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86.化粧品を作ろう

温泉に入った翌日、スティクォンたちは死の砂漠の中央にある巨木に集まっていた。

「みんな、今日集まってもらったのは人工山がある程度できあがったので、ここ(死の砂漠)に動物や鳥を連れて来る予定だ」

「スティクォン様、具体的にはどのように動物や鳥を確保するのでございましょうか?」

「それなんだけど一番手っ取り早いのは牧場などから購入することだ。 けど・・・」

スティクォンはいったん言葉を区切ると暗い顔になる。

「どうしたんですか?」

「僕がいたフーリシュ王国で購入するとなるとお金が必要になるんだ。 ウィルアムさん、伝手はないかな?」

スティクォンの質問にウィルアムは首を横に振る。

「あることはありますが、メルーアお嬢様の身に危険が及ぶ可能性がありますので承服いたしかねます」

ウィルアムなら伝手があることも質問に対して拒否することも想定していたことだ。

「シディアは?」

『うむ、美味い魔物や魔獣ならいくらでも知っているが、動物には詳しくない』

シディアの回答も想定通りの内容であった。

「だよね・・・うーん、どうしよう・・・」

「何か問題があるんですか?」

「お金に関してはクレアの【鉱石創造】でいくつか宝石を造ってそれを売ることで手に入れる予定だけど、問題は僕たちの容姿なんだよね」

スティクォンは自らの顔を指さした。

「僕は人間族の元貴族なんだ。 父上は国内外に有名である程度顔が知れ渡っている。 王国に行って万が一、僕だとバレると厄介なことになるかもしれない。 それと動物や鳥を購入するなら【鑑定】が使えるウィルアムさんを連れていきたいところなんだけど、人間族では一方的に魔族を忌み嫌っているんだよ」

『ふむ、なるほどな。 スティクォンたちが出向けば捕まるか殺されるかというところか?』

「さすがにそれはない・・・とは、断言できないけどその可能性は無きにしも非ずかな」

獣の国に向かう際にフーリシュ王国の荒れようを見て、身の危険を感じたスティクォン。

どうしたものかと考えているとマムモが手を挙げる。

「それなら変装すればいいのではないですか? 例えば顔や髪の色を変えれば誰もスティクォンさんとわからない筈です」

「たしかにそうだけど・・・」

なおも心配するスティクォンだが、マムモは近づいてスティクォンの髪に触れる。

「マムモさん?」

「なら試してみましょう。 【色染神】」

マムモが【色染神】を発動するとスティクォンの髪が白色に変色した。

「「「「「「「「「「おおぉー」」」」」」」」」」

普段とは違う雰囲気にメルーアたちが驚きの声を上げる。

「どうですか? これならすぐにバレることはないのでは?」

「たしかにバレ難いですわ」

メルーアたちが興味深げにスティクォンをまじまじと見ている。

「そんなに違うのか?」

「はい。 髪の色が違うだけで印象がかなり違います」

「遠目から見たらスティクォンさんだと気づかないと思いますよ」

「知っている人でもすぐにはわからないと思います」

リル、ファリー、クレアの言葉にメルーアたちが頷く。

「それでは肌の色はこんな感じにしましょうか」

マムモがスティクォンの顔に触れて【色染神】を発動すると肌の色が少し日焼けしたように変色する。

「皆さん、どうでしょう?」

「別人ですわ」

メルーアの言葉にリルたちが同意する。

ウィルアムは手持ちの鏡を取り出してスティクォンに自身の姿を見せる。

「・・・メルーアたちの言う通り普段の僕とは全然違う。 これなら人間族の町に行ってもすぐには僕だと気づかないな」

「ただ、スティクォンを知っていて感の良い人が見たらわかるかもしれないわね」

「顔に目立つような傷や黒子(ほくろ)を追加すればいいのでは?」

ハーニの意見にスティクォンも賛成する。

「そうだね。 マムモさん、傷や黒子(ほくろ)を追加できますか?」

「ごめんなさい。 そこまで細かいのはちょっと・・・」

「化粧品があれば私が化粧をしてあげられるのにね」

シャンティの一言にメルーアの目の色が変わった。

「化粧品?! 欲しいですわ!」

「とはいえ、こんな場所で化粧品なんて・・・」

「できますよ、化粧品」

スティクォンたちは一斉にドーグを見た。

「え? 今何って言ったの?」

「だからできますよ、化粧品」

ドーグができると断言する。

「本当ですの?!」

「ええ、身体のことを考えると鉱物よりも食物から作ることをお勧めします」

「具体的にどの食物から作るんだ?」

スティクォンの質問にドーグが答える。

「でんぷんが含まれている食物が望ましいです。 とうもろこしとかじゃがいもとか」

「リル」

「両方ともあります」

「それなら早速作ってみようか」

ドーグ監修の下、化粧品作りが始まった。

話し合いの結果、材料はとうもろこしに決定した。

南西の畑に向かいとうもろこしを収穫してからクーイたちが住む(きのこ)の家に移動する。

作業場所はアールミスが使っている錬金術の作業場だ。

「それでは化粧品作りを始めます。 まずはとうもろこしを実と芯に分けます」

皆で手分けしてとうもろこしを実と芯に分けた。

「アリアーサさん、【水神】でとうもろこしの実を乾燥してください」

「わかりました。 【水神】」

アリアーサはとうもろこしの実に手を翳すと【水神】を発動させて水分をなくして乾燥させた。

「こんなところでしょうか?」

「上出来です。 次に乾燥したとうもろこしの実を細かく()きます」

「なら、この石臼で挽くとしよう」

アールミスは乾燥したとうもろこしの実を石臼で挽いて粉状にする。

「これくらいでいいか?」

「はい。 あとは挽いた粉を網目が細かいふるいにかけます」

「これを使って分けましょう」

クーイが近くにあったふるいを持つと料理を作るような感じでとうもろこしの粉を丁寧にふるいにかけた。

これにより粉状のでんぷんと胚芽などの不純物と分けられる。

ドーグは粉状になったでんぷんを見て1つ頷く。

「化粧品が完成しました。 基が食物なので口に入れても問題ありません。 とはいえ、1週間以内に使い切るのが望ましいでしょう」

「ただ、これだと白色しかできませんわ」

「そこはマムモさんの【色染神】で色を変えることで解決できます」

「なるほど」

こうしてとうもろこしから化粧品であるコーンスターチができあがった。


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