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Calling  作者: 式部雪花々
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第22話 恋愛か友情か -1-

「大地さー、今、好きな子いる?」


織田ちゃんからのお裾分けを食べ終わった後、俺とシゲは駅前のファーストフードに移動した。


そして何を思ったのか、シゲがナゲットを口に放り込みながら言った。




(突然何を訊く?)




「いるんだろ?」


シゲはにやりと笑った。




「まぁ……いなくもない」




「どんな子?」




「どんなってー……」


(『おまえの元カノだよ』とは、言えないよな?)




「まぁ……フツー、かな?」


一体何に対して“フツー”なんだ?


自分で言って自分で疑問を抱いた。




「うちの学校の子?」




「うん」




「へぇー、何年生?」




(一年生と答えたら、バレるかな?)


そんな事を思いつつ、素直に答えた方がいいんだろうか?


とりあえず嘘を吐いておいた方がいいんだろうか? と考えた。




「一年生?」




「え? うん。あ……」


しかし、シゲの質問に思わず「うん」と答えてしまった。




「ふーん」


シゲはちらりと俺の顔を見た。




「告らないのか?」




「う、うーん……」




“告りたいけど告れない”




それが現状だった。


一つはシゲの事。


多分、シゲはまだ小峯の事が好きなんだと思う。


小峯と別れて以来、名前すら口に出さないが、なんとなくそんな気がする。




そしてもう一つは、小峯が好きなのはあの岩井って奴だから。


更に言うと岩井も多分、小峯の事が好きなんだと思う。


織田ちゃんもそんな感じの事を前に言っていたし。




それでも俺は諦めていないのはどうしてだろう……?




「好きなら告ればいいのに」


シゲはクスッと笑って言った。


でも、目がマジだ。




「なんか、いろいろごちゃごちゃ考えて結局告れないでいるって感じに見えるけど?」




「……えっ?」




「大地の事だから、誰かに遠慮しちゃって言えないでいるとかさ?」




「……」




「サッカーの試合じゃガンガンに攻めてくのに、なんで恋愛の事となるとこうも慎重になるかねぇー?」




「う……」


シゲはなかなか痛いところを突く……。




「なぁ、シゲ。もしもの話なんだけど……」




「うん」




「もしも、自分と自分の友達が同じ女の子を好きになったら……おまえならどうする?」




「“恋愛と友情、どっちを取るか?”って事?」




「うん」




「そーだなぁー、俺なら“友情”を取るかな」


シゲは迷う事無く答えた。




(てことは、俺が小峯に告ったりなんかしたら、やっぱ怒るよなー?)




「……と言いたいところだけど、ホントは“恋愛”を取るかもしれない」


しかし、三秒後、シゲはあっさりと言い直した。




「へ?」




「例えば“俺は友情を取る!”って宣言しても、じゃあそれで本当に好きな子の事を


 諦められるのか? って言ったら必ずしもそうじゃないだろ?」




「うん、まぁ……」




「そりゃ、諦められる場合もあるだろうけど……それにしたって簡単じゃないし」




「……うん」




「やっぱり諦められないかもしれない。でも、諦められないからといって誰にも


 責められる事はないと思う。だって、好きなんだもん」




「……」




「だからつまりー、自分の気持ちには嘘吐けないんだから、例えライバルが友達だろうと


 誰だろうと遠慮しなくてもいいと思う。俺はな」




時々、俺はシゲがものすごく大人に見える。


今みたいに俺がウジウジ考えてることに対してズバッと答えに導いてくれるような事を


言ってくれた時とか。




「んで? 大地のライバルって友達なんだ?」


シゲは俺の顔をジッと覗き込むように見た。




「バッ、バカッ、だから“もしもの話”だって、言ったろ?」


俺は思わず慌てて目を逸らした。




「ふぅ~ん」


すると、シゲはにやにやしていた。




「大地って嘘吐く時、必ず目逸らすんだよなー」




「……え」




「自分で気付いてた?」


そしてさらに顔を覗きこんでくるシゲ。




「う……」


俺はまた目を逸らそうとしたけれど、やめた。


動揺しているのがバレそうだったから。


てゆーか、嘘を吐いているのがバレそうだったから。




「ま、今日のところは“もしもの話”って事にしといてやるよ。これ以上追求したら、


 なんかおまえが可哀想だから」


シゲはそう言うとククッと笑った。




“可哀想って何だよ?”




そう言おうとしたけれど、やっぱりやめた。


こーゆー時の俺はとことん弱い事を自分でも自覚しているから。




(てか……、シゲの奴、もしかして気付いてるのかな?)

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