‐後編‐ 想い
「私のせいじゃない?何で?」
『あの時絢を助けたのは僕の意思でやったんだ。…そうだろう?』
「………」
『だから良いんだ。絢は何も悪くない、だから時間を戻す何て、しなくて良いよ』
由詠は絢の頭を撫でて、微笑んだ。
それを見て絢は、泣きそうになった。
「ごめんね、由詠…ごめんね…」
『だから良いって』
由詠は再度、絢に触れようとした…が。
『…っ』
絢に触れようとしても、通り抜けてしまう。
「あ…」
絢も目を見開いた。
『もう、お別れだ』
「…うん」
由詠が霊なのは分かっている。
だからずっと此処に居れる訳ではない事も分かる。
「バイバイ、ありがと」
『うん。もう、大丈夫?』
「大丈夫、時間を戻そうなんてもう、思わないよ」
「…ちゃんと、前を向いて歩いてく」
『―うん。』
由詠の体が薄れていく。
そして、殆ど見えなくなった時。
「さようなら、…大好き」
絢はそう、呟いた。
『…時間は…もう良いの?』
後ろから時使いの声がする。
「うん、色々ありがとうね、時使いさん」
『―いいえ。…本当に良かったの?』
「…うん」
「ちゃんと会えたし、それに…」
『それに?』
絢は泣きそうなのを抑えて笑った。
「由詠は、何時だって傍に居るって、分かったから」
『そう。…泣いても良いのよ?』
絢は時使いの方を向いた。
「良いの?」
『良いわよ。』
絢は時使いに抱き付いた。そして、
「うわぁぁぁんっ」
あの時の様に、大声で泣いた。
―そうね。そうなのかも知れない。
時間を戻す事によって全てが変わる。
でも―…きっと。
きっと、時間を戻さなくても、変わることは出来る。
前を向いて歩いていけば…
そこには、きっと。
何かが在るはず。
だから人は、歩いていかなければならないのだろう。
喩え苦しくても。辛くても。
時間に支配された、この世界を。
そしてこの国は、耐えられなくなった人の為に存在する。
―時間を巻き戻す為に、存在する。