表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Calling  作者: 式部雪花々
13/94

第9話 そろそろ…… -2-

――翌日。


部活が終わって待ち合わせ場所の部室棟の前に行くと、高津先輩の方が先に来ていた。




「先輩、お待たせしました」


私が声を掛けると、高津先輩は小さく笑って手を振ってくれた。


しかし、いつも一緒にいるはずの和泉沢先輩の姿がない。




「帰ろ」


高津先輩はそう言うと正門に向かって歩き始めた。




「で、でも和泉沢先輩が、まだ来てませんよ?」




「あー、あいつならもう先に帰ったよ」




「……そうですか」


(和泉沢先輩、先に帰っちゃったんだ……)


今日は織田先輩もいない。


つい十分程前に先に帰ったのだ。




高津先輩と二人きり。


付き合い始めてもう一ヶ月も経っているんだから普通なら全然平気なはず。


しかし、私はというと、まだ慣れてはいなかった。


今までは和泉沢先輩と織田先輩がいてくれたおかげで高津先輩と並んで帰っていても平気だった。


それがまた二人きりになって、こんな気まずい事になっている。




(とりあえず……頑張ろう!)


……てっ?




(“頑張る”って何を?)


“彼氏”と二人きりになるだけなのに、一体何を頑張るつもりなんだろうか?




ただ普通に話して、




ただ普通に一緒に歩いて、




ただ普通に一緒に帰るだけなのに。






「鈴?」




「はいっ?」


不意に先輩に呼ばれ、びっくりした。




「なんで、そんなにびっくりしてんの?」




「あ……いえ……」




「?」


高津先輩はクスッと笑いながら首を傾げると、なんとなく私に視線を向けながら


ゆっくりと手を伸ばした。




先輩の掌が私の手の甲に触れ、軽く包み込むように握られた。




初めて高津先輩と繋いだ手。


掌と掌が重なっている訳でもなく、強く握られている訳でもない。


先輩が私の手の甲を掴み、私もただ握られているだけだった。




(普通ならドキドキするもんなんだろうなぁー)


ちょっと変な繋ぎ方だけど“彼氏”と初めて手を繋いでいる訳なんだし。


でも、私は全然ドキドキなんてしていなかった。




(相手が和泉沢先輩だったら、きっとドキドキするんだろうな……)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ