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水も滴るいい男

「ウィル……」


 こぼれるようにその名が唇からもれた。


「あ、あなた……」


 振り返った人間を確かめるように目を凝らす。


「そ、その姿……」


 月明かりを逆行にしているものの、その輝きは損なわない。


 金色の髪が光を放ち、水がしたたり、まるで彫刻のように美しい。


(でも、わたしの知ってるウィルは……)


「って! き、きゃぁぁぁあ!!」


 自分の姿も相当なものだったことを思い出し、慌てて水面に体を隠す。


 と、同時にまた盛大にバランスを崩す。


「えっ!!」


 最後に見たのは水しぶきだった。


(しまった!)


 なんて間抜けなのだろう。尻餅をつくかと思いきや、水圧でそれは免れたものの足場すら見つけられず混乱したわたしは必死にもがく。


『海育ちなのに泳げないなんてね』


 遠くの方で楽しそうに笑うレイの声が聞こえた。


「ローズ!」


 もうだめだと遠のく意識に身を任せ、瞳を閉じかけたときに何かに抱き上げられたのがわかり、ぼんやり瞳を開ける。


「大丈夫か?」


 水も滴るいい男とは、このことだろう。


 艷やかな表情のウィルはやはりうっとりするくらい美しいというか、凄まじくかっこいい。


「!」


 しかしながらそれを堪能する間もなく情報量が多すぎて、一気に目が冷めた。


「ちょっ!」


(ちょっと待って!)


 たくましい腕に抱えられながら跳ね上がる。


 体温が生々しく伝わってくる。


 助けてもらったのはわかる。


 わたしのせいだ。


 わたしが鈍臭くてそそっかしいからいけないのだ。


 だけど、キャパオーバーだった。


 咄嗟の出来事の中でも肌を唯一覆う布を手放さなかったことは自分を褒めてあげたい。


 とはいえ、ずいぶん心もとない隠れ蓑だ。


 叶うことなら夢であってほしい。


 気まずそうに瞳をそらすウィルにわたしは声にならない悲鳴をあげた。

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