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嘘か真か、神の誰の仕業か

作者: 雉白書屋

「ああ、神様神様。この度、わたし、お願いに参りました……。

ええ、こちらに足を運び、ちょうど一年になろうとしています。

ここは人気がなく静かで、行き場のないわたしの唯一の心のよりどころでした……。

お掃除にお供え物にと、かかさずしてきたつもりです。

ええ、ええ。勿論、だからと言って、わたくしのお願いを聞き入れて欲しいなんて、そんな恐れ多いことを申し上げるつもりはございません。

不躾に思われたら申し訳ございません。ですが、どうかどうかお聞きくださいませ。

ああ、わたし、油揚げをお持ちいたしました。これをどうぞお召し上がりくださいませ……。

それでお願いというのはですね、罰を与えてほしい人間がいるのでございます。

いえ、もはや人間などとは言い難い、獣のような男でございます。

その男は勝手に我が家に入り込み、我が物顔で練り歩き物色したり、果てには私の体を弄るのでございます。大変不埒で邪悪な男でございます……。

……でも、それだけではないのです。

さらに恐ろしいのは、わたしの娘に成り代わった得体のしれない女でございます。

確かにそっくりで、周りの人間も気づかないのですが、ええ、わかるのです。わたしには。おなかを痛めて産んだ子ですもの。

娘はあ、あ、あの女に、お、お、恐らく殺され埋められ、ああ口にするのも恐ろしい!

……取り乱してしまいました。お騒がせして申し訳ございません。

ですが、もう少しだけお時間をくださいませ。

今、周りの人間もと言いましたが、その周りの人間も魑魅魍魎、卑しい者たちなのでございます。

ここだけの話と、悩みを聞くふりをして結局、下卑た顔で周囲に吹聴し、わたしを嘲笑うのでございます。

おお、神様、神様、どうか哀れなわたしをお助けくださいませ。

貴方様しか頼れるお方がいないのです。どうかどうか、どうかどうかどうか……」











「神様、この度はわたしめの願いを聞き入れてくださりありがとうございました。

流石でございます! まさに神の御業。天罰、落雷でしょうか。

奴らが集まっていた公民館は大火事。逃げ遅れ、死んだり入院したり。

ただ……あの男はどうされたのでしょうか。

わたしが外から家に帰ると血塗れで息絶えておりました。

と、その時、ちょうど娘に成り代わったあの女。

ええ、詐欺師、女狐っとこれはご無礼を、こちらはお稲荷様でしたね。ええ、ええ、あの女もまた死にました。

しかし、困ったことにその、遺体はどうすればよろしいでしょうか?

お願いをこんなに早く……ええ、早く聞き入れていただいたのに、またご相談に来てしまい申し訳ございません。

そう、早くに……あら、こちらに来たのはいつだったかしら……。

昨日……あら、何も覚えていないわ。歳かしらね嫌ですわ。

それでそう遺体ですが、あら、あらあらそうでございますか。

ではこちらにお供えさせていただきますね。

ええ、ええ、そうしますとも、ええ……」

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