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Calling  作者: 式部雪花々
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第44話 第二ボタン -1-

卒業式が終わって部室棟の前で和泉沢先輩を待っていると、


しばらくして昇降口から先輩が出て来た。




(あ~ぁ……こうして和泉沢先輩の制服姿を見るのも今日で最後なんだ……)


私は遠くから段々と近づいてくる先輩の姿を目に焼き付けておこうと


じっと見つめていた。


和泉沢先輩とは、これからまたしばらく会えそうもない。


引っ越しと大学へ通う準備で忙しいから。


私も春休みの間はずっと部活があるし。


だから会えなくても寂しくならないように、我慢出来るように……。




そして後、十数メートルまで近づいて来たところで先輩は数人の女の子達に


声を掛けられていた。




私は思わず部室棟の影に隠れた。




(……あ、別に隠れる必要なかったかも)


そんな事を思いつつ、先輩と女の子達が気になり、部室棟の影から


ちょっとだけ顔を出して見た。


すると、女の子達はすぐにいなくなった。




(あれ? なんだったんだろ? 卒業祝いのプレゼントを渡しただけだったのかな?)






「鈴」


先輩が呼ぶ声がして部室棟の影から私が顔を出すと、


「何してんの?」


先輩は首を傾げた。




「かくれんぼデス」


「誰と?」


「先輩と」


「なんで?」


「ファンの女の子達に囲まれてたからです」


「ファンじゃないよ」


先輩はそう言って私に手招きをすると、柔らかい笑みを浮かべた。




「さっきの女の子達、なんだったんですか?」




「コレクターの皆さん」




「?」


(何それ?)




「“第二ボタンコレクター”って知らない?」




「名前的に第二ボタンを集めてる人ですか?」




「うん、そう」




(へえー、そんな子達がいるんだ?)




「織田ちゃんが言うには、そういう子達はどれだけ第二ボタンを集めたか競って


 楽しんでるんだってさ」


そう言った和泉沢先輩の学ランには、もう第二ボタンがなかった。




「っ」


最悪だ。




(うそぉー……第二ボタン、貰いたかったのに……)


こんな事なら事前に“予約”でもしておけばよかったと私は激しく後悔した。




「シゲはまんまとその子達に第二ボタンをあげちゃったみたいだけど」




「……」


(先輩だって、あげてるじゃない)




「しっかし、第二ボタンばっか集めて自慢して、その後はどうするんだろうなー?」


そう言いながら正門に向かって歩き始めた和泉沢先輩。




「……」


私は無言でその後を追った。




そして、正門の手前で今度は別の女の子達が近づいてきた。




「先輩、第二ボタンくださいっ」




「残念ながら、もうない」


和泉沢先輩がそう答えるとコレクターらしき女の子達は「次っ」と言って、さっさと離れて行った。




「……」


(先輩、あんな子達にあげちゃったのー?)

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