世界へと逃げ出さなければいけない。


 いや~。でも異世界か~。

 異世界トリップといえば、巻き込まれるのは日本人が定番だよねぇ。

 ってことは、この陣を解析すれば日本にいけるかも!?


 ああ、でも私の髪の色水色だ!

 どうしよう。目立っちゃうよね。


 はっ。そうだ。コスプレのフリをすればいいんだ!

 それでもってイベント帰りのオタクな男性を拉致って脅して、しばらく居候させてもらえばいいのよ!それでもって金貨も両替してもらって生活基盤を作ればいいんだわ。


 そうよ、私の未来は薔薇色に満ちているわ!!!


 なんて妙なテンションのノリで魔法陣解析をがんばった。


 そして執念のたまもので―――魔法陣の解析に成功して、召還の魔法陣を創る事ができたのは、学園のパーティーが行われる、まさに前日の事だった。


「やったーーーーー!」


 ついにやったわ!

 これで異世界ライフの始まりよ!


 さらばチート野郎!

 さらば、このくそったれな世界!

 もう巻き戻ってなんてやらないんだからね!


 誰に聞かせるともなくそう叫んで、私は意気揚々と魔法陣の上に立って呪文を詠唱した。


 魔法陣が白く光る。その光が私を包み込む。

 そして―――ー








 飛行機で離陸する時のような重力を感じた後、私を包んでいた光が消えた。

 

 私、異世界に来たのね!

 しかもちゃんと地面の上に立ってる!


 召還の魔法陣で、海の中とか空中とかマグマの中とかだったらどうしようかと思ってたけど、とりあえず地面の上に立てて嬉しい!

 ビバ、異世界!

 ひゃっほーーーーい!


 私は思いっきり深呼吸をした。

 私が生まれた世界とは違う濃厚な魔法の気配がする。

 ああ、ここはきっと日本じゃないんだな、と思った。


 空を見上げる。青空に……太陽が一つ。

 うん。それは前の世界とも一緒だね。

 だけど、うまく言えないけど空気が全然違う。あの世界じゃないのは確か。


 それに、今まで感じたことがないくらい体が軽い。


 なんだろう。もしかして巻き戻りは呪いで、その呪いが異世界に来た事で解けたとか?それでこんなに体が軽いのかな。


 ああ、でもそんなのはどうでもいいや。

 とにかく私は死神こんやくしゃから逃げ切ったのよ!

 ひゃっほ~~~~!


 このまま一週間逃げ切れば安心だと思う。大体パーティーで断罪後、それくらいで殺されてたから。


 まあ、とりあえず、ここでどうやって生活していくかを考えないとダメよね。

 あたりを見回すと、どうやらここは岩場のようだった。ゴツゴツとした岩がたくさんある。その岩に穴が開いてるって事は……これは溶岩?って事は、ここは火山?


 う~ん。火山には人は住んでなさそうだし……とりあえず人のいる所を目指すといいのかなぁ。

 第一村人が良い人だといいんだけど。


 そう思いながら二、三歩進んだ所で、大きな羽音が聞こえた。


 ん?鳥?


 私の頭の上に大きな影がかかる。見上げると同時に視界を埋め尽くす黄金。

 その黄金の塊は、私の目の前に降り立った。


「えっ、ドラゴン?!」


 それはどこからどう見てもドラゴンだった。

 前の世界も剣と魔法の世界だったけど、残念ながら魔物もドラゴンも存在していなかった。でも、目の前にいるのは、前世の想像でおなじみの西洋ドラゴンだ。

 象よりも大きい姿にきらめく黄金の鱗。こちらを見据える目も黄金だ。


 目が金色ってとこで、一瞬嫌なヤツを思い出したけど、でも、こうして見るとあの腹黒の目はメッキでこっちは純金っていうくらい、透明度が違う。それに、キラキラと煌めいていて綺麗だ。


「こんなところに雛が一匹でいては危ない。親はどうしたのですか」

「……は?」


 ドラゴンが喋ったー!

 ま、まあファンタジーの定番ではあるけどさ。

 実際、こうやって喋るとやっぱりびっくりするよね。


 って、ヒナって言った?

 ヒナ……雛?

 つまり子供だと思われてるって事?もしかしてここには人間なんて存在しないのかな?


「親……は、もういません。あの……行くところもなくて困ってるんですけど、どこかに私が住めるようなところってありませんか?」


 これがもし人間だったら、騙されたりする可能性もあるんだろうけど、ドラゴンだったらそんな心配はいらないんじゃないかな、なんて根拠のない想像で頼ってみる事にした。


「はぐれたのですか。可哀想に。それにしても弱そうな雛ですねぇ……」


 もしかして捨てられたのか、と小さく呟くのに、聞こえなかったふりをした。


 あれかな。ドラゴンって弱い個体だと捨てられるのかな。まあ野生動物ってそういうところ、あるもんね。ドラゴンが動物に分類されるかどうかは別として。

 や、でも、そうなると私もここで見捨てられる?!

 ドラゴンの集落には行かなくていいけど、せめて人間の住むところの 近くには連れていってー!


 

ドラゴンさん、敬語遣いに変更しました。

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