ドリー.
昔…。まだ、僕の羽が白かった頃と同じように街を歩く。
なんだか、周りからの視線が痛いなぁ。
「ねえ、あれってフォールじゃない?」
「やだ本当!あの子、悪魔になったんじゃ?」
僕に対しての声が聞こえる。
僕は地獄耳ってこと、みんな知ってたハズだけどな。
もう忘れちゃったのか。
「ま、どうだっていいケド。」
ポツリと呟いた言葉は誰にも聞こえていない。
さて、これからどうしようか。
結局、悪魔にはなれなくて中途半端にかえってきてしまった。
頼れる肉親もいない。
かといって、キララも無理そうだし…。
「お前、フォールか…?」
「そうだけど?」
僕の目の前に、やっぱり僕とは違う白い羽の男があらわれた。
背が高くて、少しむかつく。
誰だ?
「やっぱり!久しぶりだな!」
「久しぶり、って言われても…。悪いけど、キミのこと覚えてないなぁ。」
「あっれ?忘れちゃったのか?俺だよ!ドリー!」
「ドリー…?」
どこかで聞いたことのある名前だな。
少し考えてみたけど、思い出せない。
「ゴメン。思い出せないや。」
「そっかぁ…。ま、最後にあったのもだいぶ前だしな!」
「僕とドリーは、どこで会ったことが?」
「学校だよ!俺、お前の後ろの席だったろ?」
「学校…。…あ。思いだしたかも。」
「ホントか!?」
そうだ。思いだした。
ドリーは、クラスメートだったなぁ。
昔は仲が良かったと僕は思っているけど、今はあまり関わらないほうがお互いの為かな。
「キミのことは思い出したけど、キミは僕みたいな奴と関わらないほうがいいんじゃない?」
「なんでだよ?」
「僕は堕天使といわれる存在だよ?こんなのと一緒にいたら損しかないんじゃない?」
「お前、自分のことマイナスに考えるの変わってねえな!」
ハハハ、と大きな声で笑うドリーに、少しムッとする。
「フォール!お前どうせ行く宛てないんだろ?俺の家に来いよ!」
「は?」
「心配すんな!家には俺しか住んでないんだからよ!」
とても、ありがたい話だ。
でも、ドリーには両親と妹がいたはず。
それに、まだ一人暮らしをする歳でもないだろう。
「それは嬉しいけど、ドリーの家には家族がいるだろ?」
「いないよ。」
「嫌だなぁ。嘘なんかつくなよ。」
「いないんだ。死んだんだよ、みんな。」
「え?死んだって…」
「あーあー!この話は、また今度な!!とりあえず、来い!」
「え、ちょ、ちょっと!おい!ドリー!」
そしてそのまま、僕はドリーに腕を引かれて家まで走らされたのだった。