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不可解な出来事と人身御供

「ローズさん、ごめんなさいね……」


 京さんは悲しそうに俯く。


「ダーウィン様が生きておられるはずなんてないのに、この船を見てしまったら……つ、つい……」


「いいのよ。全然平気! むしろ京さんの力になりたいって思ってる。そりゃ、ダーウィン様程じゃないだろうけど……」


 慌てて返すわたしの言葉に京さんは微笑んでくれた。


 でもそれは束の間。


 すぐに険しい顔で彼女は口を開く。


「わたし、人身御供なんです……」


「ひ、人身御供……?」


 生贄として、供えられる人のこと……よね?


 思い出してしまったのだろう。


 再びガタガタと震え出す京さん。


 彼女の話では、最近ラマ国では次々に怪奇現象が起こったそうだ。


 何の連絡もなく子どもたちが突然消え、その数日後に戻ってきたと思えば消えていた時期の記憶を一切持っていなかったり、急に動物達が民家で暴れ出したり……など事件が絶えないという。


 そしてついにはこの国の守神とも言われるダーウィン像の首までもが消えたらしい。


「それで? 人身御供を?」


 ウィルがわたし達の前に皿を並べる。


「十七の娘は、わたししかいなくて……」


「ねぇ、それって、誰か人の仕業とかじゃないの?」


「違うと巫女様は言われました」


 その『巫女様』とは、この国を修めている者らしい。なんでも、権力者なのだとか。


「あ、そういえば、この国では術を使える人がいるって聞いたんだけど、本当に……」


 前にウィルが言っていたことを思い出した。


「いえ、今はもう巫女様くらいで、一般人はほとんど使えないんです」


 京さんは今にもまた泣き出しそうだ。


「それってどうやるものなの? 人身御供って……」


 急なウィルの質問に京さんはビクッとする。


 だからわたしは京さんの手をしっかり握った。


 いつもそうしてもらって心強く思えたように。


「か、神がいるという……や、山に行くんです。山の奥に祠があってそこに棺桶だけ残して帰る。そうすると次の日には中身のなくなった棺桶だけが残ってるって……そしてそれを燃やし、供養するんですって……」


 次の日には、中身がなくなる…?


 そ、そんなことが……本当に……


「それはいつ?」


「あ、明日……」


 ポロポロとまた大粒の涙を流す京さん。


「ね? ウィル……わたしたちも巫女様に会ってみない? 何かできるかも……」


 何もできないかもしれない。


 でも、困っている人を前にして何もしないのは一番嫌だ。


「そうだな。行く価値はありかも」


 同じく頷いてくれたウィルにほっとする。


「なら京さん! 早く食べちゃいましょ! 元気出して、前向きな気持ちで巫女様に会いに行こうよ!」


 京さんは黙って頷き、そして涙を拭いてようやく朝食に手をつけた。

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