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~第8幕~

 病院に入院している傑のお見舞いに賢治と野田がやってきた。



「元気にしているか?」

「ああ、指が1本なくなったから、ヤクザの役しかできねぇな(笑)」

「案外合うかもしれないぞ?」

「野田さん、それは励みにならないよ」

「ニュースはみたか?」

「ああ、みるにはみた」

「お前たちの1件、どうも静まりそうにないな」

「そもそも俺らからこの殺伐とした殺戮ショーは始まってないよ」

「ん?」

「松薔薇さんが死んでから。お笑いがお笑いでなくなった」



 賢治は窓越しに青空に浮かぶ雲を眺めながら野田と傑にぼやいてみせた。



 あの吉原本社での中本たちとの件より数日しないうちに今度は岡崎が首吊り自殺をした。



 遺書はなく週刊誌によっては吉原と関係したヤクザによる他殺なのではないかと疑う声も。



 賢治はその答えを知っている。しかし誰にも言うつもりはない。



 しかして社長職には役員から昇格した楢崎という男が就任する。



 おそらくはこれまでの吉原の流れを組む男で違いない。



 あの血脈はこれからもずっと続いていくものなのだろうから。



 岡崎と言えばドーンタウンの元マネージャーとして働いていた男だ。



 それがドーンタウンの出世とともに彼も社内で大きな存在となっていった。



 ただ2019年には吉原所属タレントがヤクザと犯罪行為を裏で提携していた事が明るみにでて、その際に下手な記者会見を開いて世間を騒がせた経緯もある。



 松薔薇の死……もとい一連の派手な女遊びと性加害疑惑の件もこの岡崎が噛んでいたのだと言えば事実になるだろう。ただ死人に口なし。何が真実なのかは中本たちが世にでてきて話さないかぎりは誰も知る事がないのだろうから。しかし松薔薇が自殺した時は連鎖して彼のファンが全国各地で自殺する事態も発生したし、過激な男が松薔薇支持の主義主張を叫び一般女性を襲った事件もあった。



 最悪のシナリオが最悪を姿を現実を以てしてみせた。



 その責任がメディアで活躍する者たちにないと言うのは嘘になるだろう。



 しかし自分にできる事とは何か?



 どうしようもなく腐敗してしまった吉原の実態を世に広める事なんかではない。



 それをやってしまっては中本との口約束を破る事にもなる。



 では一体何をすれば……



 彼は病院から出て野田と別れてからずっと流れる雲を見つめていた。



 その時に電話が鳴る。



 ずいぶん久しぶりのテレビ局局員からの電話だ。



「もしもし。伊達です。久しぶりですね」

『お久しぶりです。伊達さんにお話があって」

「番組出演の話ですか? 今は遠慮したいかな……」

『いいえ。番組プロデュースのお話ですよ』

「へぇ。興味はあるけどそれもちょっと今は……」

『昨年やらなかった漫才王GPリニューアルの件です』



 何か言おうとしたが言葉が止まる。



 思いもよらない話が降って湧いて出てきたのだ。



 彼は呑気に雲を眺めている場合でなくなった――

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― 新着の感想 ―
[一言]  ここから漫才王GPに繋がるのですね。  伊達たちは芸能界の暗部に触れ、無力感に打ちひしがれてます。ここからどう回復するのか楽しみです。  ではまた。
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