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91.リクル6 〔リクル視点〕

「はぁはぁはぁ・・・」

襲撃を受けてから1ヵ月以上が経ちました。

私は今森の中を西に向かってひたすら歩いています。

時たま立ち止まっては周りを見回して警戒を怠りません。

「追手は・・・ついてきていないわね」

ホッとするも油断はできません。

私は再び西に向けて歩き出します。

(ここで帝国に捕まったら終わりですわ)

どこに隠れ潜んでいるかもわからない者たちに警戒しながら私は移動します。

(せめて体力が無限にあれば・・・)

無限の体力を失った今、無理ができないこの身を恨めしく思っています。

(無いもの強請りをしても仕方ないですわ。 今はこの危機的状況から逃れないと)

私は(かぶり)を振ると周囲を警戒しながら歩きます。

(西に向かうのよ。 そうすれば活路が開けますわ)

私は自分自身を鼓舞しながら歩を進めます。

なぜ西を目指すのか、それは1ヵ月以上前に受けた襲撃が原因でした。


帝国の軍隊から奇襲されてその身に毒を受けた私は逃げてる最中に川辺付近で意識を失いました。

傾斜のある場所だったのか、私の身体は転がるように落ちていったのです。

本来なら死んでいてもおかしくないことですが、幸いにも大樹の窪みに落ちたことにより身体を隠すことに成功しました。

それから1日が経過して、私の意識が回復します。

「・・・ぅぅん、ここは?」

周りを見渡すと木の根っこが私の身体を覆うように取り囲んでいます。

「私は・・・助かったの?」

私が身体を動かそうとした時、外から話し声が聞こえてきました。

『おい、見つかったか?』

『いや、まだだ』

話の内容からしてどうやら帝国兵が私を捕らえようと探し回っているようです。

『ここから離れて遠くに逃げたんじゃないのか?』

『そんなことはない。 毒ナイフを受けている』

『ああ、あの毒か・・・いかに屈強な戦士でもあの毒を受けたら意識を保つのは難しいからな』

『そう遠くには逃げられない筈だ。 もう一度ここら辺を徹底的に探すぞ』

話が終わると私を捕まえるため再び捜索を開始します。

(まずいことになりましたわ)

この場から逃げたいのに動けば帝国兵に見つかるかもしれないという状況です。

近くでは其処彼処から枯葉を踏む音が聞こえてきました。

私は気配を消してその場をやり過ごそうと試みます。

『いたか?』

『こっちにはいないぞ』

未だにこの近くにいるだろうと猶も探し続けています。

(早くどこかに行って)

ぐうううううぅ・・・

丸一日食事をとっていないため、突然私のお腹が鳴りました。

(ま、まずいですわ)

今の音を聞いたのか周りでは話し声が聞こえてきます。

『なんだ? 今の音は?』

『かなり近いぞ』

帝国兵が私のいるほうへと歩いてきます。

(ここまでか・・・)

あきらめかけた次の瞬間突然大声が聞こえてきます。

『おい! そこにフォレスト・ボアがいるぞ!!』

私は目を見開きました。

(フォレスト・ボアですって?!)

魔獣の中でもフォレスト・ベアと並ぶほど厄介です。

『それも8匹もだ!』

『どうする?』

あいつ(フォレスト・ボア)は身体が頑丈で有名だ! それに突進攻撃が本当にやばい! 下手すれば一撃でお陀仏だ!!』

1匹でさえ強敵なのに8匹もいれば絶望しかないでしょう。

『ここは引くぞ!!』

帝国兵は捜索を中断してその場を去ろうとします。

が、撤退時に運悪く見つかったことで事態は急変しました。

『シューッ!!』

腹を空かせていたのでしょう、フォレスト・ボアたちは帝国兵に襲い掛かったのです。

『やばい! 逃げろ!!』

それから聞こえてきたのは帝国兵が逃げ惑う複数の足音とそれを追いかけるフォレスト・ボアたちの鳴き声でした。

しばらくして辺りが静寂に包まれます。

(いったでしょうか?)

10分経過しても変化がないのを確認すると安堵します。

「ふぅ・・・助かりましたわ。 毒でやられたときはもうダメだと思いましたわ」

私は自分の身体に力を入れるとぎこちないですが手も足も問題なく動きます。

周りを見渡すとマジックバックがあったので、中から解毒ポーションを取り出して飲みました。

「んくんくんくっ・・・はぁ・・・」

解毒されたことにより先ほどよりもスムーズに手足を動かせます。

「助かったわ。 魔獣(フォレスト・ボア)に感謝ね」

それからマジックバックから水と食料を取り出すとその場で食べました。

「・・・ふぅ、やっと落ち着けますわ」

食事を終えてこれからのことを考えます。

「まず、町は帝国に監視されている筈なので戻れませんわ」

居心地が良かっただけに戻れないのは悔やまれます。

「そうするとどこに逃げるかですわ」

北の王国と東の帝国は論外。

獣の国の南は標高が非常に高い山脈で、あまりにも険しくそこを越えた者は誰もいないとか。

噂ではこことは違う種族が住んでいるとかこの世の果てとかいわれていますが、真意の程は不明です。

「南は逃げる場所としては最適ですけど難しいですわね」

残されたのは西のエルフの国だけ。

「・・・エルフの国に逃げられれば帝国も手を出せないはずですわ」

行先は決まりました。

あとは決行するだけです。

「今出ていくのは危険ですわ。 しばらくはここで身を隠しましょう。 マジックバックに水と保存食を多めに入れておいたのは幸いでしたわ」

それから一週間、私はその場を動かずにいました。

時たま帝国兵が探しに来るも私を見つけられず、何とかやり過ごすことに成功します。

そして、5日目を最後に帝国兵がここに現れることはなくなりました。

ここではなく川の下流を捜索に変更したのだと推測します。

今がチャンスと私は西に向かうことにしました。


それから私は今日までエルフの国を目指して歩き続けました。

ヒュッ!!

突然前方上空から何かが飛んできました。

「っ!!」

その場を離れると私が先ほどまでいた足元あたりに矢が刺さっています。

「動くな!」

私は素早く周りを見渡します。

(囲まれたっ?!)

どうしようか考えていると目の前に1人の女性が現れました。

「貴様、何者だ? ここより先はエルフの国だ。 早々に立ち去るが良い」

エルフの国?!

(そっか・・・辿り着いたんだ・・・)

私は安堵したのかその場に前のめりに倒れこみました。

「お、おいっ?! しっかりしろっ!!」

女性エルフが近づいてくるも私の意識はすでに手放されていました。


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