夢縺ョ繧「繧ケ繝医Λ
カツン、カツン、と足音が響くたび、水面に波紋が広がっていく。
それは幾何学模様のように重なり合い、静かに、規則正しく、地を満たしていく。
色のない空間に、いつのまにか水が戻っていた。
そして眼前には、黒がべったりと塗り込められた家々が、整然と並んでいる。
「黒と……水ね……」
わたしはそれを不思議とも思わず、当然のことのように受け入れた。次に水面を蹴り、ぱしゃぱしゃと音を立てながら走り出す。
空気の流れは感じない。
風も、匂いも、温度もない。
音さえも、足音以外は存在しない。
ただ、永遠につづく虚無。
世界に向かって、わたしは思わず叫んだ。
「なんじゃこれはー!早く起きて、グレンと学園に行かなくちゃいけないのじゃ!」
前回と同じように、思いきり自分の頬を叩く。
ぱちん、と乾いた音だけが響き、後に残ったのは、じんわりとした痛みだけだった。
わたしは、ぽかんと目を見開く。
「……なんじゃなんじゃ。この世界は、わしに何を求めているのじゃ」
苛立ちを滲ませ、今度は力強く歩き出す。
水面は勢いよく跳ね、水滴が服に張りつく。
けれど、冷たくも、濡れた感じもしない。
しばらく歩き続けていると、ぽつりと、一軒の家が現れた。
「……んっ」
理由は分からない。
けれど迷いなく、わたしはその家へ向かい、ドアノブに手をかける。
少し力を込めると、ぎいっ、と音を立てて扉はあっさりと開いた。
中にあったのは、暖炉だった。
「あったかいのじゃ〜」
わたしは思わず両腕を広げ、その温もりを抱きしめるように享受する。
ぱちぱちと薪のはぜる音。
それを聞いていると、ふと違和感が胸をよぎった。
わたしは、ゆっくりと周囲を見回す。
「……だれか、おるんじゃないのか?」
人の気配はない。
声も、足音も、影もない。
それなのに――
視られている
そんな感覚だけが、確かにあった。
わたしは重い腰を上げ、部屋の奥に見える、もう一つの扉へと歩く。
「だれかおらんのかー」
ドアノブに手をかけた、その瞬間だった。
「……うっ」
頭が、ずきりと痛んだ。少し前にも経験したことがあるような、刺さるような痛み。
視界が歪み、世界はぐるぐると回転し始める。
上下も左右も分からなくなり、空間そのものが裏返る。
まるで――
まだ、この先へは行くなと、そう言われているかのように。




