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ルゥはルゥだよね

 人間の姿のルゥと町を散策するのは、思ったよりも楽しかった。確かにグリードと同じ姿ではあるんだけど、ここまで雰囲気が違うと別人だな~と思うしかないというか。顔も声も一緒なのに、歩き方も笑い方も違う。ほんと、不思議だよね。


 最初はショックだったんだけど、なんていうか、良く似た双子と一緒にいるような感じって言ったらいいのかな。一緒にいる時間が増えていくにつれて、ルゥとグリードの姿が重ならなくなる。そりゃぁ、たまにドキッとする事がないとは言わないけどね。


 ふふふふ。101回も死んでやり直した私のメンタルをなめるなよー!

 これくらいで暗くなったりするもんかー!


 人間の町が珍しいのか、ルゥはキョロキョロと辺りを見回しながら歩いている。でも絶対に私からは離れない。なんていうか、あれだよね。カルガモの雛のようにくっついてきてる感じ。


 楽しいなら何よりですが……なんだか目立ってるような気がするのは気のせいでしょうかー!

 まあ、確かにルゥの美貌は目を引くもんね。仕方ないっていえば仕方ないんだけども。


「シア、シア、あれは何でしょうか?」

「えーと。屋台だね。簡単に食べれるものを売ってるんだと思う」

「あの布は何に使うのでしょうか?」

「なんだろうね……お土産ものっぽいけど、飾るのかなぁ」

「あ、あそこに、黒いのが!」


 えっ、っと思ってよく見たら、黒さんを描いたっぽい絵の事だった。

 なんだ。本人(竜?)が来たのかと思ったよ。

 一軒のお土産物の店先に、黒さんらしき竜を描いた絵が飾ってあった。よく見ると、他にも竜を描いた絵が飾ってある。


「あ、ほんとだね~。あ、他の色の竜さんたちもいる。ルゥいるかなー。あれ?ピンクの竜なんているの?」

「聞いた事ないですね~」

「……いたら可愛いかもだけどねぇ」

「金色は可愛くないですか!?」


 ガーンという表現がぴったりな表情をしたルゥが立ち止まった。

 え。可愛いって言われたいの?いやまあ、可愛いよ。可愛いけどね。でも色だけで見たら、金色より、ピンクのが可愛いと思うよ。ただ、金色はどっちかっていうとね。


「金色はカッコイイって感じかな~」

「カッコイイ、ですか。……それなら、そっちのがいいです……」


 ううっ。ポッと頬を赤くする成人男性が可愛いとは何事だ!

 普通そこは色気になるはずでしょ!くっ。何か色々と負けた気がする。


「ルゥはかっこよくて、可愛いわよ……」


 思わず言葉に出してしまって、両手で口を抑える。でも遅かった。感極まったルゥに思いっきり抱きしめられる。


「シア!」


 ぎゃーーーーー。

 ここは往来だってば!こんなトコで思いっきり抱き着かないでー!

 ほ、ほら。皆見てるよー!


「シアはとっても可愛くて綺麗です!どのドラゴ―――ぐむむ」

「しーっ。こんな人がいっぱいいるとこで、ドラゴンだなんて言っちゃダメでしょ!ルゥがドラゴンだってバレたら大変よ。神様なんだから囲まれてもみくちゃにされて、髪の毛抜かれるわ!」

「髪の毛を抜かれるんですか!?」


 ぎょっとするルゥに頷く。暴走した群衆っていうのはとんでもない事するからね。ルゥみたいにぼーっとしてるドラゴンなんて、すぐに身ぐるみはがされると思う。髪の毛だけならまだしも、服とかもボロボロにされるかも。

 あれだよ。前世での超絶イケメンの卒業式とかそんな感じだったもん。魔性の男って呼ばれた先輩は、卒業式の時に制服のボタンとか全部引きちぎれて、胸の刺繍すら切り取られてて、なんかもうボロボロな姿だったって噂だった。もちろん髪の毛も相当引っこ抜かれたみたい。それでもイケメンぶりに変わりがなかったらしいのが凄いけど。さすが魔性。


 周りを見た所、ルゥの美貌にぼーっとしてる人はいても、そこまでの感情ではなさそうだからそれほどひどい目には合わないかもしれないけどね。


 でも、恋してなくても集団は怖いからね~。これ豆知識。

 あ、思い出した。私も巻き戻った時の何回目かで、興奮した集団に囲まれたことがあったわ。魔女だって言われて、町の人に囲まれて、髪の毛も引っ張られて……

 最初の頃の巻き戻りの時だから、すっかり忘れてた。


「そうよ、油断したらつるっぱげよ」

「つるっぱげとは?」

「髪の毛が一本もなくなる事よ!」

「そ……それは何と恐ろしい……」

「だからこんなに人が大勢いるとこで、ドラゴンだってバレちゃうような会話はしちゃダメよ」

「は……はい。分かりました」


 さすがに私もつるっぱげにはされなかったけど、結構な量の髪の毛を抜かれたわね。凄く痛かったし、怖かった。


 あ~。やめやめ。今はルゥと楽しく散策してるんだから、昔の記憶なんてシャットアウトしなくちゃ!


「あれ?ドラゴンが戦ってる」


 売り物のドラゴンの絵は、空を飛んでるとか森の中で小鳥と戯れてるとか、ちょっと昔の宗教画みたいな雰囲気のものが殆どだったけど、その一枚だけは、戦っている姿を描いていた。

 そこに描かれているのは、ルゥと同じ金色のドラゴン。そして―――


「魔族?」


 その絵の中では、ドラゴンと、翼の生えた額に角のある黒い肌の人間が戦っていた。

 そして私はそれと同じような構図の絵を知っている。前の世界で宮殿とか神殿に飾られていた、神話を題材にした絵だ。そこではドラゴンの代わりに勇者が魔族と戦っていた。


「この世界にも魔族がいたの……?」


 ポツリと呟いた言葉にルゥが答えを返してくれる。


「私が生まれる前にはいたみたいですよ」

「今は、いないの?」

「そういえば、いないですね。何ででしょう?」


 魔族がいた事は知ってても、なぜいなくなったのかは知らないんだ。なんて言うか、ルゥらしいというかドラゴンらしいというか。興味のない事は、一切追及しようとしないよね。


「神殿で聞くと分かるかな……」


 あ、それよりも手っ取り早い事がある。


「おじさーん。この絵、構図が素晴らしいわね~。どの戦いの場面なの?」


 ルゥの美貌に気後れして、私たちに声をかけられなかった土産物屋の主人の方に歩いていって声をかける。そう詳しい話は聞けないだろうけど、この絵を売ってるって事は、それにまつわる話を知っているだろう。


「お嬢さん、お目が高いね~。それはクレマティスの戦いを描いたものさ。ほら、よく見ると魔族の翼が少し千切れているだろう?」

「そうね、気がつかなかったわ。他の戦いの絵はないの?」

「これもお勧めですよ」


 そう言って出してきたのは、背後に人を庇って魔族と戦う黒いドラゴンの絵だった。なるほど。過去に魔族から人を守ったから、この世界でのドラゴンは神様扱いなんだ。

 でもそこで疑問がわく。あのドラゴンたちが人を守って戦うなんてこと、するんだろうか……?興味のない事には一切意識を向けないドラゴンが……?

 まあ、後でルゥと黒さんに聞けば分かるかなぁ。それともドラゴンさんの中で一番長生きしてる人に聞くとか。一番長生きしてるのって誰だろう?灰色ドラゴンさんかな?


 でも、どっちにしても、この世界に魔族がいて、それをドラゴンたちがやっつけたって事なのね。

 とりあえずもういないから、問題ないよね!


 私は話を聞いたお土産物屋さんから、一番安い絵を買った。青い空に金色のドラゴンが飛んでるだけの、小さな絵。でも、ルゥを描いてるみたいで、買うならこれしかないなって思ったの。


「ね、これルゥに似てる」

「私はこんなに鱗が荒くないですよ」

「もちろんルゥの方が綺麗なのは知ってるよ。でも金のドラゴンってお守りになりそうじゃない?」


 こっそり囁くと、ルゥはまたその白い頬を赤く染めた。


「こんなのより、私の方がたくさんシアを守れます」

「うん。頼りにしてる」


 そう言うと、優しいドラゴンはもっとその頬を赤くしてしまった。


「大好きだよ、ルゥ」

「私もシアが大好きです」


 見つめあって、微笑みあう。


 これまで生きていて良かったな、って、初めて思った瞬間だった。



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