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1回目と2回目

 私は目の前の光景を冷めた目で見ていた。

 金髪金目のそりゃあもうこの世の物とは思えない絶世の美男子が、ピンクの髪の美少女と軽やかに踊っている。

 金髪金目の方がこの国の王太子で私の婚約者だとか、ピンク頭が男爵家の庶子で最近男爵家に引き取られたばかりだとか、それなんて乙女ゲー?って設定だけれども、さすがにこの光景を見るのが101回目ともなれば、特に何の感慨もない。ああ、私が殺されるまであと一年なんだなぁと思うだけだ。


 そう。一年後の学園主催のダンスパーティーで、私は婚約破棄を言い渡され、身に覚えのない罪で投獄され処刑されるのである。


 そもそも私には前世の記憶があった。物心ついた時にふっと思い出した前世の私は、ごくごく普通のOLで若いうちに病気で死んでしまったらしいという事だけだった。

 そんな平凡な人生を送った私が、今世では公爵令嬢で絶世の美少女の勝ち組に転生したのだ。そのまま鏡の前でひとしきり喜びまくったのは仕方ないと思う。


 しかも婚約者は、将来絶対美形になる事間違いなしの、この国の王太子様だった。

 これぞキング・オブ勝ち組と言わずして何と言おう。

 何もしなくても将来の王妃様だ。


 思わずひゃっほ~っと踊りまくったのも仕方ないと思う。


 うん。まあ、侍女たちには思いっきりドン引きされたけど。


 ただ誤算は、王太子妃となる教育がめっちゃくちゃ厳しかった事。自国の歴史や貴族名鑑を完璧に覚えて、最低でも五ケ国語をマスターしてその国の歴史を覚えて、ダンスも刺繍も完璧にできるようにならなくちゃいけないんだもん。

 前世の私なら、絶対無理だ~って言って泣いて逃げたと思う。


 ただ今世の私ってば色々とハイスペックだったらしくて、努力すればどうにかなったのが幸いだった。

 正直、婚約者に惚れてなければ絶対できなかっただろうけど。


 そう。チョロインな私は、超絶美形でチートな婚約者の事を、本気で愛していたのである。


 だからがんばった。

 勉強も、人付き合いも、何もかも。


 貴族なら必ず通わされる学園に行ってからも、将来の王妃となるべく日々研鑽していた。


 未来は薔薇色に輝いていると信じていた。

 でも、そんな物は幻想だったと思い知らされたのが、学園に入ってから一カ月後の事だった。


 学園に滅多にない編入生がやってきたのである。

 それが目の前で我が麗しの婚約者様と踊っているフローラ・ダルマン男爵令嬢である。


 彼女は男爵家の庶子なんだけれども、実母が病気で亡くなったのをきっかけに、正妻との間に子供のいない父親に引き取られた。ほぼ平民といっていいくらいの環境で育てられた女の子だ。

 だからなのか、その天真爛漫な性格に、学園のエリートたちは皆コロっといってしまった。


 うん。ほんとにね。どこの乙女ゲーだと思ったよ。こんなの本当にあるんだーって。


 もしかしたら本当にここは乙女ゲームの中で、彼女がヒロインなのかもしれない。それくらい、世間は彼女に優しかった。

 そして私は悪役令嬢の立場だって気がつくのに、そんなに長くはかからなかった。


 だってさ、明らかに婚約者の見る目が違うんだもん。

 私と会う時もそりゃあもう紳士で優しいよ?でも、あんな風に焦がれる目はしてない。


 それでもさ、がんばったんだよね。

 もちろん悪役令嬢になるわけにはいかないから、イジメとか何もしてないし、なるべく皆に優しく、婚約者にも私って優しいんですよアピールをして。


 でも、ダメだった。

 世界の強制力とでも言うのかな。やってもいないイジメの首謀者にされて、フローラ嬢への殺人未遂の罪で牢に入れられて処刑されちゃったの。

 ギロチンじゃなくて一思いに死ねる毒薬だったのが、まだ不幸中の幸いってトコかな。


 死んでいく時に、何もかにもに絶望して。

 だけど次に生まれ変わるなら、悪役令嬢以外がいいな、って思ってたのに……


 気がついたら、私は学園にいて、編入生が紹介されるのを呆然として見ていた。


 しばらくして、時間が巻き戻ったんだって分かった。

 きっとこれは神様がくれたチャンスなんだって。


 でも前回だって私は何も悪い事なんてしてなかったのに断罪された。

 だったら、どうすればいいかと考えて―――


 思いついたのは、断罪される二年後まで領地で療養する事だった。

 私が学園にいなければ、冤罪をかぶせる事もできないもんね!なんて、領地でのんびり暮らしていた私に起こったのは、二年後のお家断絶だった。


 正直、ありえないと思った。

 だって公爵家だよ?王家の血も引く、尊い家だよ?

 それが国家転覆の罪で一族郎党処刑ってさ、一体どういう事って思うよね?


 確かに父は貴族らしい貴族ではあったけども、それでも国家転覆を企むほど今の王家に不満なんてなかったと思う。それだったら私を王妃にしてその子供を王位につけて外戚として実権を握ればいいんだから。

 まああの婚約者チートがそんな傀儡扱いに甘んじるかどうかは別として。


 そして一族の男は末端にいたるまで斬首されて、女子供は服毒して刑に処されることになった。


 

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