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三十五話 分岐点

「遅い……のじゃ……!」


「ごめんな、待たせた」


「今日は帰りの会おそくてなー」


 四人の少年少女が一つのグループとなって歩いている。


 ただ、そのなかには一人、不満そうな少女がいる。


「ルリ……ちゃん?どうかしました?」


 リノアはルリの顔色を見て駆け寄る。


「いや、何でもないのじゃ……」


「ほら、元気出しなよ」


 カイナが後ろから飛びつく。ルリはぐらりとよろけながらもバランスを取る。


「ぬあっ、おっ……重いのじゃ……」


「なんて失礼な!健康的な体型なんだぞこっちは」


 校門のそばでじゃれ合いながら歩みを進める。


 中央の一番大きい通りで、グレンとルリは歩みを止めた。


「じゃあ、おれこっちだから……」


 グレンは、学園がある三環から寮への二環へと方向転換する。すると、二つの声が飛んだ。


「えっ、そっちは?」

「そっちは二環……ですが……」


 ルリ以外が、呆然と立ち尽くす。


 ウロウロとあたりを見回し、上へと歩みを進めようとするグレンの背中を見ることしか出来ない。


 振り返らずに、グレンは言う。


「俺、命狙われてるかもしれないって、だから昨日から始星寮にいてさ」


 市民の笑い声が飛び交う大通りで、そこだけが異質な雰囲気を醸す。


 誰も、何も言えなかった。何か言っても、グレンの力じゃどうにもできないと、分かっていたから。


 風が吹く。

 砂が飛ぶ。

 髪が靡く。


 一連の事象全てが、彼らを引き離す原因に思えたりして。


 重い空気のなかで、グレンは静かに上へと歩いていく。


 自然と距離が離れていく。


 グレンは険しい顔を見せぬよう、ひたすらに、歩みを進めていた……


「……どうしてそんなに険しい顔をしてらっしゃるのかしら」


 始星寮の入り口近くにセラフィナが腕を組み、たたずんでいた。


 かくいう彼女も少し険しい顔で、こちらを見つめている。


「……別に、大したことじゃないんだ」


 若干の空白。返す言葉が見つからず、差し支えない言葉を返す。


「そう、ならいいんですけど」


 セラフィナは腕を組みグレンを横目で見つめる。彼女が話す前に、グレンが自然と話していた。


「なぁ、セラフィナ」


「なんですの?」


「ルリを始星寮に入れることって出来ないのか?あいつは始星だし、条件は満たしていると思うんだけど……」


 険しい顔を崩さぬまま、セラフィナを見つめる。


 彼女は、ふうっと一息つくと、矢継ぎ早に話す。


「始星寮は……一年更新での契約よ」


「途中からの編入は、原則として認められていないわ」


「補助金も、部屋割りも、人員配置も……

 すべて最初の申請を前提に組まれている」


「ルリさんは……その時、“寮に入らない”という選択をした」


「だから、結論から言うと無理よ。あなたみたいな例外でないかぎりは……」


 予想はしていた事だ。だが、胸がモヤモヤして仕方がない。


「で、今日はこれを渡したくてわざわざ来たのよ」


 彼女は、一枚の紙を手渡す。


 ―特別実地訓練参加許可証― 


「次の実地訓練、影星と始星は別行動よ。始星は一段階高難易度のダンジョンに行くことになっているわ。貴方も、そこに参加しなさい」


「な、なぜ俺なんかが……」


「あなたが始星にいるほうが安全だと学園は思っているのでしょう。かくいう私もこの書類を代表として渡しているだけであって、真意はわからないわ」


「そう……なのか」


「あと、メンバーも決まっているようなの。対抗戦の始星二人。私とライオットが一緒になるでしょうね」


「そうか……」


 内心、ルリと一緒になれるかも、なんて思ったが、そんなことは叶わなかった。


「まぁ、言いたいことはそれだけね」


「で、なんですけれど、私にこんな面倒事をさせた貴方に、手伝いを命じるわ」


 グレンが肩を震わせる。想像の斜め上から面倒事が振ってきた。


「断ることは許しませんわよ」


「はい……」


 グレンは、荷物持ちとしてセラフィナについていくことになった……



「ここよ」


 そう言って到着したのは二環にある高級魔道具店


 ―星巡の環―


「おぉ、ここはシェーラさんの店……」


 グレンは思わず過去の記憶を口にする。


「なぜその名を知っているのです」


 セラフィナが振り返り、睨見つけるような鋭い目つきをこちらに向ける。


「い……いや、聞いたことがあってさ。ここの店主は国随一の魔道鑑定師だって」


「それにしてはだいぶ馴れ馴れしい呼び方でしたけど」


 じとっ、とした目でセラフィナはグレンを観察する。やがて、意味がないと感じたのか速い足取りで店内へ向かう。


 ここ星巡の環は二環どまんなかに位置する魔道具店だ。グレンら名家の家々が立ち並ぶ中、そのすべてを差し置いて大通り沿いに建っている。


 カラン、と小気味良い音がなる。


 夜の青空をイメージにした壁紙が天井に広がり、薄暗い店内はそのイメージに拍車をかけている。


 ドーム状の店内には壁沿に神器に筆頭するレベルの代物がずらりと並び、他の店との格の差を表している。


「だれか、いないのですか〜」


 セラフィナが声をかけると、奥から初老の男性が現れる。


「申し訳ございませんお嬢様。ご予約のもの、すでに届いております」


「あら、あなた見ない顔ね。まぁ、物をくれるならなんだっていいわ」


 通い詰めていたグレンも見たことがない店員が、深々とお辞儀をする。


「レティア・ラ=シェーラさんはいらっしゃらなくて?」


 セラフィナが頭をかしげ、店員を見つめる。


「申し訳ございませんお嬢様。今マスターは病気で療養中でございます」


「あらそう。なら仕方ないわね」


 そういって引き下がると、受け取った荷物をバケツリレー方式でグレンに受け渡す。


「じゃあいいわ。また来る時に会えばいいのですもの」


 そういってさっさと店をあとにする。


「ちょっ、待って」


 グレンも急ぎ足で、店を出るのだった……


「この中身、何が入ってるんだ?」


 やけに大きい布袋を持たされたグレンは、ハァハァと肩で息をしながら歩く。


「あなたには関係ないことですわ」


 セラフィナは優雅な足取りをとめることなく、ついには自宅まで辿り着いた。


「ありがとね」


 それだけ言うと、さっさと荷物を受け取り、セラフィナは大きな屋敷へ入っていく。


 グレンはポツンと一人立ち止まって、こういった。


「人付き合い荒いなあの人……」

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