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Calling  作者: 式部雪花々
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第5話 事件 -1-

――数日後。


体育祭の前日、実行委員の俺達は放課後から翌日の準備を始めた。


いつもサッカー部と野球部が使っているグラウンドも今日は使えない。


その為、部活が休みになった。




----------


図書室で待ってるから


終わったら携帯鳴らしてくれ


----------




HRの後、俺の携帯にシゲからメールが来ていた。


いつ終わるかもわからないし、一緒に帰ったとしても駅までのほんの十数分なのに。


それでも小峯と一緒に帰りたいと思うのは、彼女が携帯を持っていないから


夜も電話やメールが出来ないからだろう。


しかも小峯の方からもシゲに電話を掛ける事もしないらしい。


だから全然“付き合ってる感”がまるでないんだとこの間ボヤいていた。




しかし、どうやら小峯の方は昼休憩にシゲのクラスまで行って


『今日は準備で遅くなるから先に帰って下さい』と言ったらしい。


俺が「シゲ、図書室で待ってるって」と言うと、


「今日は先に帰って下さいって言ったんですけど……」と困った顔をしていた。






そして“事件”は起こった――。




それは俺と小峯、織田ちゃん、大橋、後は体育の男性教諭の五人で


テントを組み立てている時だった。


鉄パイプで組んだ鉄骨にテントを被せて柱を起こそうとした時、


突然強風が吹き、テントが煽られて傾いた。




「うわっ!?」


「きゃっ!?」


一緒に柱を起こしていた俺と小峯はそのまま同時に倒れた。




俺が小峯を押し倒す格好になり、彼女の唇にちょうど俺の唇が重なった。


あろう事か俺は小峯に“キス”をしてしまったのだ。




「っ!?」


俺は慌てて小峯から離れた。




「……」


小峯は顔を真っ赤にしながら半身を起こして俺から目を逸らした。




「……ご、ごめん」


とりあえず謝ってみたものの、非常にマズいよな?




「おーい、大丈夫か?」


すぐに先生と織田ちゃんと大橋の三人がテントを退かして助けてくれた。




「二人とも怪我はないか?」


「イズミ、鈴ちゃん、大丈夫?」


「怪我は? 大丈夫?」


二人ともテントの下敷きになったものの幸いにも怪我はなく、誰にもキスシーンは見られなかった。




しかし、俺と小峯の心はある意味“大怪我”を負った――。






     ◆  ◆  ◆






翌日、体育祭当日――。




「ねぇ、鈴ちゃんと何かあったの?」


昨日の“キス事件”以来、俺と小峯はすっかり気まずくなり、ギクシャクしていた。


小峯とはあれから挨拶以外の会話を一言も交わしていない。


しかも、目が合うとすぐに彼女は目を逸らす。


織田ちゃんはそれを鋭く察知したのだ。




「……いや、別に」


不可抗力だったとは言え、シゲの“彼女”とキスしてしまったのがバレてしまうと


一体何を言われるか……。


俺が言われるのは全然構わないけれど、シゲがカッとなって小峯に何か言ってしまうかもしれない。


彼女は何も悪くないのに……てか、俺も悪くないけど。




(つーか……シゲと小峯ってもうキスしたのかな?)


俺はふと、そんな事を思った。




(……いや、あれはまだ何にもしてねーな)




シゲと小峯は一緒に帰っている時も相変わらず会話がない。


あったとしても一言、二言。


手だって俺と織田ちゃんがいるからか、まったく繋ごうとしない。


この間の日曜日だって小峯とデートの一つでもしたのかと思っていたら、会話が成り立たないから


気まず過ぎて誘えなかったと言っていたし。


そんなんだから当然、キスなんてしているはずもなく……。




(てことは俺……シゲよりも先にやっちゃったのかっ!?)

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