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~第6幕~

 事態が動いたのは「伊達賢治襲撃事件」から1週間経ってのこと。



 吉原は息を吹き返したが如く所属タレントの活躍に尽力しだした。



 この1年の間にドーンタウンの浜本正春は若年性認知症を発症して芸能活動引退を余儀なくされた。それに併せて彼らと同世代の大御所芸人がどんどん離れていく。



 代わりに彼らより遥かに若い逸材をどんどんテレビの世界に送りだしているのだ。



 あの、株買戻し報道があってから……



 その最中でクリスタルエデンが記者会見を開いた。



 1週間経っても行方知れずの伊達賢治不在のまま共同代表の野田栄一郎と松井、会社所属弁護士である野口の3人で。



 クリスタルエデンは吉原買収に失敗した事を認めた。



 しかしテレビ局の買戻しに違和感がある事を謳い、吉原上層部と対話がしたいと意思表明を示したのだ。



 これに対して吉原興行はすぐさまに「何も話す事はありません」と反論。



 クリスタルエデン所属タレントが続々とテレビにでられなくなる事態にも言及していたが、それはテレビ局現場の意向によって決まるものだとした。



 ヨウチューブでの活動を主体とするクリスタルエデン、テレビでの活動を主体にできる吉原興行。その2つにハッキリ色分けされていくようになるのか……



 世間がそんな時代の変移を予想する中で遂にその男が動きだす。



 長らく行方不明だった伊達賢治がヨウチューブとSNSで姿を現したのだ。



『テレビがそのつもりなら俺もそのつもりになる。クリスタルエデン所属のお笑い芸人は漫才王GPはじめ、お笑い賞レースの全てを辞退する。テレビドラマで重宝されている所属俳優も一切のテレビドラマから辞退する。その全てをネット配信あるいはクリスタルエデンが管轄する舞台で活躍して貰うよう手筈を進める』



 この彼の声明はとてもセンセーショナルだった。



 そしてこれに反応せざるえない男もいた。



「野田さん、コレはまずい……彼の暴走ですよ……」

「そう思うのか?」

「テレビで活躍できるタレントを自ら引っこめるなんて本人が納得するわけ……」

「まぁ、そう思っても仕方ないよな?」

「何でそんなに悠長に構えられるのです!? ヨウチューブだけで会社が成り立つと!?」

「ふふふ、俺もお爺さんになったと思うけどさ、アンタよりはまだ若いよな?」

「話を挿げ替えないでくださいよ!」

「俺が何でこのクリスタルエデンを始めたかアンタは知らないのか?」

「伊達君の才能に惚れたから……」

「そうだな。それもあるが本質は違う」

「テレビだけじゃない世界に惚れてしまったからさ」

「野田さんまで彼の戯言を信じてしまうのですか……」

「今回のこの報道、社員の何%に知れ渡ったと思う?」

「えっ?」

「おい、答えろよ。マネージャーだろうが?」

「野田さんら上層部のみ?」

「ブーッ! 99%だよ!」

「全員に知られていた?」

「ああ、お前を除いてな」



 和月は急に立ち上がり、辺りを見渡した。



 柄の悪い男達が野田と和月……いや和月を囲んでいた。



「蛇の道は蛇。いつから吉原とつるんでいるのか知らないが、お前に最後の仕事だ。俺達と吉原社長を会わせろ。非公式で誰にも知られる事もなく。いいな?」



 和月は「はい……」と汗水垂らしながら震えて答えた。



 離れたところから爽やかな青年が野田の真横にくる。それは彼の後釜との事だった――

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