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8.ロニー1 〔ロニー視点〕

時はスティクォンがスキル【現状維持】を知った半月前に遡る。






スティクォンをアバラス家から追放したと聞いた俺はあまりの嬉しさに、父上たちの前でつい素の顔を見せてしまった。

俺はアバラス家の自室に戻ると誰もいないことを確認したあと自分を戒める。

「いくらライバル(スティクォン)が減った(が追放された)とはいえ、父上の前で失態したな」

スティクォンが神からどんなスキルを賜ったのか知らないが、父上を怒らすほど酷いスキルなのだろう。

「スティクォンも哀れな奴だ。 だが早々に脱落してくれて良かったよ。 リクルだけでなくスティクォンまでも優良なスキルとなるといよいよ本格的に動かざるを得ないからな」

当主の座につけるのは1人だけ。

長兄である俺こそがその椅子に座るのに相応しい。

実妹実弟などに渡してなるものか。

「問題はリクルだな」

実妹リクル。

スキル【剣聖】。

よりにもよって父上と同じスキルを授与されているからな。

もしアバラスの家系が剣に重きを置いていたら今頃リクルが当主の座に座っていただろう。

俺もスティクォンと同じく早々にこの家を追い出されていたに違いない。

何しろ俺が授かったのは【賢聖】だ。

普通なら父上の血を引いているのだから【剣聖】とまでは言わなくとも、それに近いランクか【槍聖】などのほかの武術系スキルを覚えてもよかったんじゃないだろうか。

あとはアバラスの家系が魔法に重きを置いていたらと何度夢想し悔やんだことか。

「もし俺が当主の座に就任した暁には今後の家系は魔法重視にするのも悪くないな」

俺は未来の自分がアバラス家の当主になっているビジョンを想像していたら、いつの間にか口角を上げていた。

「その為には邪魔な妹(リクル)には悪いが当主候補から降りてもらわないとな」

一番手っ取り早いのはリクルのあることないこと噂を拡散させることだが、それはあくまでも身代わりがいる前提だ。

俺はリクルの評判を貶める役としてスティクォンを考えていた。

だが、父上が早々にスティクォンを追放したせいでこの手は使えない。

そういう意味では惜しい駒を失くした。

次に考えたのは父上の暗殺だがそれはできない。

理由は2つあり、1つは父上を暗殺するのは不可能だということ、もう1つは死亡した場合に家訓に則って当主が決まってしまうことだ。

1つ目は【剣聖】である父上を誰が暗殺するのかだ。

このフーリシュ王国で父上の武力を知らない者など赤子や幼子以外知らぬ者などいないと断言できる。

それほどの実力者を誰が殺せるものか。

そもそも父上を上回る実力者が国にいるかも怪しい。

俺自身の手で殺そうと思えばできるだろうが、それでは自分がやりましたと宣伝しているようなものだ。

なので暗殺はパス。

2つ目は仮に今父上が次期当主を決めずに死んだら自動的にリクルになってしまうところだ。

なぜリクルになるかといえば、『家訓に現当主が急死した場合はそれに近しいスキル保持者を新たなる当主とする』と書かれているからだ。

つまり父上が今死んだ場合はまったく同じスキルを持つリクルが自動的に新たな当主になってしまう。

なのでそれだけは絶対に避けなければならない。

あと残されている選択肢としてはリクルの暗殺くらいだがそれも難しいだろう。

「さて、どのような手で当主の座を手に入れるかだ」

普通に考えればリクルを殺すか貶めるか俺自身の評価を上げるかだが・・・

「いや、リクルがどこかの馬の骨に嫁げばな・・・」

仮にも公爵の娘だ、そんな都合の良い相手など・・・

「いた!!」

俺はその人物に心当たりがある。

それは国王陛下だ。

先代の国王が崩御したのが12年前で代替わりした若き国王。

ほかの国王候補者が産まれなかったことから齢15歳にして自動的に現国王へと祭り上げられた。

しかし、この国王はとんでもない好色男だ。

気に入った女は貴族だろうが、平民だろうが、人妻だろうが、幼女だろうが、婚約者がいようが関係ない。

すべて権力で奪い取ってきた。

現に王妃殿下のほかに数十という妾や愛人がいるのは周知の事実だ。

その裏では家族や恋人、あるいは当の本人も含めて多くの者が涙を流している。

そんな最低男のところにリクルを嫁がせることができれば・・・

「ふふふ・・・ありだな」

俺は早速どのような手で国王にリクルに嫁がせるか考え始めた。

リクル自身が国王直轄近衛騎士団の団員であることは好都合なのだが、そこからどのようにしてリクルを国王の毒牙にかけるかだ。

「一番良い手は噂を流すことか・・・」

内容としては何があるか・・・

リクルが国王に求婚している・・・はさすがにないな。

リクルと国王がすでに蜜月な関係・・・うん、これをもっとオブラートに包んだ言い方で誰かから噂を流せばいけるのではないだろうか。

そうと決まればあとはどのように行動を移すかだ。

俺は詳細な部分を煮詰めていく。

その作業は夜遅くまで行われた。

翌日、俺は父上とリクルと一緒に食事をした後、仕事に戻るといって早々にアバラス家を出発する。

馬を走らせながら俺は未来の自分を想像した。

「ふふふ・・・もうすぐ、もうすぐだ。 アバラス家のすべてが俺の物になる」

俺ははやる気持ちを抑えながら王都へと馬を走らせた。

本当なら王都に戻ってからすぐにリクルの噂を流す予定だったが、なぜか宮廷魔導師団の仕事が忙しくて時間が取れない。

日々の仕事や訓練で俺はリクルのことをすっかり後回しにしていた。


それからスティクォンをアバラス家から追放して1ヵ月が過ぎた頃、それは唐突にやってくる。

いつものように絶大なる魔力を行使して魔法の練習を行おうとした。

この時、スティクォンにより維持されていた絶大なる魔力が消失したことを俺はまだ知らない。


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