~第10幕~
賢治はテレビ画面に報道番組でコメンテーターを務める松薔薇太志を映した。
すぐ近くには姉御肌アイドルの綺羅めくるがいる。
そう、あの炎上騒動があった番組のあの放送だ。
この時に取り上げられたのはとあるアイドルユニットが男性ファンに暴行された報道について。その背景には同ユニットに所属するメンバーの確執が結構関係しているのでは? との憶測が広がり、トップトレンドを獲り続けたニュースとなった。COLORS―カラーズ―というそのグループはそのままメンバーの凄惨な怪死が相次ぐという事態にまで発展したが、その事態が始まる頃にはテレビも全く触れなくなった。そう、それはこの番組自体がそのトレンドを奪ってしまったからである。
『私はこのグループのコたちと縁した事がないから、何も分からないけども、自分が被害に合うかもしれないっていうなかで真実が有耶無耶になるのは恐いことです。私がこのグループの中にいたならスグにでも辞めると思うけど……生活が掛かってやめようにやめられないコがいるのかもしれないし、そういうコたちばかりかも。スポットライトって1度当たらなくなったら、もう2度と当たる事もできないものでもあるから。簡単に言える事じゃないですけど……うん……難しい』
そこで松薔薇が間髪入れずに吐いてみせた。
『そこは君らがお得意のお体で生きていけばええんちゃう?』
厭らしい笑みを浮かべて。だが、めくるはもっと速い速さで反応をしてみせる。
『サイッテ! こんな大人がいるから世の中が腐る! マジモンのうっせぇよ!』
それにケラケラ笑う松薔薇。
その収録後から彼女は自身のSNSで彼を弄るように攻撃してみせた。「あなたが思うより健康です」と牛乳を飲んでみせる写真をアップすれば「その顔面にバツ」とケラケラ笑う松薔薇の写真に×印を入れた写真をアップするなど。世の話題となるには充分な燃えよう――
しかし世間は意外にも半々の反応だ。松薔薇を非難する声も少なくなかったが「バラちゃんのボケじゃん! ジョークじゃん! マジキレする綺羅がどうかしている!」なんていう松薔薇擁護の熱狂的なファンもいたものだった。
賢治は部屋に飾られている金ぴかの時計をみる。
その時刻になった。窓をみればしんしんと雪が降る。
「ホワイトクリスマスだな。さて……そろそろか」
テレビのチャンネルを変える。
そこに映りだされるのは1年の時を隔てて開幕した新たな漫才王GP。
漫才王になろうGPだ。
司会は賢治の会社が売りだす江川傑と倉木理亜奈。
審査員は新世代のホープ、令和ロマンスの2人。
田口エンタメ野郎、本名は田口奏。田中小雪、本名は田中勇気。
落語家にして怪談師としても活躍する西瓜亭羊。
人気テレビ番組「笑言」のメンバーでもある。
沖縄出身の元俳優にして今はコメディ映画を手掛ける映画監督、小濱小判。
審査員長には若干20代後半ながら現役アイドルとしてバラエティ番組でもお馴染みのテレビの顏となった綺羅めくる……!
そう、あの松薔薇の席にあの彼女が座るのだ。
『あの、私は芸人じゃないですから!』
このフレーズはこの夜から暫く世の決まり文句にまでなった。
彼女がまさかこの仕事を受けてくれるなど思ってもみなかった事だった。
賢治ですら「ダメ元で考えた」妙案だった。
しかし閃きとはハマればこうもうまくいくものなのか。
口にするウィスキーの美味さはこれまでにない最高のクリスマスプレゼントだ。
最終決戦に進出したのはトップバッターで高得点を維持した男女コンビのもふもふ王国。そして結成5年とも経たない女性コンビの瑞祥。SNSでは賛否あれど「漫才王が生まれ変わった」と絶賛をする声がほとんどであったからだ。松薔薇がいなくなった漫才王GPは衰退などしなかった。むしろさらにその強さを進化させたのだ。
特に田口エンタメ野郎がアビゲイルに100点満点をだした際の世の盛り上がりようはリニューアルまえの大会ではみられなかった光景だ。どのコンビにも60点をつけ続ける彼が驚くほどの変わりようで絶賛をしてみせるから、ある意味でアビゲイルは優勝以上のものを手にしたのかもしれない。
「電話?」
イイ酔い心地のまま寝ようとした賢治の懐でスマホが震える。
『伊達さん、大成功しましたね』
「まだ終わってないですよ。最終決戦は来年のバレンタインでしょ?」
『ええ。そうなのですが、また新しいお願いをしたいと思いましてね」
「ははは……ちょっと休ませてくださいよ」
『伊達さんが原作の長編テレビドラマを作って欲しいのですよ』
「はい?」
それは新たな波のはじまり――
∀・)はい。こちら関連作品の『歌ウ蟲ケラ』を読んで貰ったり&僕が開催している「漫才王になろうGP」を楽しんで貰っている人にはとてもハマる話になったと思います。現実にある彼のあのゴシップやM1の話なんかも織り交ぜました。まぁ何か伝わったのであれば、はい、そのとおりです(笑)是非また次号でお会いしましょう♪♪♪




