追放された公爵子息の悠々自適な生活 ～スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります～

９７．チーズ料理を食べよう

牛や山羊などの動物たちの乳から色々な乳製品を作ったスティクォンたち。

気づけば太陽が中央よりも西へと傾いていた。

「あ！　そういえばヨーグルトのほうはどうなってますか？」

「忘れてました。　ちょっと待ってください」

皆アイスクリームに夢中でヨーグルトの発酵などすっかり忘れていた。

（乳酸菌を入れた）乳を見るとほんの少し凝固している。

「クーイさん、どんな感じですか？」

「【料理神】。　えっと・・・はい、ちゃんとヨーグルトができています」

「できているなら早速試食しましょう」

スティクォンたちはできたてのヨーグルトを口にする。

乳の味とともにほんのりとした酸味が口の中に広がった。

「うーん、これだけ食べるとちょっと物足りないかな？」

「スキル(【料理神】)によると果物やジャム、蜂蜜と一緒に食べるのが良いらしいです」

「それなら試してみよう」

果物、ジャム、蜂蜜を持ってきて早速試してみる。

「果物の甘みがより引き立ちます」

「ジャムと一緒に食べても美味しいです」

「蜂蜜との相性も良いです」

ヨーグルト単品よりも果物などを加えたほうが好評だ。

一通り作って皆食べた感想を述べている。

中でも一番人気はアイスクリームで女性たちからの人気は圧倒的だ。

今は鶏の飼育が最優先になるが、畜産が安定したら量産されることになるだろう。

「さて、これにて乳を使った料理会はお開きにしようか」

「待ってください」

スティクォンが締めくくろうとしたとき、ドーグがストップをかけた。

「どうしたんですか？」

「実は乳の消費量が思ったより少なくて、少しずつ在庫が増えてるのです。　このままいくと古いのはダメになって捨てざるを得ません」

「たしかにそれは深刻な問題だな」

「今回ので乳食品のレパートリーが増えたのは喜ばしいのですが、鶏が量産されるまでの間、肉、野菜、果物のように多くの人に食べてもらえる料理とかはありませんか？」

「料理？　料理ねぇ・・・うーん、たしかチーズを使った料理があったな」

スティクォンはなんとかチーズを使った料理を思い出す。

「あの料理・・・名前はなんていったっけ？　たしか、ピ・・・ピ・・・ピ・・・」

「「「「「「「「「「ピ？」」」」」」」」」」

料理名を思い出そうとしているとウィルアムが答える。

「スティクォン様、もしかしてピザでございますか？」

ウィルアムの言葉でスティクォンは思い出したのか相槌する。

「そう！　それ！　ピザだ！！　皆に是非食べてもらいたいチーズを使った料理だよ」

「ピザ？　そんなに美味しいのですか？」

「たぶん気に入ると思うよ」

「そうですか？　スティクォンさんがいうなら・・・」

「決まりだな。　早速ピザを作ってみよう。　クーイさん」

「【料理神】」

スティクォンの意図を汲み取ったのか、クーイはすぐに【料理神】で調べた。

「えっと・・・小麦粉でパンみたいな生地を作り、できた生地を綿棒で薄く伸ばします。　生地の上にトマトを煮込んだソースを生地からはみ出ないように薄くかけて、その上にチーズをのせて焼き窯で焼く・・・だそうです」

「オーソドックスなピザですな。　具材として肉、野菜、魚を入れた物もございます」

「具ありも良いんだけど今回のはもっともオーソドックスなピザにしよう。　今からだと１人では大変だから手分けして作ろう」

「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」

かくしてピザ作りが始まった。

ピザ生地はパン工房で作られているパン生地を代用することにして、クーイをリーダーとした獣人たちがチーズ作りを、ウィルアムをリーダーとしたメルーアたちがトマトソース作りをすることになった。

空が赤く染まり太陽が西の地平線に触れる頃、南東の人工海に皆集まっていた。

砂浜にはファリーたちドワーフにより急遽作られた複数の焼き窯があり、中は炎の熱に満たされている。

ほかにも大きな寸胴には多くの野菜を煮込んだごった煮(シチュー)やチーズを溶かした鍋と茹でた野菜、香ばしい焼き目がついたグラタンなどがたくさん用意されていた。

「スティクォンさん、何かあったんですか？」

「新しく作った食材(乳製品)を皆に食べてもらいたくて集まってもらったんだ」

「そうなんですか」

今回集まった者たちの大半は新開発した乳製品のことを知らされていない。

ただ、目の前に用意された料理からは食欲がそそられる香りが放たれていた。

子供たちは我慢できないのかすぐにでも手を出しそうだ。

「あまり待たせるのもなんだし皆さん思う存分食べてください」

それを合図に食事会が始まった。

皆好きな料理をとって食べ始める。

「うおぉっ？！　この白色のごった煮(シチュー)美味いぞっ！！」

「なにこれっ？！　濃厚な味が口の中いっぱいに広がるんですけどっ！！」

「熱っ！　でも、美味しいっ！　表面はパリッと焼かれて中はホクホクのジャガイモと白いソースがこれまた合うっ！！」

最初こそ驚いたものの皆美味い美味いと口に入れていく。

「はいっ！　皆さんっ！　焼きあがりましたっ！！」

そこにスティクォン、ウィルアム、クーイ、ほか数名がピザをもってやってきた。

焼きたての香ばしい匂いが辺りを充満する。

リルたちはスティクォンのところにやってきた。

「うわあぁっ！　良い匂いっ！」

「美味しそうですっ！」

「スティクォンさん、これどうやって食べるんですか？」

「手で取って食べるんだよ。　できたてで熱いから気を付けて」

それを聞いてリルたちは焼きたてのピザを手に取る。

するとチーズが糸のように伸びた。

「なんですかっ？！　これっ！　すごく伸びるんですけどっ！！」

「蜘蛛の糸みたいに粘着力はあるけどちょっと違うわね」

「とりあえず食べてみましょう」

リルたちはピザを口に入れると咀嚼してから飲み込んだ。

「「「「「「「「「「っ！！」」」」」」」」」」

あまりの衝撃からか誰も何も言わない。

「どうかな？」

「・・・お」

「お？」

「美味しいですっ！！」

「このパン生地やトマトソースも美味しいですけど、特にこの白いのがとても濃厚で・・・って、これチーズですよね？！」

「そうだよ」

「チーズってこんなに美味しい食べ物だったんですね」

「知らなかったです」

「チーズといいアイスクリームといい乳から作られる品はすごいです」

このあとリルたちはチーズをはじめとした乳製品を絶賛した。