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9.リクル1 〔リクル視点〕

時はスティクォンがスキル【現状維持】を知った半月前に遡る。






お父様がスティクォンを追放したと聞いて私は思わずにやけてしまったわ。

私は自室に戻りベッドの上に寝そべると手で目を隠して口角を上げる。

「うふふふふふ・・・まさかスティクォンが追放だなんてね。 これで当主の座に1歩近づいたわ」

ああ、今日はなんて素晴らしい日なのだろう。

これで心置きなく兄様を潰せるわ。

「スティクォン、神から駄スキルを授かってどうもありがとうね。 あなたは私思いの良い弟だったわ。 直接お礼を言えないのはちょっと残念だけどね」

スティクォンまで有能なスキルを手に入れていたらそれこそ厄介だったけど、お父様が切り捨てたなら大したスキルではないわね。

「問題は兄様ね」

実兄ロニー。

スキル【賢聖】。

その絶大なる魔力であっという間に宮廷魔導師団の一員になる。

使える魔法も多彩でゆくゆくは団長に抜擢されてもおかしくない。

「神様も酷い御方だわ。 よりにもよって【聖】を関するスキルを兄様に与えなくてもいいのにねぇ・・・」

私は溜息を吐くと気持ちを切り替える。

如何にしてお父様より当主の座を頂くか。

一番手っ取り早いのはお父様の暗殺ね。

でもこれは無謀としかいえないことだわ。

何しろ私と同じ【剣聖】を所持しているのだもの。

いくら家訓で現当主が急死して近しいスキル保持者が新たな当主になれるとはいえ、お父様を殺すなんて無理だわ。

兄様にはわからないだろうけど、あの死角のない動きではどこから狙っても1撃では仕留められない。

よっぽどの使い手でもないことにはお父様を殺すのは不可能だわ。

今の国王直轄近衛騎士団の中でもお父様と互角に戦えるものは1人入ればいいほうね。

お父様はそれほどの実力者なので暗殺は無理ですわ。

次に考えたのは兄様の暗殺。

しかし、それも現実的ではない。

あの絶大なる魔力と多彩な魔法も厄介だけど、兄様は警戒心が強く、常に自分の周りに二重三重の守りの魔法を展開しているのでとても暗殺はできないわ。

「ダメね。 上手くいかないわね」

頭の中だけでは整理が追い付かない。

せめて紙に書いたり口にできれば少しはすっきりするのだけど。

兄様が館にいる以上は下手なことはできない。

もしかすると監視や盗聴されている可能性があるから。

そういう意味では魔法は何でもありなところは反則だわ。

本当忌々しい存在ね。

直接手にかけるのが無理なら次の手を考えなければならないわ。

そうなると噂を流す。

でも何を流せばいいのか?

決まっている兄様に不利になる噂を流す。

内容は何にしましょうか・・・

(! そうだわ! 兄様がお父様を暗殺しようとしていることを流せばいいわ!!)

だけどそれだけじゃ効果はイマイチね。

(ならもう1つ。 兄様が私を無理矢理現国王に嫁がせようとしている。 これだわ!!)

正直、国王直轄近衛騎士団に配属されたのは良いけど、あの国王の女を見る目は正直嫌いなのよね。

(あのいやらしい目つき、本当に嫌だわ。 さすが国内外に名高い好色男だわ)

自他ともに認める好色男、それがフーリシュ王国の現国王ですわ。

あの国王の妾や愛人になるのだけは死んでも御免です。

今のところは迫られていないから問題ないけど、もし迫られたら斬る気満々ですけどね。

仮に今の女たちを全員捨てて私を王妃にするなら話は別ですけど、そんなことはあの国王は絶対にしませんわ。

(私自身を餌にするのは気が引けますが、これもアバラス家当主の座を手に入れるため)

自らの身を犠牲にしてまでも私はアバラス家当主の座がほしいですわ。

(もし私が当主になった暁には兄様をスティクォン同様にアバラス家から追放・・・では甘いですわね。 いっそのこと暗殺しましょう)

下手に貴族の令嬢に嫁がせたら絶対に復讐されるに違いない。

兄様はスキル【賢聖】がなくてもただでさえ頭の回転だけは速いですもの、当主の座を奪う算段をつけて必ず私の前に現れますわ。

それならアバラス家から追放したあとに、闇ギルドあたりに暗殺を依頼して兄様をこの世から消さないと安心して当主なんてやれませんからね。

(うふふふふふ・・・見てなさい、兄様。 当主の座は私のものよ)

そうと決まればあとはどのような噂の内容にするべきか考え始める。

兄様と違い私はあまり賢くないから、流す噂の内容は慎重に選ばなければならない。

(ミイラ取りがミイラになったら洒落だけでは済まないわ)

下手したら取り返しのつかないことになりかねないですからね。

私は寝る間も惜しんで頭の中で文章を作り上げていく。

翌日、私はお父様と兄様と一緒に食事をした後、兄様がアバラス家を出発したあと、自室で昨日考えていた文章を紙に書き始める。

王都では兄様の目が光っている可能性があるからだ。

本当なら今すぐにでも王都に向かいたいが今は我慢して作業に没頭する。

紙に書いた内容を何度も何度も読み返し、おかしなところがないか何度も見直す。

「よし、これで準備が整ったわ。 さぁ、兄様、覚悟してください。 うふふふふふ・・・」

兄様から半日遅れて私は王都へと馬を走らせた。

本当なら王都に戻ってからすぐに兄様の噂を流す予定だったが、なぜか国王直轄近衛騎士団の仕事が忙しくて時間が取れない。

日々の仕事や訓練で俺は兄様のことをすっかり後回しにしていた。


それからスティクォンをアバラス家から追放して1ヵ月が過ぎた頃、それは唐突にやってくる。

いつものように私は剣の練習を行おうとした。

この時、スティクォンの維持が消失したことにより私の絶大なる体力が失われたことをまだ知らない。


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