第37話 まさか……S? -3-
「?」
中には俺がいつも学食で飲んでいるコーヒー牛乳と意外な物が入っていた。
淡いピンクの花柄の可愛いペーパーカップの中にクッキーが詰めてあって
透明なギフトバッグとピンクのリボンでラッピングがしてある。
これは間違いなく手作りだ。
「これ、鈴が作ってくれたの?」
「はい、先輩、牛乳嫌いだって言ってたからチーズクッキーならどうかなー?
と、思ったんですけどー……チーズ嫌いでした?」
少し上目遣いに俺の顔を見上げた鈴。
「ううん、チーズは好きだよ」
(……鈴、俺の事、そこまで考えてくれたんだ?)
「よかったー、チーズならカルシウムがいっぱい入ってると思って」
鈴はそう言うとホッとしたように小さく笑った。
さっきまでの“Sな鈴”とはえらいギャップだ。
もしかしたら、さっきのSっぽいあの言動は照れ隠しで、態なのかもしれない。
いや、多分きっとそうだろう。
そうに決まってる……そういう事にしておこう。
俺は自分の中で自己解決した。
「ありがとう。てか、俺も鈴にプレゼントがあるんだ」
「えっ」
「昨日は鈴に悪い事しちゃったからそのお詫びに。はい」
それは昨日、鈴と病院の前で別れた後、一人でこっそりと寄り道して買った物だった。
「そ、そんなのいいですよー」
鈴は俺が差し出した小さな袋を拒むように両手と首をブンブン振っていた。
「いや、全然たいしたモンじゃないから」
俺のプレゼントは本当にたいした物じゃない。
値段だって全然“プレゼント”にしてはお粗末だ。
だけど“気持ち”を伝えたかった。
俺がもっと大人だったら……、もっと……もっと豪華な何かをプレゼント出来ただろう。
「で、でもー……」
それでも遠慮している鈴。
「まぁまぁ、いいから、いいから」
そう言ってちょっと強引に気兼ねしている鈴の手に渡した。
すると、鈴はやっと「あ、ありがとうございます」と言って受け取ってくれた。
掌に乗っている小さな小袋をじっと見つめる鈴。
そして、鈴は丁寧にラッピングを解いていった――。