82.話し合い 〔シディア視点〕
我はメルーアたちと北東の未開拓地について話し合いを始めた。
「シディア様、北東の土地をどのように開拓なされるのでしょうか?」
『我のイメージとしては山だな。 動物たちを放牧して育てる』
「山ですか?」
『うむ、その為にはお前たち全員の協力が必要不可欠だ』
メルーア、ウィルアム、ハーニ、ビューウィは納得するもファリー、クレア、ドレラ、アリアーサ、ティクレはなぜ自分が開拓に必要なのか疑問に感じていた。
「あの・・・シディアさん、私は何の役に立つのでしょうか?」
「そうですよ」
「気になる」
「私なんて水しか弄れないですよ」
「それを言ったら私の技術をどこに生かすのかな」
不安を感じたファリーたちに我は説明する。
『それぞれの役割分担だが、最初に地下を作りたいので我が人工海と同じ穴を掘る。 そのあとはクレアの【鉱石創造】でオリハルコンの板を作成して四方と底をしっかりと補強してもらう。 作業イメージとしては人工海と同じだが、地下が重さで潰れないように何百という柱を作る必要がある』
「なるほど。 シディアさん、柱は人工海の無人島を作った時の円柱みたいなものですか?」
1度作ったことがあるからかイメージできたクレアは作業内容について質問してくる。
『その通りだ。 基本的には1キロ毎に巨大な円柱を作ってもらう予定だ。 詳しいことは我が指示を出す』
「わかりました」
クレアが納得したところでメルーアを見る。
『クレアが土台を作ったあとだがメルーアの【地母神】で山になるように土を作ってもらう。 山の頂点は中央よりも北東にする予定だ』
「わかりましたわ」
メルーアが了承する。
『その際に山から川を引きたいのでティクレの【技術神】を活用したい』
「シディア様、具体的に教えてほしい」
『基本的には山の頂上から引いて途中幾筋かに別れるように流れ、再度合流して最後に河口となる湖に到着する予定だ』
ティクレが少し考えてから質問する。
「山の頂上から湖に流れ着くのは理解したが源流となる水はどうするのかな? 誰かが常に【水魔法】で上から流し続けるとか? それともアールミスに魔道具を作成してもらい、できた物を山の頂上に設置して常に稼働するとか?」
『できれば湖の水を山の頂上まで引いて循環させたい。 ティクレ、できるか?』
我の要望にティクレが笑みを浮かべて応える。
「技術的なことなら任せてほしい。 そうだな・・・メルーアさんとウィルアムさん、それとファリーさんとクレアさんの助力があれば問題なくできるね」
「それなら協力しますわ」
「承りました」
「手伝うわよ」
「私でお役になてるなら」
メルーア、ウィルアム、ファリー、クレアがティクレに二つ返事で了承する。
『山ができあがったあとはメルーア、ハーニ、ビューウィに牧草や果実などの樹木の生成を任せるつもりだ。 メルーアは続けての作業になってすまない』
「牧草は理解しますが果物の木ならすでに南西にありますよね?」
アリアーサの問いにウィルアムが答える。
「牛、馬、兎などは牧草でも問題ございませんが、猪や熊などは雑食でございます。 飼うとなると多くの恵みが必要になることでしょう」
『ウィルアムの言う通り自然のまま気軽に食べられるようにその場で環境が完結しているのが望ましいというのが我の考えだ』
「な、なるほど?」
我の説明にアリアーサはまだ納得していないようだ。
『話を続けるぞ。 ファリーは養豚場や養鶏場など各動物に合う厩舎の建設を頼みたい』
「それなら任せてください」
建物の建設と聞いてファリーは了承する。
『ドレラには湖の浄化を頼む』
「・・・(コクコク)」
ドレラも自分の役割を納得したのか頷く。
『そして、アリアーサ。 お前には雲を作って雪を降らせてもらう』
「雲っ?! 雪っ?!」
我の言葉にアリアーサが驚愕する。
「え、えっと・・・雲なんて作れませんよ。 ましてや雪を降らせる芸当なんてできませんよ」
『お前の【水神】で空気中の水を水蒸気に変換して上昇させればよい』
「そんな無茶苦茶な・・・」
頭を抱えるアリアーサ。
そこにウィルアムが助け舟を出す。
「アリアーサ様お一人では無理でもスティクォン様とシディア様の助力を得られれば可能かと」
「それでも雲ですよ! 雲! どうやってあんな高いところに雲を作るんですか!!」
アリアーサは空を指さす。
そこには雲一つない晴天が広がっていた。
『ならば作ってみるか。 メルーア、アリアーサ、我の背中に乗れ』
「わかりましたわ」
「は、はい」
メルーアとアリアーサが我の背中に乗ったのを感じると羽搏かせて空に飛ぶ。
ある程度の高度まで上昇するとその場に留まる。
『メルーア、【水魔法】で我らの周りに水を放出しろ』
「いきますわよ」
メルーアは【水魔法】を発動すると我らの周りに水を発生させた。
『アリアーサ、メルーアの放った水を水蒸気に変換してみろ』
「や、やってみます」
アリアーサは【水神】を発動して空気中の水を水蒸気に変換した。
すると地上からファリーたちの声が聞こえてくる。
『あ! あれ!』
『シディアさんの周りに薄っすらと雲ができています!』
しばらくすると我らの周りにも変化が訪れた。
白い靄が見え我らを包み始めたのだ。
『アリアーサ、これが雲だ。 時が来たらお前にはこれよりももっと低温な雲を作ってもらう。 いいな?』
「わ、わかりました・・・」
我からの位置ではわからないが多分アリアーサは首を縦に振っているだろう。
確認できたところで地上に戻る。
『最後になったがウィルアムは我ら全員のサポートだ』
「畏まりました」
ウィルアムが頭を下げる。
『以上が山作りの内容だ。 何か質問があれば聞こう』
ファリーが手を挙げてすぐに提案する。
「シディアさん、ドワーフの皆にも手伝ってもらえれば早く作れると思います」
『たしかにそのほうが早くできそうだな。 ファリーよ、頼めるか?』
「任せてください」
我の頼みにファリーが了承する。
『ほかに何かあるか?』
メルーアたちは皆沈黙している。
『なければこれより北東の未開拓地に人工山を作る』
こうして我らは北東の未開拓地の開発を始めるのであった。




