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Calling  作者: 式部雪花々
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第2話 彼の名は…… -1-

結局、私はサッカー部の高津先輩と付き合う事になった――。




一体、何故?




どうして?




……なんで、私?




いくら考えてもわからない。


だけど、私が何も反応出来なかった事でもうすっかり“そういう事”になっていた。




「じゃあ、さっそく一緒に帰ろうか♪」




「え? あ……は、はい」


頭上から聞こえた高津先輩の声に応え、一緒に歩き始めた。




気が付くと、いつも駅まで一緒に帰っていた織田先輩と、さっきまで高津先輩と一緒にいた


サッカー部の先輩がいつの間にかいなくなっていた。


おそらく私が放心している間に先に帰ったのだろう。




そして、いきなり二人きりになった私と高津先輩は特に会話もないまま駅に向かって歩いた。


何か話さなきゃ……と思うけれど、何も話題が浮かばない。






「鈴って、中学もテニス部?」


すると、しばらくして高津先輩の方から話し掛けてきてくれた。




「はい。先輩は?」




「俺も中学からサッカー部だよ」




「そう、ですか……」


緊張し過ぎて上手く喋れない。




「……」




「……」


しかも、会話が続かない。




(……き、気まずいよ)






けど、駅に着いて再び高津先輩が口を開いた。


「鈴は何線?」




「山手線です」




「じゃあ、俺は東横線だからここで」




「はい」


私はちょっとだけホッとした。


これで電車まで同じだと、どう間を持たせていいのかわからなかったから。




(東横線て事は、織田先輩と同じなんだ)


いつも駅まで一緒に帰ってくれている織田先輩も東横線だと言っていた。


織田先輩と別れるのもいつもこの場所だ。




「鈴、携帯の番号教えて?」




「すいません。私、携帯持ってないんです」




「あっちゃー、そうなんだ」




「す、すいません……」




「あー、いや、鈴が謝ることないよ」


高津先輩はそう言うと、レポート用紙とシャーペンを出して何かを書いて私にくれた。




「それ、俺の携帯だから」




「ありがとうございます」


受け取ったレポート用紙には高津先輩のフルネームと携帯番号とメアドが書いてあった。




「電話とかメール、いつでもいいから、鈴のしたい時にして?」




「は、はい」


小さく笑みを浮かべた彼にそう言われ、とりあえず『はい』と返事をしたけれど……、


電話は会話が続きそうにないし、メールも私は自分専用のパソコンを持っていないから難しい。




レポート用紙を四つ折にして鞄に仕舞う。


けれど、私がこのレポート用紙を再び開く事は当分ないだろう。


……おそらく。




「じゃあ、また明日な」


高津先輩は私にバイバイと手を振った。




「はい、失礼します。また明日……」


私がぺこりとおじきをすると、彼はにっこり笑って東横線のホームへと歩いて行った。




こうして、私と高津先輩の交際第一日目が終わった――。






     ◆  ◆  ◆






――翌日。


午後のHRで約二週間後にある体育祭の実行委員を決める事になった。


男子と女子の一名ずつの計二名。




しかし、誰も面倒臭がってやりたがらないから当然立候補する人なんていない。


そんな訳でクジ引きという至って公平な手段で決める事になった。




私は嫌な予感がしていた。


とっても。




だって……クジ運がないから。




そして、そういう悪い予感はだいたい当たるもので……。




私は見事に“当たり”を引いてしまった。




(最悪……)






     ◆  ◆  ◆






放課後――、


さっそく体育祭実行委員会のミーティングがあった。




同じくクジ引きで選ばれた大橋君と一緒にミーティングルームに行くと、


そこには“あの人”もいた。




(あ……)


昨日、高津先輩と一緒にいた人だ。




あの人の隣には織田先輩もいた。




(織田先輩、あの先輩と同じクラスなんだ?)




あの人の名前がわかったのはそれから数分後だった――。






「三年二組の和泉沢大地です。よろしく」


実行委員の全員が揃ったところで、それぞれ自己紹介が一年生から順番に始まり、


ほんの少しだけ口角を上げて椅子から立ち上がった彼は180センチ近くはあるであろう長身で、


耳障りの良い少し低音の爽やかな声の人だった。


キリッとした眉に切れ長の目。


だけど、優しそうなその黒い瞳に私は惹きつけられていた。




“和泉沢大地”




それがあの人の名前だった――。

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