可哀想な魔王の話
初めて短編でコメディー書いてみました
太古に勇者によって魔王は封印された。
しかし最近になって魔王は復活しました。
しかし当時の恐ろしい面影はどこにもなく、今は唯の普通の女の子みたいな感じになって復活してます。
「魔王様、勇者達が魔王城にたどり着きました。」
ここは魔王城。RPGでは最後にたどり着く場所。正直陰気くさい。
「え〜!?もう来ちゃったの?めんどくさいー。で、何レベル?」
コタツの中で再放送のちび○るこちゃんを見ている魔王。ちなみに魔王城があるのは極寒の地のような場所なので正直魔王様も寒いらしい。
「はっ!え〜と勇者87、武道家87、賢者85、ブラックマジシャン87ですね。」
「お〜いネコ〜。かぁいいなぁお前は〜!!うりうりぃ!今日も寒いなぁ?」
魔王はネコをもてあそび始める。肉球をぷにぷにとつついたりしている。
「話し聞けよ…。現実逃避をしないでください。」
「だってさ〜!!どんだけレベル上げてんの!!勇者達そんな暇人じゃないっしょ!?しかも何!?ブラックマジシャンって!!?」
いきなりあせりだす魔王。威厳のかけらも見つかんない。
「そんなこと言われても…。ていうか人費削減とか言って最初に一番弱いモンスター送るからですよ。魔王城にいるモンスター一体送るだけで倒せたのに…。」
「レベルが低いうちに倒しとくんだった……。ねぇ〜どうしよう?」
膝ががくがくしてる魔王。これはもう本気で駄目かもわからんね。
「では最初はその人間に近いお姿で油断させてみては……。」
「アホ!!本性現す前にそのまま殺される可能性のほうが高いわ!!あ〜!!名前が『ああああ』とか言うやつに殺されるのは嫌〜!!」
誰だって嫌だよ。ていうかその名前にすると名前の神様が怒るはずなんだけど…。
「あ、報告です。勇者達が中ボス倒しました。どうします?」
「あ〜も〜!!こうなりゃヤケよヤケ!!金で傭兵でも雇って!!お年玉無しでいいから!!」
「間に合いませんよ…。それでは勇者達に宝箱取らせてそこを写真に撮ってソレを警察に送っちゃえば?」
「それも駄目!!勇者だからとかいって釈放されるに決まってる!!あ〜も〜、やっと封印が解けて自由になったのに、もう昔みたいに悪さしてないんだよ〜!!なのに殺されるんだよ!?泣けるって…。」
魔王様、本気で困ってる。
「まぁ倒されても仲間になりたそうな目で見ればなんとかなるんじゃないすか?」
「バカ〜!!私にだってプライドはあるもん!あ〜もうあれだ。魔王の特権使う。 1ターンに3回行動してやる!」
お、そこは魔王としてのプライドが勝つんだね。
「でも勇者は4人パーティですぜ?1ターン3回行動して倒せるんですか?」
「え〜、なんで勇者は4人なの?私一人なのに〜。じゃあタイマン張るよ。タイマン。んで勝ってやる!!」
「はぁ〜。なるほど。しかしそれでも勝てるとは限りませんが…。」
「うるさい!!口答えすんな!喰らえイオナズン!!」
魔王はとうとう切れてご自慢のイオナズンを放つ。
しかし側近は呆れた感じにはぁっとため息をつくと呪文を唱える。
「マホカンタ。」
バキィン!
自分の放った技が自分に帰ってくる。
ズゴムシャ!!
わけのわからない効果音がし、魔王に呪文が直撃する。
「うっうっ……あんた絶対殺す…。ヒック…ヒック。」
コタツも吹っ飛びみかんが散乱し、魔王は泣きじゃくる。
これほど決戦にふさわしくない場面はあるのだろうか?
「あ〜も〜泣かないでください魔王様…。ほら、鼻かんで…。」
側近も呆れた様子でティッシュを取り出し魔王の鼻にあてる。
「エグ…ヒック……自分でやる……。」
魔王はヘタリと座り込み鼻をかんで落ち着いた。
「……うん…。悪かった……。だからほんとにどうしようか?そろそろほんとにヤバイ気がする…。」
「ん〜……もういっそのこと隠しダンジョン開いて隠しボスをラスボスってことで。」
側近のいきなりの発言!!
「え!?いいのかソレ!?でぃれくたーさんに怒られちゃうよ!?でもまぁナイスアイデアだね。ていうか隠しダンジョンって入り口どこよ?」
「ここです。」
そういって部下はコタツをどかす。
するとア〜ラ不思議。階段があるじゃない。
「ええ!?これ階段だったの!?私ほりごたつかと思ってた。つーことはさ、勇者達にこの部屋を通れと?」
「ええ。そうですよ?」
いくら魔王といっても今は悪さをしない、普通の女の子のようなもの。自分の自室を赤裸々にするのは耐えがたい屈辱であろう。
「……やっぱダメ…。この部屋に通すのは私が死んだ後にしといて……。」
やむなくこの提案は却下される。
「よし!!それなら世界の半分あげるってことで手打ってみる。」
魔王はいきなり大きく出た!!
「ダメですよ。魔王様の土地じゃあないんですから。」
現実的な話を出されこれも却下される。
「じゃあもうこれでいく。『勇者が!!泣いて許してくれるまで!!私は謝るのをやめない!!』」
「プライド持てよ…。」
「な……!?タメ口ィ!?」
もう魔王の地位もプライドも地に落ちたと見える。
魔王が倒されるのは時間の問題だ。
「勇者達はさ、私の姿見たことないんだよね?」
「ええ、多分。」
魔王はコタツを元に戻しながら側近に聞く。
「じゃあさ、適当にソレっぽいやつ魔王にしてさ、影武者立ててやり過ごしちゃおっか。」
魔王はコタツに首元まで入り両手でがっちりとコタツの足を掴む。ここですでに魔王はコタツから出まいと篭城戦を決行している。
「まぁそれでいいなら…。では適当に仕立てておきます。」
「お願いね〜!!」
側近は魔王の部屋を後にし、部下を集めに行く。
「っつ〜わけで、こん中から魔王様の影武者を選出する!!」
みんなを集め『第一回魔王になってみよう!』企画を開催する魔王の側近。
しかしブーイングの嵐。
「ふざけんな〜!!おまっ!!それ魔王自分で戦えよ!!」
「俺死にたくないよ〜!!も〜俺勇者側に寝返るぞ!!」
当然と言えば当然か。
「そもそもお前!!あんな魔王で正直いけると思ってんのか!!情けないと思わんのかぁ!!」
部下の一人が魔王の側近に指摘する。
「……ぶっちゃえ無理ダト思ッテマス……。はい。」
腹心の部下にすら呆れられている魔王。
そもそも昔は強大な魔王だったのに今となってはただの女の子。
みな疑心暗鬼になる。
「そもそもあれモノホンの魔王かぁ!?封印されてる間に『ドクターレオン』に『時空を捕らえました。』とかいってすり替えられたんとちゃうんかぁー!!」
「その後『コンプリート!』とかやってるぜ!!ぜってぇぇ!!」
とうとう魔王偽者説まで流れ始める。
あぁ…、もうあかんわこの組織。
部下の皆さん、各々の思惑が交錯してますね。
「まぁまぁ皆さん落ち着いて…!じゃああれだ、くじ引きでいこう。」
皆を落ち着かせるために公平にくじ引きを提案する魔王の側近。
なにやら最初から決まっていたかのようにクジ箱を取り出す。
「じゃあまず私から…。」
そういって発案者の魔王の側近からくじを引く。
「なっ…!!?」
いきなり『当たり(笑』と書かれたまるでガリガリ君の当たり棒のような当たりを引く魔王の側近。
広場に広がる静寂。
魔王の側近はソレを箱に戻す。
「ッていう感じにやるよ!!今の練習!!」
強引なやり直しに一同暴動を起こす。
「ふざけんなテメェ!!お前で当たりじゃろうがぁ!!」
「潔く死んでこいやぁ!!」
「お前が死んでも別に支障はないんだよ!!」
など魔王の側近より地位は低いはずなのに言いたい放題言う部下共。
さすがの魔王の側近もキレる。
「うるせぇぇぇ!!お前等、アレだよ!!特別な中ボスは1ターン2回行動じゃヴォケ共!!悔しかったら中ボスになってみろ雑魚共!!ていうか俺を倒してみろー!!」
「上等だーー!!みんな、こいつ囲んじまえ!!一度に4人でかかるぞ!!」
「下克上じゃー!!」
いっせいに反乱を起こす部下共。
「うらぁー!!来いやぁ!!皆殺しじゃぁー!!」
本性を現す魔王の側近。
勇者が来る前にもう仲間割れが起きている。
その頃当の本人の魔王はというと。
「うりぃー。ネコー!!お前かわいすぎるぞー!!うりゃうりゃ!」
部下共が暴徒と化しているとは露知らず、自室でネコと戯れていた。
ちなみにその頃勇者一行はダメージを受ける床で人知れずひっそりと息絶えていた。
もう勢いで書いたものです^^;
楽しんでいただけたら幸いです