第26話 決着 -1-
「シゲ……ごめんっ!」
翌日の昼休憩。
俺はシゲを屋上に呼び出した。
「んあ? なんだよ? 突然」
なんの前触れもなく、とりあえず謝った俺にシゲは怪訝な顔をした。
「実は……小峯と、付き合う事になった」
「……」
無言になるシゲ。
(やっぱ、そりゃ怒るよな?)
「大地」
いつもより低い声。
俺は殴られるのを覚悟した。
「……やっとくっついたのかよ」
するとシゲは呆れたような口調で意外な台詞を口にした。
「へ?」
「おまえが鈴の事、好きなのくらいとっくにお見通しだ、バカッ」
(えぇっ!?)
「もっと言うと鈴の好きな奴がおまえだっていうのもとっくに気付いてた」
「な、なんでだっ?」
「鈴から他に好きな奴がいるって言われて、しかも俺も知ってる奴だって聞いた時、
なんかピンと来た。まぁ、これでも一応“元カレ”だからな。
俺以外の男と喋ってる時の鈴の目を見ればわかる」
「マジで?」
「でも、態と黙ってた。フラれたばっかなのにすぐに親友とくっつくトコなんて
見たくなかったからな。だから、ちょっとだけ意地悪して黙ってた」
シゲはそう言うと意地悪そうな顔をしてニヤッと笑った。
「だけど黙ってたら黙ってたで、俺に遠慮してんのかなかなかくっつかねぇし……、
傍から見ててすんげぇイライラしたぞ?」
「う……」
やっぱり、シゲは気づいていた。
「あげく“もしもの話”とかするしー」
「あぅっ」
「全然“もしもの話”にもなってなかったけど」
「もう、言うな……」
「しかも織田ちゃんからのパスも全部おまえスルーしてたし」
「え、織田ちゃんもグルだったのか!?」
「あぁ」
ガーン……
(んな、アホな……)
「つーか、まったく気が付いてなかったって、おまえはどんだけ鈍いんだよ?」
力が抜け、愕然としている様子の俺にシゲはプッと吹き出した。
そして「鈴の事、泣かせたりしたらシバくからな?」と真顔で言った。
「お、おぅっ」
しかし、シゲはまたすぐにいつもの顔に戻っていた。
「んで? 一体、何きっかけで告ったんだ?」
「い、言わねぇ」
「このー、もったいぶらずに教えろよー」
そう言うとシゲは俺の脇腹を擽り始めた。
「わー、やめれ、バカーッ」
「バカ?」
「い、いや、バカじゃないです、すいません」
「じゃあ、喋れ」
「嫌じゃ、ボケ」
「ボケ?」
「あ、ごめん、ウソ」
……で、結局その後全部喋らされたのは言うまでもない。