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序章
つまらない。
窓の外をながめながら増川遊里は思った。
教室の、窓側一番後ろの席。何をしていてもとくに怒られることはない。
「つまらない」
声に出してみても誰も気がつかない。
毎日変わらない空、教師、同級生。
何か、起きないだろうか──。
その時、教室のドアが開く音がした。遅刻か、と思ったが、そこには美しい女子生徒がいた。
「藤原キリトです」
彼女は軽く礼をした。
「じゃあ……増川の隣でいいか」
ちょうど遊里の隣が空いている。一斉に遊里のほうを振り向き、睨んだ。
編入生は気にせず遊里の元へ近づいてくる。
鞄を机に置き、勢いよく椅子に座った。
遊里はキリトを見つめる。
「何?」
不思議に思ったキリトが話しかける。まだ先生の話は続いているようだ。
「いや、気にしてないの?」
未だに遊里のほうを睨んでいる生徒がいる。
「だから何が」
「わかんねぇ? なんか、視線とか」
「……別に」
キリトは前を向いた。遊里はため息をつき、窓の外を見た。
「……今日も寒いな」