表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/156

83.人工山を作ろう

スティクォンは獣人たちを引き連れてホビット族たちのところに向かった。

「獣人の皆さん、今日からしばらくの間ホビットたちが収穫した野菜や果物を倉庫に運ぶ手伝いをお願いします」

「お前ら張り切ってやるぞ」

「「「「「「「「「「「おおおおおぉーーーーーっ!!」」」」」」」」」」」

バーズが発破をかけることで獣人たちをやる気にさせた。

それから収穫した野菜や果物を載せた荷車を力のある獣人たちが押して運んでいく。

今までは収穫から運送までホビット族たちが引き受けていたが、獣人たちのおかげで栽培・収穫に集中できるようになった。

ホビット族たちと獣人たちの間で問題ないことを確認する。

「さて、シディアたちのほうはどうかな?」

死の砂漠の北東へと移動するとそこには巨大な穴があった。

「え? 何この穴?」

不思議そうに穴を覗いているとそこにウィルアムがやってきた。

「スティクォン様、いかがなさいましたか?」

「ウィルアムさん、この穴はいったい何なの?」

「こちらはシディア様の発案でこの北東に山を作るということになりまして、その前提で地下空間を作ることになりました」

「地下空間? なぜ?」

「おそらくですがシディア様の塒として利用されるのではないかと」

ウィルアムの言葉にスティクォンは納得する。

北西の住宅地にもシディア用の雨風を防げる家屋はあるがそれでは物足りないのだろう。

「そういえば何かの書物でドラゴンは穴倉が好きだと書かれていたな」

「人の手が滅多に入らないところですので地上よりかは安全な場所かと愚考いたします」

「地下なら財宝を隠すのにも最適だしね」

現在シディアがここ(死の砂漠)に持ってきた宝石などはウィルアムが代わりに管理している。

だが、シディアとしては誰かに管理されるよりかは自分で管理したいのだろう。

「それで地下が完成したら地上に山を作るの?」

「はい。 構成につきましてはシディア様の頭の中でございます」

「今回はシディアに全部任せているからな。 本人がやる気になっているし、余計なことはしないでおこう」

「それがよろしいかと」

スティクォンとしてもシディアの好きにさせるつもりだ。

「そうそう、スティクォン様にも山作りにご助力したいことがございます」

「別に構いませんよ。 必要な時に声をかけてください」

「では、その時が参りましたらお声をおかけします」

ウィルアムとの会話を終了するとスティクォンはリルを手伝いに南西の畑に戻った。


それから2週間後に地下が完成するといよいよ地上の山作りが始まった。

メルーアの【土魔法】で土を作り出すとファリー率いるドワーフたちが少しずつ傾斜をつけて地盤を固めていく。

川になる場所にはクレアの【鉱石創造】でオリハルコン(神金石)の板を作成して埋めた。

これにより水漏れを防ぐことができる。

そのあとも作業は順調に進み、更に2週間後に山の外観が完成した。

遠目に人工山を眺めていたスティクォンのところにメルーアたちがやってくる。

「シディア、あれで完成か?」

『見た目だけな。 これから川の水を引いたり草や木を作成せねばならぬ』

「まだまだ時間がかかりそうだな」

シディアと話しているとそこにティクレが声をかけてきた。

「スティクォンさんに手伝ってほしいんだけど」

「えっと・・・僕の力が必要なの?」

「はい。 スティクォンさんのスキル(【現状維持】)が必要なんです」

「わかった」

「それでは参りますわよ」

メルーアたちに連れられてきたのは山の頂上から北北東の場所だ。

そこには大きな湖が広がっていた。

「ここは?」

「人工の湖だよ。 この湖にある水をあの場所まで引くのにスティクォンさんのスキル(【現状維持】)が必要なんだ」

ティクレが山頂を指さす。

湖から山頂までは急な傾斜でとても水を引けるようには見えなかった。

「え? ここからあそこまで?」

「そうだよ。 すでに水は引いたんだけど持続力がなくてね。 詳しいことは山頂に行って見てもらったほうが早いかな」

「とりあえず行ってみるか」

メルーアたちの案内でスティクォンは山頂へ向けて歩き出した。

緩やかな山道を歩くと程なく山頂へと到着する。

「登ってみるとそんなに高くないな」

「子供でも気軽に登れるように設計したからね」

「良い運動になりますわ」

高さ120メートル。

見た目は山というよりもどちらかといえば丘に近い感じだ。

「スティクォンさん、こっちです」

ティクレに案内されたところには変な筒がいくつもあった。

中を覗いてみると中心の棒に螺旋状の板がついており、先端には手動で回すハンドルが備えつけてある。

「これは?」

「私の【技術神】で開発した螺旋式汲み上げポンプだよ。 このハンドルを右に回すと水が螺旋状の板にすくわれて上へ上へと移動する仕組みになっているんだ」

「へぇ、そうなんだ」

スティクォンは試しにハンドルを右に回そうとした。

「ん? ぎぎぎ・・・」

全力で動かそうとするもハンドルはピクリとも動かない。

「はぁはぁはぁ・・・な、なんなんだ? これは・・・」

「スティクォンさん、これ一人で回すの無理だから」

スティクォンは疲れた顔でティクレを見る。

「え? それじゃ誰が回せるんだ?」

「ファリーさん」

「任せてください!」

ティクレに呼ばれてファリーがやってきた。

スティクォンが場所を譲るとファリーがハンドルに触る。

「いきますよ! せーの・・・それ!!」

ファリーは力任せに思い切りハンドルを右に回した。

勢い余ってかハンドルがくるくると右に回り続ける。

すると筒から水が噴き出してきた。

「・・・」

「どうだい? すごいだろ?」

「これ、何度やっても面白いですよね」

気に入ったのかファリーが楽しそうに見ている。

しかし、時間が経つにつれハンドルの回転が弱まり、やがて完全に停止した。

「あーあ、止まっちゃった・・・」

「と、こういう感じさ」

「つまり僕のスキル(【現状維持】)でこの回転を維持し続ければいいんだね?」

「その通り!!」

「わかった。 早速やろう」

ファリーは再びハンドルに触れると力任せに思い切りハンドルを右に回す。

スティクォンはすぐに【現状維持】を発動してハンドルの回転を維持するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
[一言] 現在で言うところの、モーターでかいてんさせつづけてみずをくみあげつづけるいめーじなのかも。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ