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Calling  作者: 式部雪花々
33/94

第20話 暑中見舞い -1-

――八月、夏休みの真っ只中。




俺達サッカー部も合宿の真っ只中だ。




合宿二日目。


夜、風呂上りに食堂で冷たい麦茶を飲みながらみんなでテレビを見ていると、


俺の携帯が短く鳴った。


メールだ。




-----


合宿頑張ってる~?


あたし達は今朝、


合宿終わって帰ってきたよー


画像は昨夜みんなで


合宿の打ち上げを兼ねて


花火をした時のだよ


-----




“暑中お見舞い”のタイトルでメールを送ってきたのは織田ちゃんだった。




メールには画像が二枚、一緒に送られてきていた。




(花火かー、いいな)


メールに貼り付けられているURLをクリックするとキャミソール姿で


花火をしている女の子の画像が出てきた。




「……っ!?」


俺はその画像の女の子の顔を見て思わず飲みかけていた麦茶を


目の前に座っているシゲに吹きかけそうになった。




「大地、何やってんだ?」


シゲは口から麦茶を零してワタワタしている俺を見てククッと笑った。




「い、いや……ちょっと……」




(こ、小峯?)


花火をしている女の子は小峯だった。


織田ちゃんが思いつきで写メを撮ったのかカメラ目線じゃなく、


楽しそうに他の部員たちと花火をしながら笑っている自然な感じの彼女が写っている。




そしてもう一枚の画像も小峯だった。


今度はばっちりカメラ目線で線香花火を片手にピースサインで笑っている。




(か、可愛い……)


小峯の画像に見惚れていると織田ちゃんからまたメールが届いた。




-----


鼻の下伸びてるぞー


(*´I`)


-----




(こんな画像見せられて鼻の下が伸びないわけがないだろっ)




-----


伸びてねぇしー


(´д`)




Daichi


-----




-----


あれぇー?


そうなのー?


じゃ、もう一枚とっておきの


画像あるんだけど送るの


やめようかなー?


( ゜3゜)


-----




(なぬっ!? とっておき?)


「……」


なんかまた織田ちゃんの訳のわからんペースに乗せられて結局からかわれている様な気もするが。


そんな事はこの際どうでもいい。


“とっておきの画像”ってなんだ?




-----


見たい?( ̄ー ̄)


-----




-----


見てやってもいいけど?


( ̄ー ̄)y-.。o○




Daichi


-----




-----


うわー えらそー


-----




-----


いいから早く送りなさい


( ̄ー ̄)y-.。o○




Daichi


-----




-----


はいはい(´д`)


-----




そんなやり取りの後、織田ちゃんがメールに貼り付けて送った来た画像は……




「っ!?」


また麦茶を吹き出しそうになった。


その画像は寝顔だった。




女子テニス部の顧問・佐藤先生の。


ソファーで五十近いおっさんが大口を開けて転寝している姿をこっそり撮ったんだろう。




(やられた……てか、おでこに“肉”って……)


期待して損した。




-----


ね? とっておきだった


でしょ?


(*´pq`)クスクスッ


-----




-----


こんなおっさんの寝顔の


どこがとっておきだよ!


ヽ(`Д´)ノ




Daichi


-----




-----


あー、ごめん、ごめん


間違えたー


ホントはこっち


-----




織田ちゃんはやっぱり俺をからかっているのか?




俺は次に送られてきたメールに貼り付けられているURLを期待半分……、


いや、それ以下、寧ろ期待する事無くクリックした。




「ぶはっ!?」


とうとう麦茶を吹き出してしまった。


シゲの方にまで飛ばなかったものの、携帯とTシャツにかかってしまった。




「大地、おまえ、さっきから何やってんだよ?」


シゲは苦笑いしながら傍にあったティッシュをすぐに取ってくれた。




「あ? う、うん……ちょっと……」


ティッシュで携帯を拭き、とりあえず閉じた。


この画像をシゲに見られるとマズい。




だって……




小峯の寝顔だったから。




Tシャツを拭いているとまた織田ちゃんからメールが来た。




-----


どぉ? とっておき


だったでしょ?


(o^-')b


-----




小峯の寝顔は子供みたいに可愛いかった。


こんな画像を送られてきた日には口から麦茶どころの騒ぎじゃない。


鼻血が出そうだ。




“暑中見舞い”といって送られてきたメールは俺の心を余計に熱くした――。

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