84.滝を見よう
ざあああああぁ・・・
螺旋式汲み上げポンプに設置されているハンドルの右回転を維持したことにより、ハンドルは止まらず回り続け筒からは湖から汲み上げられた水が常に噴き出している。
「次、行きます!」
ファリーは隣にあるポンプのハンドルを力任せに思い切り右に回した。
スティクォンもすぐに【現状維持】を発動してハンドルの回転を維持する。
筒から水が噴き出し、ハンドルが回り続けるのを確認すると次のポンプへと取り掛かった。
それから同じ作業を幾度と熟すとファリーは最後に残ったハンドルに手を触れる。
「これで最後です! それ!!」
ファリーはポンプのハンドルを右に回す。
スティクォンも【現状維持】を発動してハンドルの回転を維持した。
しばらくして最後の筒からも水が噴き出すのを確認する。
これにより人工山の頂上に設置されている全ての螺旋式汲み上げポンプが稼働した。
「お疲れ様。 これで頂上にあるポンプは全部稼働したよ」
スティクォンたちはポンプを見る。
1つ1つの筒からそれなりの水が噴き出していて、全部足すととんでもない量の水が山頂まで汲み上げられていた。
「すごいことになってるな。 この勢いで汲み上げて湖の水は大丈夫なのか?」
「計算上は山頂から流れた水が湖に戻ってくるまでの間に干上がらないよう十分な量を確保はしているよ」
スティクォンの質問にティクレは問題ないと回答する。
「とりあえず湖に戻って水の量を確認しましょう」
「足りなければわたくしが【水魔法】で増やしますわ」
スティクォンたちは水を確認しに湖へと戻った。
水位を確認すると最初見た時よりもほんの少し下がってはいるが、まだまだ余裕がある。
「見たところ湖の水が枯渇する心配はなさそうだな。 そういえば山頂からの水はどのくらいかけてここに戻ってくるんだ?」
「外周を通った場合は約2日かけて戻ってくるかな。 といっても、途中枝分かれしているから最短だと約1日くらいだよ」
「1~2日くらいなら問題なさそうだ」
スティクォンが納得しているとファリーとクレアがスティクォンの手を引っ張った。
「スティクォンさん、あっちに行きましょう」
「すごいのが見れますよ」
2人は早く見せたいのか急かすよう促す。
「ファリー、クレア、そんなに引っ張らなくても・・・」
「そうですわ。 あれは見るべきですわ」
そういうとメルーアまでもスティクォンの背中を押した。
「メルーアまで・・・わかった、行こう」
案内されてやってきたのは人工山の頂上からやや東南東に位置するところ。
そこには頂上から流れた水が落下して滝となっていた。
滝の横幅100メートル、高さ80メートルといったところだ。
「はぁ・・・すごいな」
「山といえばやっぱり滝がつきものですわ」
メルーアの話では昔ハーニたちをスカウトした魔湖にも滝があるそうで、シディアに追加してほしいとお願いしたところ二つ返事で了解をもらったそうだ。
一緒に聞いていたティクレも設計をすぐに修正して、それを基にファリーたちに指示して作らせたらしい。
作業の裏話を聞いてスティクォンは苦笑いする。
「ファリー、クレア、リルには見せてあげたのか?」
「はい! すごく綺麗だったからすぐに見せました!」
「リルちゃんもこの光景に驚いていました!」
滝を見れば誰もが驚いた顔になるのは想像に難くない。
そんなことを考えながら滝を眺めているとあることに気づいた。
「ん? あれは・・・」
「気づきました?」
目を凝らして見て確信したのかスティクォンが言葉にする。
「ああ、もしかしてあの滝の裏側って入れるようになっているとか?」
正解を言い当てられたのかメルーアたちの頬が膨らむ。
「ちょっと! スティクォン!」
「スティクォンさん! 見つけるの早すぎです!」
「せっかく驚かそうとしたのに!」
「え? あ、ごめん・・・」
「もう! 空気読んでくださいよ!!」
「まぁまぁ、それよりどうなっているのか案内するよ」
メルーアたちに文句を言われながらも滝の裏へと案内された。
到着すると裏側から見た滝は、正面から見るのとは違い滝つぼに落ちていく水の迫力に圧巻する。
その上、水がいつもよりもひんやりと感じていた。
「どうですか?」
「これはすごいね・・・」
スティクォンは滝の裏側に驚いていたが、それよりも気になっているものがあった。
それは今見ている滝の反対側、スティクォンのうしろに40メートルほどの穴があるのだ。
ある程度滝を眺めてから後ろを振り返りメルーアたちに質問する。
「これは?」
「洞窟ですわ。 とはいっても、魔物や魔獣が跋扈するダンジョンと違いちょっとした洞穴ですわ」
「こういうのってちょっとワクワクしますよね!」
「うん! 私もファリーちゃんと同じです!」
待ちきれないのかファリーとクレアから早く案内したいという気持ちが犇々と感じた。
「へぇ・・・中に入っても?」
「もちろんです!」
穴に入るとほんの少し下るような坂を100メートルほど進んだところで視界が開け、そこには神秘的な光景が広がっていた。
直径50メートルほどのドーム型の空間で、中心部には外の光が差し込んでいる。
あまりの美しさにスティクォンはしばし見惚れていた。
「・・・すごいな。 これ全部作ったのか?」
スティクォンの質問にファリーが嬉々として答える。
「はい! ドワーフの皆と頑張って作りました!」
「崩落しないようにちゃんと計算して作ったから大丈夫だよ」
ティクレ曰く、メルーアの無茶ぶりを聞き、思案した上で設計したそうだ。
話を聞いたスティクォンは溜息を吐いた。
「はぁ・・・無理をさせてごめん」
「気にしなくていいよ。 最初は驚いたけど、やってるうちにどんどん楽しくなっていったからね」
ティクレ自身も人工山に色々な技術を生かせて喜んでいる。
しばらくの間神秘的な空間に癒されているとメルーアから声をかけられた。
「それでは次・・・本命に行きますわよ」
「本命?」
メルーアはスティクォンの左腕を掴むと次なる目的地へと歩き出す。
「ほら! 早く行きますわよ!」
「ちょっ?! メルーア?!」
どこにこんな力があるのかと疑ってしまうほどの力でスティクォンを引っ張っていくメルーアであった。




