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夢のような出来事と不審な音

 ちりりーん……


「!」


 微かに聞こえたその音に、夢見心地だったふわふわした気持ちから突然現実世界に引き戻された。


(わ、わたし……今……)


 徐々に我に返る。


 音もなく静かに離れていく熱を口元に感じ、目を見開く。


(えっ!)


「泣きやんだ」


 とんでもなく至近距離でウィルが微笑む。


 あまりに破壊力の強いその笑みにうっかり見入りそうになるけど、それどころではない。


(泣きやんだ……じゃない)


 涙なんてとっくに引っ込んでいる。


 それよりも……


(あ、あなた、今なにを……って、え?)


 少しずつ置かれている状況を理解し、逃げ出したくなる。


(えええええええええ!?)


 これは、夢なのだろうか。


 考えれば考えるだけ頬にほてりを感じる。


(い、今……今……わたし……)


 言葉にできない想いがぐるぐる回る。


 ちりりーん……と再び聞こえた音に、誰か来たのか?とウィルも顔をあげる。


 何も身につけることなく水浴びをしていたときに人が来ていたらと改めて思うとかなり恐ろしいことだと思うけど、今はそんなことよりも自身に起こった出来事について頭がいっぱいだ。


 帰るか、とウィルが立ち上がったときも、そのままエスコートをされるように与えられた寝室へ戻ったときもわたしの耳にはほとんど何も届いていなかった。


 どっくんどっくんと心臓の音が高鳴り、言いたいことや聞きたいことは山ほどあったけどキャパオーバーでそれどころではなかった。


 もっとこのとき、あの場で聞こえた音に反応しておけばよかったと思うのは後の祭りではあるのだけど、わたしは有頂天と謎の羞恥心にもだえ苦しみ、その夜は更けていった。

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