定期。
「――どうしよう…」
店を出て、友達と別れた香代は、自分の定期がないことに気付く。それがなくては色々と困るのだ。探さなければならない。しかし、どこに落としたかまったく検討がつかず、その場に立ち尽くしていた。
――と、その時。
――〜〜♪♪
突然鳴り響いた、お気に入りのビートルズの曲。もう少し聞いていたかったが、急用だと困るので、しぶしぶ携帯を開く。
着信:t-k-s.going-my-way@xxxxx.ne.jp
件名:崇史です。
「たっ、崇史くん!!」
何故だか自分でも分からないが、驚きの声を上げてしまった。直ぐ様周囲の視線が痛いほど香代に突き刺さる。香代は自分の恥を紛らわすように、慌てて目線を携帯の画面に戻した。
本文:あ、崇史だけど…。実は香代ちゃんの定期拾ったんだ。届けに行きたいんだけど場所わかんないんだよね。
なんと、探していた定期は崇史が拾っていた。知り合いが拾っていたことにひどく安堵した香代は、その場にへたりこんでしまった。また周囲の視線が香代に注がれる。
――っ!!!!!!!!
そうだ。思い出した。今は安堵している場合ではないのだ。定期入れに、見られたくないものが挟まれている。もし、崇史がそれに気付いたら…?
地面を蹴るような感覚で飛び上がる。携帯をきつく握りなおし、いつもの倍のスピードでメールを打つ。(実際はいつも通りの速さだった
本文:崇史くんありがとう!定期探してたの!助かる!今どこ?あ、そうだ。さっきのお店の前にきてくれませんか?おねがいします!では、また後で!
少々強引だったが、定期が見つかって、そして、見られたくないものが帰ってくるのが嬉しかった。
あー、なんかもぅ放置してました。更新頑張ります。文学の方で『徒然日記』新規するつもりなので、よろしくお願いいたします。