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78.人材をスカウトしよう6

声がしたほうを見るスティクォン。

そこには多くの獣人が魔獣たちと交戦していた。

「スティクォン様」

「わかってる!!」

スティクォンは【現状維持】を発動して交戦している獣人たちの生命力や体力、身体を維持した。

これにより魔獣たちとの戦いでは傷つかず死ぬことはないだろう。

「今戦っている獣人たちはスキル(【現状維持】)で死なないようにした。 あとはこの集落にいる者たちの安全を確保するだけだ」

それを聞いたアールミスが獣人たちに命令する。

「私が【風魔法】で風の結界を張る! 女子供や怪我人を今すぐ私の周りに集めさせろ!!」

「わかったんじゃ! 皆の者、急いでここに集まるんじゃ!!」

老齢の驢馬人族(驢馬ロバの獣人)の言葉に戦えない獣人たちが次々と集まってくる。

「アールミスさん、風の結界はどのくらいもつんだ?」

「魔力が続く限りだと10分というところかな」

「わかった。 それなら僕のスキル(【現状維持】)でアールミスさんの魔力を維持する」

言うが早いかスティクォンは【現状維持】を発動するとアールミスの魔力を維持した。

「たった今アールミスさんの魔力を維持した。 これで魔力による枯渇を心配する必要はないから全力で風の結界を張ってくれ」

「わかった! 任せてくれ!!」

「僕は獣人たちに加勢してくる。 ウィルアムさんとビューウィはここをお願いする」

「畏まりました」

「ここは任せて行ってきなさい」

スティクォンは交戦している獣人たちのほうへと走る。

その直後、アールミスが【風魔法】で風の結界を張った。

「加勢する!!」

スティクォンは腰に差している鋼の剣を鞘から抜くと返事も待たずに魔獣へと斬りつけた。

その刃は喉元を切り裂いて血飛沫を上げる。

「誰だか知らないが感謝する!」

獣人たちも魔獣に負けまいと手持ちの武器で攻撃する。

だが、魔獣たちもただ黙って攻撃を喰らうのではなく、爪で引き裂き、牙で噛みつき、角で刺し、強靭な身体で体当たりしてきた。

もっともスティクォンの【現状維持】によって爪や牙、角による裂傷は防がれる。

ただし、体当たりを受けた者は吹っ飛ばされていた。

獣人たちと魔獣たちの戦いは激しさを増していくのであった。


1時間後───

魔獣たちの猛攻撃を耐え忍んで獣人たちが1人の死傷者も出さずに勝利した。

「やったぞ!!」

「俺たちが勝ったんだ!!」

獣人たちは魔獣たちを倒して大喜びだ。

「ふぅ・・・なんとか守り切ったな」

スティクォンは鋼の剣についた血を拭うと鞘に収める。

そこに狼人族(狼の獣人)鷲人族(鷲の獣人)がやってきた。

魔獣たちと戦ったのだろう、その身体には返り血があちこち付着している。

「助かったぜ」

「ありがとな」

「僕たちだけ逃げるのは後味が悪いからね」

スティクォンとしても目的の獣人を見つけるために友好関係を結んでおくのは得策だと考えていた。

戦闘が終わったのを確認してかアールミスが風の結界を解く。

女子供たちはすぐに獣人たちに駆け寄ると無事を喜んだり抱擁したりしていた。

「スティクォン様、お疲れ様でございます。 お怪我はしておりませんか?」

「大丈夫だよ。 僕よりアールミスさんのほうが大変だったんじゃないか?」

「スティクォンさんのおかげで私は大丈夫だぜ。 あれだけ長時間魔法を使ったのは初めてだけどな。 改めてスティクォンさんのスキル(【現状維持】)がヤバいと再認識したくらいだ」

アールミスとしても限界以上に魔力を放出し続けても枯渇しないことに苦笑いを浮かべていた。

「俺たちだけでなく女子供を守ってくれてありがとう」

「この集落の代表として礼を言う」

狼人族と鷲人族がアールミスに頭を下げる。

「よせよ。 照れるじゃないか」

アールミスは顔を真っ赤にしながらむず痒い気持ちになっていた。

「何か礼をしたいんだが」

「それならそこにいるスティクォンさんの話を聞いてやってくれ」

アールミスが親指でスティクォンを指さした。

狼人族と鷲人族がスティクォンに注目する。

「先ほども言いましたがここに畜産に詳しい獣人がいると聞いてやってきました。 できれば、その方を僕たちが開拓している場所に招きたいと思っています」

狼人族と鷲人族がお互いの顔を見た。

「多分だがそれって俺たちのスキルのことだよな」

「戦闘とは無縁のスキルだからな」

狼人族と鷲人族は自分たちが持っているスキルのことではないかと話した。

「俺のスキルは【陸殖神】っていうんだ。 主な力は地上で暮らしている動物たちを繁殖させるっていう力らしいぜ」

「俺のは【空殖神】だ。 空に関連する生き物たちを繁殖できるそうだ」

それを聞いたスティクォンが深々と頭を下げてお願いする。

「僕たちが開拓している場所に来て手伝ってほしい」

すると狼人族と鷲人族はほかの獣人を見て難色を示す。

「俺たちだけしかいないなら喜んで手伝いたい。 だが・・・」

「ここにいる大勢の獣人を置いて俺たちだけ行くのは気が引ける」

「そうですか・・・」

断られて引き下がろうとしたとき、アールミスが助け舟を出した。

「お前たちだけでなくここにいる獣人全員を連れてけばいいじゃないか」

その発想に驚く狼人族と鷲人族。

「ぜ、全員といってもここにいるのは少なくとも1000人以上いるんだぜ?」

「一遍に連れてくのは無理だろ?」

アールミスはすぐさま論破する。

「それなら何回かに分けて連れて行けばいいだけの話だろ? なぁ、スティクォンさん」

「ああ、一度では無理でも何回かに分ければ可能だよ」

それでも狼人族と鷲人族は難しい顔をする。

「だけどここには絶対安静な者たちもいるんだぜ?」

「それに行った先での食料はどうするんだ?」

不安を述べる狼人族と鷲人族にスティクォンが応える。

「怪我人は僕のスキル(【現状維持】)で1人の死者も出さずに連れていくことを約束する」

「食料につきましてもこの人数であれば問題ございません」

獣人たちにとっては難しい問題でもスティクォンたちからしてみれば対処可能なことばかりだ。

「・・・そこまで言うなら行ってみるか」

「そうだな。 邪魔でなければ世話になりたい」

「こちらこそよろしくお願いします」

スティクォンと獣人たちはお互い握手を交わす。

こうして無事スカウトに成功するのであった。


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