表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

‐前編‐ 願い

「此処は…?」

気が付いたらそこは、何も無い、ただ、黒く染まっただけの空間だった。

『…今日は。』

突然何処からか声が聞こえて来た。

「誰なの?」

そう、小さな声で言ったのに、私の声は真っ黒な空間の端から端まで響いた。

『私は名も無き存在。ようこそ、1228番目の迷い子。』

頭に響く低い声と共に、レースの付いた黒いドレスを着た銀髪の女性が黒の中から現れた。

「―貴方は…?」目をぱちくりさせながら問いた。

『…此処に訪れた迷い子に救いの手を差し伸べる』

銀髪の女性は一瞬、私を見つめて。

『―時使い、よ。』

「ときつかい?」

私は頭に疑問符を浮かべて首を傾げた。

『そう、時使い。貴方が戻して欲しい時間に戻してあげる。』

言われて私はうーん、と唸った。

戻りたい時間に戻れる。

それは、何時いつだっけ。


―私が、戻りたい時間は。


ふと、ある人の顔が頭に浮かんだ。

私の、大切な人。



「由樹ーっ!」

少し遠くに居る男の子に声をかけた。

「絢。良かった、来てくれて」

傍に駆け寄ると、由樹はホッとした様に微笑んだ。

「だってせっかく由樹が呼んでくれたんだもん。…で、話しって何?」

聞くと由樹は申し訳なさそうな表情カオをした。

「由樹?」

「……驚かないで、聞いてくれる?」

そう言う由樹の顔が暗かった。

「? …うん」

「実は…」

「…―え?」

由樹が言葉を発したその時、大きな風が吹いた。

「…っごめん」

由樹は踵を返し、走り去って行った。

「…嘘……」

取り残された私の瞳から、雫が垂れた。

「うわぁぁぁんッ」

私は泣くしかなかった。泣く事しか出来なかった。

あの言葉を聴いたから。

風が吹く中、あの言葉を聞き咎めてしまったから。


『―由詠が死んだ』





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ