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87.闇市

「これでどうかしら?」

シャンティが化粧品を使ってスティクォンの頬に化粧を施した。

「うわぁ・・・」

「すごい・・・」

できあがりを見たメルーアたちが素直に驚いている。

そこには刃物で斬られたと錯覚するほどの深い傷があった。

「これならばスティクォン様だと一目で看破される方はいないでしょうな」

「爺がいうなら問題ないですわ」

鏡で見たスティクォンもこれなら問題ないだろうと納得する。

『それでスティクォン、これからどうする?』

「せっかくだから王国に行って動物や鳥を購入しようと考えている」

スティクォンの言葉にシディアが頷いた。

「人選はウィルアムさん、バーズさん、スポーグさん、それと運搬にファリーを連れていきたい。 ウィルアムさんはその肌だと目立つのでマムモさんの【色染神】で肌色を変えてもらいます」

「畏まりました」

「はい」

「俺たちは構わないぜ」

これで決まったかにみえた。

「どうせなら護衛に虎と鷹も連れていくのを進めるぜ」

「すみません。 ぼくも連れて行ってくれませんか。 きっとお役に立てると思います」

追加でドーグと護衛として虎人族(虎の獣人)鷹人族(鷹の獣人)を推してきた。

「・・・たしかに何かあってからでは遅いからな。 それでは彼らも一緒に同行してもらえるようお願いします」

「応、任せとけ」

「ありがとうございます」

スティクォンたちは急いで準備を進めるのであった。


30分後───

スティクォン、ウィルアム、ファリー、バーズ、スポーグ、ドーグ、それと虎人族と鷹人族の8人が揃った。

皆フード付きマントを身に着けている。

「ウィルアムさん、無理いってすみません」

「いえ、お役に立つのであればこの程度問題ございません」

ウィルアムの肌はマムモの【色染神】によって人間族と同じ肌色に変わっていた。

『皆、準備ができたようだな。 では、行くとしよう』

号令によりスティクォンたちはシディアの背中に乗った。

『スティクォン、どこを目指す?』

「行先はフーリシュ王国最北端の村だ。 ここからだと南西かな」

『うむ、行くぞ』

シディアは翼を羽搏かせると空中に浮かび南西へ飛んで行く。

しばらくは砂漠が続いていたが、やがて砂漠の終わりとともに山脈が見えた。

シディアは上空から山脈をあっさり超えると西に何かの村みたいなものが見える。

『スティクォン、あれか?』

「ああ、まずはあそこで必要な物を手に入れてくる。 シディア、ここに降りてくれ」

シディアは自分の身体を隠すように森の中に着陸した。

「それじゃ、僕はあの村に行って資金を調達してくるから。 ウィルアムさんとあと護衛の2人を連れていってきますので」

「虎と鷹、スティクォンさんの護衛を任せたぞ」

スティクォンはウィルアム、虎人族と鷹人族を引き連れて移動を開始した。

程なくして王国最北端の村に到着する。

そこは相変わらず荒れ果てており、死んだような目をした人たちで溢れていた。

「なんか虚ろな人間ばかりだな」

「ここは王国でも噂に名高い『世捨て村』だからね。 と、こっちかな?」

スティクォンたちは村の裏通りらしき道を進んでいく。

しばらくして道を抜けるとそこには多くの人間が露店で商売をしていた。

もっとも店先には違法により売買禁止されている物が多く並んでいるが・・・

目的の店を探して歩いているといつの間にか刃物を持った怪しい集団に囲まれていた。

「お兄さんたちよ、死にたくなかったら身包み全部置いていきな」

「悪いけどお前たちの要望には応えられないな」

スティクォンが対応するよりも早く虎人族と鷹人族が二手に分かれて集団に突進した。

「え?! 二人とも?!」

慌てて止めようとするもあまりの手際の良さに秒過ぎる毎に倒されていく怪しい集団。

気づけばリーダーらしき人物以外は地面に口づけしていた。

「ちっ!!」

不利と感じたのか逃げ出したが、すぐに足を止めた。

「あ・・・兄貴・・・」

「お前にしては珍しいな」

左目を眼帯で隠した男が部下たちに目配せすると怪しい集団を別の場所に連れて行った。

「うちのやつらが突然襲って悪かったな」

「いや、気にしてはいないさ。 僕たちとしても用件が済んだらすぐに出ていく予定だから」

スティクォンの言葉を聞いて眼帯男がスティクォンたちをじろじろ見る。

「なかなかに身なりをしている。 あいつが狙ったのもうなずける。 それであんたらはここに何しに来たんだ?」

「王国内で使える貨幣と身分証が欲しくてやってきた」

「・・・こっちだ。 ついてきな」

眼帯男が背を向けると歩き出したのでスティクォンたちもそのうしろをついていく。

しばらくすると1つの露店に入った。

「よう、邪魔するぜ」

「らっしゃい・・・って、旦那じゃないですか。 どうしたんです?」

「実はこいつに金と身分証を作ってやってほしい」

眼帯男が右手の親指でスティクォンを指さす。

「それは構わないですけど、持っているのかい?」

商人が先に金銭を要求してきた。

スティクォンは袋から宝石をいくつか取り出すと商人の目の前に置く。

それを手に取って1つ1つ確認する。

「・・・どれも本物だな。 すぐに用意しよう」

商人は宝石を持って奥に行くとすぐに袋と1枚の紙を持って戻ってきた。

「ほら、金だ。 それとこっちは身分証だ」

中を確認すると思っていた額よりも少ない。

「少ないように見えるけど」

「はっはっは、勘弁してくれよ兄さん。 今の王国はただでさえ急騰して大変なんだからよ」

商人は後頭部を手で掻きながらぼやいた。

スティクォンが眼帯男を見る。

「本当のことさ。 少し前までは相場も落ち着いていたんだけどな。 噂ではどこかの貴族のボンボンがいなくなったことで今みたいな大恐慌になったらしいぜ」

「はぁ、その貴族の息子も迷惑なことをしてくれますね」

「まったくだ」

眼帯男が話した貴族のボンボンは実はスティクォンのことを指していた。

そうとは知らないスティクォンは大恐慌を引き起こした貴族のボンボン(自分)に呆れている。

「まぁ、当初の予定通り金と身分証が手に入ったからいいか」

「また入用があったら来るがいい。 ここなら何でもそろうからな」

「そうさせてもらうよ」

何はともあれスティクォンは予定通り貨幣と身分証を手に入れることに成功した。


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