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すべては夢の物語
慣れ親しんだ自室で、ママの声で目が覚める。
瞳を開くと頬が濡れていて、自分が泣いていることに気づく。
枯れたと思っていた涙が、朝になると意志に反して止まらなくなる。
夢を見ていたのだ。
ずっとずっと、長い長い夢を。
果てしなく広い、そして美しい海の旅に出て、憧れだった王子様と出会う。
彼はいつも優しくて、わたしはそんな彼が大好きになった。
『ローズ』
わたしを呼ぶ声がした。
儚く淡い、まさにそれはわたしにとって、とてもとても幸せな夢だったのだ。