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テスト6日前。ここは抑えておきましょうね。

今日は過ごしやすい陽気で実に快適。

そして、机に向かって目を通しているのはもっとも苦手とする教科

極め付けに子守唄のように柔らかく紡がれる教師の声・・・

これはもう、寝ろと言われているようなものだと手鞠は思った。


「あっ、手鞠ちゃんが夢の中へ・・・」

「あーあ。」

放課後一緒にテスト勉強を教えて貰いに来ているクラスメイト達の声がふわふわと聞こえる。

私はとてつもなく眠い。そして勉強をしたくない。お願いだから寝かせて欲しい。



「えーと、どうしましょうねぇ。」

「どうもしない。」

「ちょっと!しゅおちゃんセンセも瑛も見てないで起こすの手伝えよ!」

この乱暴に体を揺さぶられるのが分かる。この荒っぽい手付きは騎士だ。

まずこの穏やかなのほほん教師な渚生先生はそんな荒っぽい真似はしない。

そして瑛は基本的に我関せずだ。


「でも、夜な夜なのテスト勉強で疲れているのかもしれないし・・・」

「ちょっ、しゅおちゃんセンセは優しすぎるよ。それに瑛と違って手鞠ちゃんだってオレと同じく創話美術かなりヤバイよ!!」

てーまりちゃーん!と煩わしい騎士に自然と眉間に皺がよる。

揺さぶる手は容赦が無い。

そして、起こそうとはしないが止めようともしない他の二人

流石に堪忍袋の緒が切れた。


「うっさいのよ、ぴーすけ!」

「うおう!オレは手鞠ちゃんの事を思ってしたんだよ、それにオレはぴいすけじゃない!!」

「良いじゃない、ぴーすけ可愛いわよ。」

「そりゃ・・・可愛いけど・・・って違う!今は勉強中だぞ。」

むきー!とでも言うように騎士に睨まれる。

確かに今回のテストは本当にヤバイ。病欠して逃走したい位にヤバイ。それはお互いに。

それでも勉強はどう頑張っても嫌いなのだ。

だから出来る限りこの時間を短くしたい。

だけれど、それを見抜いたかのように瑛に頭を撫ぜられた。

それによりもう一度話題を逸らす為に出そうとした言葉が止まる。

「ぐっ・・・」

瑛の成績は悪くない、しかもこの創話美術に関してはトップクラスだ。

なのにこうやって赤点ギリギリの馬鹿共の我侭に勉強に付き合ってくれる。

口数が少ないのと乏しい表情で分かり難いが彼は優しい。

最後の悪あがきを封じられた気がした。


「ほら、もうテストまでは時間が無いんですからね。

せっかく御剣君も付き合ってくれてますしぼくもしっかり教えますから、二人とも赤点取ったら怒っちゃいますよ?」

「「はぁーい。」」

渚生の声を皮切りに今度こそ真面目に勉強会が始まる。

気を振り絞って机に向かう。テスト対策用のプリントはまだまだ白さが目立っていた。

渚生の解説の声と文字を書く音が響いた。


「ここの論理は抑えておきましょうね。」

「ねぇしゅおちゃん、これテスト出る?出る?」

手鞠の言葉に渚生は固まる。

その反応を見てテストへの希望を感じた。

「えっ、マジでこれテスト出る!?」

隣の騎士からも嬉しそうな声が漏れる。

創話美術の成績が彼女よりは良いものの芳しくない彼は目が輝いている。

「えーと、ですね。それは・・・」

渚生の顔が曇っていく。

きっと彼は嘘を付くのが下手だ。

この論理は完全に赤丸チェックだろう。



「・・・てか、それ今回の範囲の基礎中の基礎だからまず覚えてないとテスト0点だよ。」

瑛の呆れた言葉だけが教室に響き、あまりの出来の悪さに肩を落とす渚生の背中を同情して叩いていた。





テスト6日前のお話





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