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#57 愚か者

 吉昌は晴明の元へと走っていた。道満が悪霊の元に堕ちてしまった。早く晴明様と保憲様に伝えなければ——



「うばばばば」

『うおおおおお』


 達海とレイが悪霊に向かって左右から回し蹴りを喰らわせた。「うばっ」と、怯んだ悪霊にアクタが掴み掛かり体を捻ると、背中に乗せて体を前に倒しそのまま悪霊を背負い投げで投げつけた。悪霊は道満の体と共に屋敷の端まで吹っ飛んで行き、結界に叩きつけられた。間髪入れずにレイが走り込んで行き、悪霊にワンツーで突きを繰り返し浴びせていく。



「虎、虎、虎!」

 

 吉平が三枚の形代を投げて、三体の虎を出現させた。虎たちは大きな青龍に噛み付いていく。しかし、青龍が唸り声をあげながら体を勢いよくくねらせると虎たちを蹴散らしていく。


「くそっ」


 虎は消えゆき、青龍は吉平目掛けて突進してくる。


「亀!!」


 吉平が形代を体の前に構えるとそう叫んだ。すると吉平の前には亀の甲羅のような防御壁が現れて青龍の巨体を抑え込む。しかしそれは数秒の間のことで、あっという間にひび割れて吉平は青龍に吹き飛ばされてしまった。

 吉平はめげずに立ち上がり、再び叫ぶ。


「虎! 虎!」


 二匹の虎が青龍に噛みつき地べたに抑え込んだ。


「いいぞ幽霊! 青龍の動きが鈍っている。使役者である道満にもっと叩き込め」

 

「わかってるよ!」


 レイが突きを繰り返していると、目の奥をドス黒くした道満の体がぐるんとレイと悪霊との間に割って入ってきた。道満がレイの胸部に呪符を貼り付ける。


「わりゃ、こお悪霊をめっすう」


 ゾクっと血の気の引いた顔をしたレイの体を、達海が引っ張って呪符を剥がした。


「大丈夫か、レイ」


「うん、危なかったよ」


 道満の体を携えた悪霊は猶予を与えずに達海とレイに向かって飛びかかってきた。


「危ない!!」


 アクタが悪霊の体を抑え込む。


「くっ、この悪霊馬鹿力すぎる……こんな悪霊初めてだ」


 レイが力負けしそうなアクタに加勢するように悪霊の腕部分にしがみついた。



「うわああああああああ」


 向こうでは吉平が青龍に吹き飛ばされていた。


「吉平さん!!」


 状況はこちら側が明らかに劣勢。どうすればいい……どうすれば今の状況を打破できる……達海は心を落ち着かせようと胸に手を置いた。


(……!)




「おやおや、さっきまでの勢いはどうしたのですかな!」


「うるせぇ、この後どうするかをちょっと考えていただけだ」


 陰陽寮入り口付近では、春明と道拓の戦闘が続いていた。

 春明はただでさえ同等か格上の相手だということに加え、白虎を呼び寄せた疲労によって劣勢となっていた。


「蛇!」


「ふふふ、そんなものまるで効きかないな。大蛇」


 春明の小さな蛇は大蛇に蹴散らされながら消えてゆく。その大蛇の後ろをゆっくりと歩きながら道拓がにじり寄ってくる。


「虎!」


「おっと」


 虎と大蛇がせめぎ合うなか、道拓は春明の前までやってきて掴み合いの状態となった。


「大人しくそこをどけ、その幽霊を私に祓わせろ」


「絶対に嫌だね、死んでもどかねーよ」


 このままではジリ貧になってしまう。いっその事こいつを殺すつもりで……。春明がそう思っていると、


「パワーーーー!!!!」


 道拓の頭に強い衝撃が走った。


「あ、頭がくらくらするぅ〜」


 道拓がフラフラとよろけている所を春明が虎を使って押さえつけた。


「安心してくれ! 手加減して殴ったさ! ハハハハ」


 颯爽と現れて道拓の後頭部を打撃したマッチョは、春明とお嬢に向かってマッスルポーズをとって見せた。


「マッチョ! ナイスタイミングだ」

「どこほっつき歩いてましたのマッチョ!」


「いやあ、もっと筋肉を間近で見たいと思い、ボディービルダーの近くまで行っていたらいつの間にかお嬢少女がいなくなっていて……」


「全く、ばか!」


「うっ、なんかすまなかった」


 お嬢に泣きながら怒られたマッチョはしゅんとして素直に謝った。


「今、お嬢は足が麻痺して動かないんだ。担いで来てくれるかマッチョ」


「うむ、了解した。ところで、何が起こっているんだ?」


「賀茂家の者が死んで陰陽の幽霊に殺されたと疑われている。お前たちを悪霊じゃないと皆んなに証明できれば疑いは晴れるはずだ。とにかく、寝殿に急ごう」


 春明、お嬢、マッチョは急ぎ寝殿へと向かった。




(……!)

  

 達海は着物の胸部にしまっていた大量の形代に気づいてそれを取り出した。これを使えば何とかなるかもしれない。達海は決死の思いでその大量の形代を上に放り投げて辺りにばら撒いた。


「虎!!!」


 達海の叫び声が屋敷に響き渡る。次の瞬間、形代は次々に猫の姿へと変化していった。三毛猫にトラ猫、ぶち猫にさび猫、黒猫に白猫、様々な模様の猫が現れていく。そして、その数百もの猫たちは悪霊と青龍に小さな体で襲いかかった。


「相変わらずの猫……しかし、なんて数なんだ」


 吉平が驚きの声を漏らした。


「今だ、敵の動きが鈍っている。畳み掛けるぞ」


 アクタの声と共に達海、レイ、アクタは悪霊に、吉平は青龍に攻撃を再開した。


「うおおおおお」

「虎!」


「メガネ小僧! 一旦、虎と共に青龍を抑えていてくれ! 私は悪霊の除霊を試みる!」


「わかった! 後、メガネ小僧じゃなくて達海だ!」


 達海と吉平がスイッチし、吉平が悪霊の前に立ちはだかった。

 達海は猫の大半を青龍に向かわせてその獰猛な巨体を押さえつけた。


「我、この悪霊を滅する! 急急如律令!」


 レイとアクタが悪霊に攻撃を続けるなか、吉平は呪符を悪霊に貼り付けて唱えた。


「解」


 悪霊の付属品と化した道満の口から、そう発せられると吉平の貼り付けた呪符が焼け落ちてしまう。


「くっそ、これも効かぬか」


 吉平が顔を顰めながら汗を拭った。


「体力が持たない! このままだとやられてしまうよ!」


 アクタが焦りの表情を見せる。

 吉平はさらに形代から虎を呼び寄せてレイ、アクタと共に悪霊を押さえつけさせた。しかし、吉平の体力ももう限界に近づいていた。


「早く帰ってこい。このポンコツ頭首!!」


「白虎」

「朱雀」


 吉平が叫ぶのとほぼ同時に上位種の式神たちが現れて、青龍に襲いかかった。

 吉平が声のした方を向くとそこには晴明、保憲、忠司、吉昌が立っていた。


「よく耐えた! もう安心てくれ! ポンコツ頭首が帰ってきたぞ!」

 

 晴明は満面の笑みをこちらに向けた。

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