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レイとローズ

「レイって誰?」


「へ?」


「男?」


 いきなり問われ、驚く。


「ち、違う! 違うわよ! レイは女の子! 親友よ」


 どうしてその名前が出たのか、思わず身構えてしまう。


「なんで今、レイのこと……」


 彼はレイのことを知って……


「昨日ずっとおまえがうなされてた時にそう言ってたから」


「わたし、うなされてたの?」


 はっとしたようにウィルはわたしから目を逸らせた。


 言ってしまったことを後悔したように。


「正確には……」


 どう表現すべきなのだろうか。


「し、親友だった子、かな」


 ウィルの視線が再びわたしを捉える。


「昨日、見たでしょ? 言い合ってたの。あの時の子がレイよ。オレンジ色のきれいな髪の子」


「だった、って?」


 聞いてもいいのか、探っている様子だ。


「レイはもうそんな風に思っていないかもしれない」


 だけど見透かされているみたいで怖い。


「……それって思いこみじゃなくて?」


 少し考えたようにしてウィルが口を開く。


「ないと思う」


 想像よりも無機質な声が出たと思う。


「親友だと思っていたのはわたしだけ」


「昨日のこと?」


 言われて言葉を失う。


「会話のすべてを聞いてたわけじゃないけど、あの子、一生懸命おまえのことを止めようとしてたと思う」


 ウィルが一言一言言葉を紡ぐたびに胸がぐっとなるのだ。


「ローズ、ローズって、俺がその名前を覚えるくらい何度も何度も呼びかけてたし」


「………」


「それに、あの時間って学校ある時間なんだろ? それなのに、あんなに真面目そうな子がそれをほっぽり出してまでも来てくれたのって……」


「で、でも、でもね……」


「何? あの子に惚れてるわけ?」


「は……?」


 だ、だからどうしてそうなるのよ!


「でもでも、って真っ赤になって、自分だってあの子のことおいて海に飛び出してきたくせに」


「なっ?」


 痛いとこを突かれた。


(そりゃ、そうだけど……)


「い、言っとくけど、レイはわたしにとって何よりも大切な親友なのよ。そんじょそこらの恋心と一緒にしないで。そ、それに……」


「ほぉーう」


 ウィルがまた楽しそうに目を細める。


「わたしの恋愛対象はジェクラムアスの王子様一択なんだから!」


 いつもの調子で得意げに言ってやって、いつものとおり後悔したのはそのあとのお話だった。

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