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69.小麦を作ろう

スティクォンたちができたてのワインとブランデーで初めての酒盛りをした結果、ほとんどの者が酔い潰れた。

「「「スティクォンさん! ごめんなさい!!」」」

シディアから事情を聞いたリル、ファリー、クレアが何度も何度も頭を下げる。

「気にしてないからもうその辺で・・・」

やっとのことでリルたちは謝るのを止めた。

「うぅぅ・・・なんで私あんなことしたんだろう・・・」

「飲んでいるうちに自分を抑えられないなんて・・・」

「あのワインっていうのは悪魔の飲み物です・・・」

リルたちは昨日の失態と酒という飲み物の恐ろしさを痛感していた。

「美味しい飲み物なのに・・・」

「それなら酵母を入れなければいいみたいですよ」

リルたちの愚痴を聞いたクーイが【料理神】で調べたらしい。

「その酵母を入れなければ昨日みたいなことにはならないんですか?」

「そうです。 ただ、時間が経つと発酵してしまい、適正な温度ならワインになるけど大抵はダメになるそうです」

「なるほど、要は搾りたての葡萄(ぶどう)に酵母を入れなければ果実水として飲めるわけだな」

「その通りです」

それを聞いてリルたちの顔が明るくなった。

「それなら今度からは酒が苦手な人用に酵母を入れないのも造ろう」

「そのほうがいいですね」

こうして、今後のワイン造りの工程では酒用とジュース用に分別することになった。


酒造用の保管庫の1階では酵母を作るための部屋、ワインを造る際に使う桶やクレアの【鉱石創造】によって造られた蒸留酒用の巨大な硝子器具が用意されていた。

蒸留酒用硝子器具の中の温度を85度まで上げてからスティクォンの【現状維持】で温度を維持する。

こうすることでワインを入れると硝子器具内で自然に蒸留される仕組みにした。

設備が整うとメルーアがあることに疑問を抱く。

「クーイさん、ワインを造る際に使ったこの酵母ってほかに何に使えますの?」

「ちょっと待ってください。 【料理神】」

クーイは【料理神】を発動して酵母を使った料理を検索する。

「えっと・・・この酵母でパンが作れます」

「パンか・・・」

「パンですの・・・」

それを聞いたスティクォンとメルーアが嫌な顔をして落ち込む。

「二人とも何か問題でも?」

「いや・・・その・・・」

「わたくし、パンは苦手です。 硬くて苦くて不味いイメージしかないですわ」

言葉を濁すスティクォンに対して、不味いと断言するメルーア。

「それなら美味しいパンを作りましょう。 今までの不味いパンの常識を払拭しましょう」

「・・・そうだな。 今までだって頑張って美味しいものを作ってきたんだからな」

「・・・そうですわね。 作るなら美味しいパンにしたいですわ」

クーイの言葉にスティクォンとメルーアが同意する。

「そうと決まればまずは材料を揃えましょう。 酵母のほかに水、塩、小麦粉が必要です」

「小麦粉か・・・そういえば小麦はまだ着手していなかったな。 ビールの原料である大麦と一緒に作ろう」

「それなら早速大麦と小麦を作りましょう」

スティクォンたちは麦を育てるために南西にある畑へと向かった。

「まずは田んぼだな。 リル、【農業神】で大麦と小麦について調べてくれるか?」

「任せてください! 【農業神】」

リルは【農業神】を発動して大麦と小麦について調べる。

「えっと・・・大麦と小麦は水にあまり強くないので、まずは土地を湿らす程度に水を撒きます」

「わかりましたわ」

メルーアは【水魔法】を発動すると水を霧状にして2筆(にひつ)同時に散布する。

「それから湿らせた土地に貝殻を粉末にしたのを撒いて土を耕します」

「貝殻の粉末でございますか。 すぐに用意いたします。 ファリー様、お手伝いをお願いいたします」

「わかりました。 みんな、いくわよ」

「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」

ウィルアムはファリーとドワーフたちとともに貝殻を取りに向かった。

しばらくして工具が入った箱と大量の貝殻が入った箱を持って戻ってくる。

ドワーフたちは箱からハンマーを取り出すと貝殻を砕いて粉々にしていく。

できあがった貝殻の粉末をホビットたちが湿らせた土に撒いて耕し始めた。

「大麦と小麦は種を植える間隔はだいたい20~30センチです」

「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」

耕し終わったところからリルの指示に従って2筆のうち1筆を大麦の種を、もう1筆を小麦の種をそれぞれ植えていく。

そこに水の散布を終えたメルーアが戻ってきて、リルから説明を受けると今度は【木魔法】を発動して地面の大麦と小麦の成長を促進させた。

栄養を得た大麦と小麦は芽を出し、立派な穂へと成長していく。

やがて穂全体が茶色く染まり、穂先が垂れて十分に実ったのが見てわかる。

リルは【農業神】を発動して大麦と小麦の状態を確認した。

「うん、問題ないみたい。 みんな、実ったから収穫しましょう」

「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」

ホビットたちは人海戦術で大麦と小麦を収穫し始めた。

根元に鎌の刃先を入れて次々刈り取っていく。

刈り終えた穂はスティクォンたちの目の前に運ばれてくる。

「大麦はビールにするから酒造用の保管庫に持っていくよ」

スティクォンは酒造用の保管庫へ収穫された大麦を運ぶ。

何度か往復してすべて運び終える頃には日が沈み、話し合った結果明日パン作りを行うことになった。


翌日───

スティクォンたちはクーイたちが住む茸の家に小麦を持って集まった。

「パン作りを始める前に小麦から小麦粉を作りましょう」

クーイは小麦を1粒取ると器用に殻を破壊して白い粒を取り出す。

「まずは小麦の殻を砕いて中にあるこの胚乳を取り出します」

「殻を砕くのにこれを使ってください」

ティクレは石でできた臼を取り出した。

「それは?」

「私の【技術神】で作った石臼だよ。 これで小麦を引けば殻と胚乳を別々にできるから」

「それは便利だな。 早速作業に取り掛かろう」

スティクォンたちは石臼を使って小麦を破砕していく。

臼をひくと殻と胚乳が分別し、胚乳が砕かれ粉になる。

「白い粉が出てきましたわ」

「これが小麦粉です。 この小麦粉を使ってパンを作っていきます」

こうして小麦から小麦粉を作り出したスティクォンたちは、本格的にパン作りに挑戦するのであった。


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