第34話 クエストと報酬 その1 -4-
「しっかし、全国でベスト16ってすごいなー」
「そんな事ないですよー、だって今回の大会は新人戦だから選手はみんな一年生でしたし」
「いや、それでもすごいって」
第二試合、鈴は負けてしまった。
しかし、前回みたいな負け方ではなく、最後のゲームでは何度もデュースを繰り返して
惜しくも破れた。
だから試合直後は悔しそうな顔をしていたけれど、俺と二人きりになった時、
鈴は「悔し過ぎて涙も出ません……」と、謎な事を言った。
そんなワケで俺の“慰め役”は不発に終わった。
鈴以外の一年生は先々週の予選で敗れたり、今日の第一試合で負けていた。
鈴が第二試合で負けた事でうちの学校が出場する試合が全て終了し、今日はその場で現地解散になった。
◆ ◆ ◆
帰りの電車内――、
運よく二人掛けの座席が空いていた。
その座席に二人で座ると鈴は「ふぅ~っ」と軽く息を吐き出した。
「疲れた?」
「はい、ちょっとだけ」
「駅に着くまで寝ててもいいぞ? 着いたら起こしてやるから」
「いえ、大丈夫です」
鈴はそう言ったけれど口数も少なくなっているから結構疲れているのかもしれない。
だから俺も必要以上に話し掛けることもしなかった。
……トン……――。
それから数十秒後、俺の左肩に“何か”が当たった。
(ん?)
その“何か”を確かめるべく視線をやるとそれは鈴の頭だった。
(え?)
鈴の方からこんな風に甘えてくるなんて……。
やっぱり、試合に負けたのが悔しくて俺に慰めて欲しいっていうサインなのかな?
「鈴、よく頑張ったな」
鈴の肩に手を回して頭を撫でながら顔を覗き込むと、目を閉じていた。
「あ、れ……?」
鈴は俺の肩に寄りかかって眠っていた。
(やっぱ、疲れてたんだな……)
鈴の寝顔は以前、織田ちゃんの“暑中お見舞い”メールと一緒に送られてきた画像で
見た事はあった。
けれど、今俺の真横でスゥー、スゥー、と微かに寝息を立てて気持ち良さそうに眠っている
鈴の寝顔はあの画像よりも“生”で見る分、ものすごく可愛かった。
(クエストの報酬はこれか♪)