第4話 笑顔と嫉妬 -1-
――翌日。
再び、体育祭実行委員会のミーティングが放課後にあった。
HRが終わった後、織田ちゃんと一緒にミーティングルームに入ると
小峯と小峯のクラスのもう一人の実行委員・大橋が前回と同じ席に座っていた。
その時、俺は初めて彼女の笑顔を見た。
大橋と楽しそうに喋って笑っている。
その笑顔にちょっとドキッとした。
(……て、小峯はシゲの“彼女”だぞ? 何ドキドキしてんだっ)
「イズミ、どうしたの?」
不意に隣から織田ちゃんの声がした。
「あ? えっ? いや、なんでもない……」
あぶない、あぶない。
小峯の笑顔にドキドキしてるのを危うく織田ちゃんにバレるとこだった。
昨日の電車の中での“密着事件”以来、なんかおかしい……。
電車が揺れて彼女が転びそうになって、腕を掴んで助けた時も少しだけ顔を赤くしながら
俺の顔を見上げた彼女にまたドキッとした。
しかし、俺はふと思った。
女同士の織田ちゃんの前ではともかく、俺とシゲの前で笑った事がないのは
“きっとまだ心を開いていないって言う事じゃないのか?”
……と。
大橋の隣で笑っている彼女の笑顔を見つめながら、俺は大橋に嫉妬していた。
未だ俺やシゲに向けられた事のない彼女の笑顔。
それが今、惜しげもなく大橋に向けられている。
(いや、だから小峯はシゲの“彼女”だっつーの!)
自分で自分に突っ込みを入れながら、なんで嫉妬しているのか理由がわかっているはずなのに
知らないフリをしようとしていた。
「鈴ちゃんて、可愛いよね」
気が付くと織田ちゃんも小峰の事を見つめていた。
「高津君が告ったのも、なんかわかるなー」
「……そうだな」
「もしかして、イズミも“彼女”が欲しくなっちゃった?」
「どうかな……」
とりあえずそう答えるけれど、そりゃあ、小峰みたいな可愛らしい子なら欲しいと思う。
俺じゃなくてもきっと。
だから、シゲも告ったんだろうし。
(てか、シゲって結構勇気あるよなー、入学して一ヶ月の子にいきなり告るんだから)
今まで誰に告られても、それには応えなかったシゲがまさか自分から告るなんて
思ってもみなかった。
そんな行動力があるシゲが俺は時々羨ましいと思う――。
◆ ◆ ◆
体育祭実行委員のミーティングが終わり、俺と織田ちゃんが立ち上がると、
同時に小峰と大橋も立ち上がった。
仲良くミーティングルームを出る二人。
さらさらのポニーテールの髪が左右に揺れる小峰の後姿をしばし見つめる。
(やっぱり、俺……)