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Prologue
コチラの作品は元々ケータイ小説文庫『野いちご』様にて公開していた作品で
ケータイ小説として書いた原稿を再編しておりますので一話が他より短めになっております。
「あーっ!」
フェンスを越え、大きな弧を描いて女子テニス部のコートの中に入っていった
サッカーボールを見つめ、思わず俺・和泉沢大地は声を上げた。
ゴールに向かって思いっきりシュートしたはずのボールが俺の予想を見事に外して飛んで行ったのだ。
何度もバウンドを繰り返し、サッカーボールは勢いを衰えながらコロコロと転がって、
球拾いをしている女の子の足元に当たった。
「悪ぃーっ、ボール取ってーっ!」
その女の子に向かって叫ぶと、その子はすぐにサッカーボールを拾い上げ、そして俺の方に振り向いた。
背が低くて真新しいジャージを着ているところをみると、つい先日入学したばかりの新入生のようだ。
右目の下にある小さな泣きボクロが印象的だ。
「投げてー」
「あ、はい」
「ありがとう」
「いえ……」
一言、二言だけのとても短い会話。
これが俺と彼女の出会いだった――。