第39話 Happy Birthday -3-
「お待たせ致しました。五十五番の番号札をお持ちのお客様ー」
コーヒーショップの店員さんの声が店内に響くと和泉沢先輩が
「取りに行ってくる」と立ち上がった。
ここはセルフサービスのお店だけれど、今日は混んでいるから
オーダーした時に番号札を渡されたのだ。
先輩がテーブルに戻ってくるとトレーにはキャラメルラテとエスプレッソ、
苺のショートケーキが二つ乗っていた。
「あれ? 先輩、このケーキ……」
私がオーダーしたのはキャラメルラテだけだ。
先輩も普段はあまりケーキを食べないって言ってたし。
「今日は鈴の誕生日だろ? だから。それにクリスマスだし」
和泉沢先輩はニッと笑うと私の目の前にケーキを置いた。
「ありがとうございます」
お店に入った時に「先に席に座ってて」と言ったのは、きっとこっそり
苺のショートケーキをオーダーしようとしたからだろう。
「後、クリスマスプレゼント」
そう言って和泉沢先輩が私にくれた物はちょっと大きくて重さもそれなりにあった。
(???)
私は中身が何なのかさっぱり見当が付かない。
クリスマスらしい赤くて可愛いラッピングを丁寧に剥がしていくと中に入っていた物は
真っ白なジュエリーボックスだった。
「わぁー、可愛い♪」
そしてさらに中を開けてみると、紺のフリルリボンがかかった
小さなプレゼントがもう一つ入っていた。
(……え?)
「こっちは誕生日プレゼント♪」
(うそっ!?)
私はまさかクリスマスプレゼントと誕生日プレゼントが別々にあるだなんて
思ってもみなかった。
紺色のリボンがかかったプレゼントの中身は、トップパーツが
赤いベネチアンガラスで出来た革紐のチョーカーだった。
「うわぁー、きれーい」
「気に入ってくれた?」
「はい、ありがとうございます」
「よかった。今はまだこんなおもちゃしか買えないけど、俺がもっと大人になったら
このジュエリーボックスの中を本物の宝石でいっぱいにするからな♪」
和泉沢先輩はそう言うとブイッとピースサインをしてニカッと笑った。
「鈴、着けてあげる」
そして、先輩がチョーカーを手に取った。
「はい、お願いします」
髪を手で纏めて軽くあげると先輩が私の首元に手を回して顔を近づけて来た。
……ドキ――ンッ……、
「誕生日、おめでとう」
先輩の優しい声が耳元で聞こえ、私の胸の高鳴りはMAXに達した。
「……あ、ありがとうございます」
顔が赤くなったのが自分でもわかった。
彼に心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思い、余計にドキドキして、
震えそうな声になり、誤魔化す様に俯くと先輩に「鈴、顔上げて」と言われた。
「は、はい……」
……と、返事をするけれど顔が上げられない。
すると、和泉沢先輩の大きな手が私の頬をそっと包み込んで、顔を上に向かせた。
「可愛い♪ よく似合ってる」
「……っ」
先輩にじっと見つめられ、私はますます顔が赤くなった――。