第7話 君が好き -1-
帰りの電車の中――。
なんとなく、彼女の様子が気になった。
体育祭が終わって、俺達実行委員が後片付けをしている最中も小峯はおかしかった。
いや、おかしいのは昨日からだけど、さらに輪をかけておかしい気がした。
「小峯」
「は、はい?」
「何か、あったのか……?」
もしかしたら、昨日の“キス事件”がシゲにバレてそれで何か言われたのかとも思った。
「いえ……」
彼女は静かに首を横に振った。
「ホントに? もし、昨日の事でシゲになんか言われたんだったら……」
「大丈夫です」
俺の言葉に被せるように小峯は否定した。
「昨日はすみませんでした……」
そして、彼女は俯いたまま言った。
「なんで小峯が謝ってんだよ?」
「だって……」
「あれは……不慮の事故みたいなモンだろ? だから……おまえが謝る必要なんてないよ。
俺も気にしてないし」
この時、俺って意外に平気で嘘つける奴だったんだな、と自分で思った。
「はい……」
どうして、シゲの“彼女”が小峯なんだろう?
どうして、あの時もっと本気でシゲと彼女の間に割って入らなかったんだろう?
どうして、もっと早く自分の気持ちに気が付かなかったんだろう?
どうして……――。
本当はそんな思いがずっと俺の中にあった。
シゲが小峰に告った時からずっと――。
それなのに、今俯いている彼女の横顔を見つめる事しか出来ないのは、
俺の勇気の無さが招いた結果だ。
(こんな事なら、再会したあの日に告っときゃ良かったなー……)
中学を卒業してからもずっと小峰の事が気になっていた。
そして、ようやく忘れかけた頃に再会した。
考えてみれば彼女が俺と同じ高校に入学した事だけでもすごい偶然。
“運命の再会”
……と言ってもいいくらいだろう。
それなのに俺は“密着事件”や昨日の“事故”が起きるまで、自分の中にある
小峰への想いにちゃんと気が付かなかった。
いや……気付けなかった。
だけど、もっと考えてみれば俺が先に告ったところで小峰に断れていた可能性の方が大きい。
だって、そもそもシゲと付き合うのが嫌ならその場で断っていただろうし。
それに……
“先輩! 頑張って!”
あんな風に大声でシゲの事を応援していたし――。