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64.酒造りに必要なものは?

死の砂漠の開拓地に戻ってきたスティクォンたち。

待ちきれないのかシディアが急かしてくる。

「シディア、落ち着け! クーイ、すまないが【料理神】で酒の造り方を調べてくれ」

「は、はい。 【料理神】」

クーイが【料理神】を発動すると酒の造り方を調べる。

「あ、あのぉ・・・ワインとビールがあるんですけどどちらを調べればいいでしょうか?」

『ワインだな』

「は、はいっ!!」

しばらくするとクーイが調べ終わったのか話し始める。

「えっとですね・・・ワインは葡萄(ぶどう)に酵母を加えて発酵させればできます」

「葡萄はすでにあるから問題ないな」

「はい。 メルーアさんとハーニさん、ビューウィさんのおかげでとても美味しい葡萄ができましたから」

リルは葡萄については問題ないと答える。

「そうするとあとは酵母だっけ? どうやって手に入れるんだ?」

「ちょっと待ってください」

クーイが【料理神】を発動すると今度は酵母について調べる。

「んんとぉ・・・酵母ですけど材料は葡萄や林檎などの果実、人肌より少し低い温度の水、それと砂糖です」

「砂糖ということは砂糖黍(さとうきび)を栽培する必要がありますな」

「リル、砂糖黍はまだ着手してなかったよね?」

「砂糖黍はまだです。 野菜や魚に使う胡椒やハーブなどの香辛料を優先的に栽培していたので砂糖黍までは手を出していません」

リル率いるホビットたちは基本食事に必要な食材を優先して作っているので砂糖の原料である砂糖黍などの嗜好品までは手を出していない。

「うーん・・・そうなるとワインを作るには最低でも砂糖が必要ということか・・・」

『リルよ、砂糖黍はすぐに準備できそうか?』

「それについてはメルーアさん、ハーニさん、ビューウィさん、ドレラさん、それとホビットのみんなが協力してくれればできると思います」

リルは【農業神】から得た知識を基に砂糖黍をここ(死の砂漠)で栽培して手に入れられることをシディアに伝えた。

『うむ、それなら早速着手してくれないか?』

「はい。 メルーアさん、ハーニさん、ビューウィさん、ドレラさん、手伝ってください」

「わかりましたわ」

「頑張って作りましょう」

「いつも通りサポートしてあげるわ」

「甘い物好き」

リルはメルーア、ハーニ、ビューウィ、ドレラを引き連れて早速砂糖黍を栽培するために南西の畑へと向かった。

「ワインということは樽が必要ですな。 ファリー様、クレア様、我々は樽作りをしましょう」

「ドワーフのみんなにも手伝ってもらいます」

「わかりました」

ウィルアム、ファリー、クレアはドワーフたちのところに移動した。

『クーイよ。 酵母というのは簡単にできるのか?』

「調べた限りは材料さえあれば簡単にできるようです。 ただ、酵母ができるまで少なくとも5日以上の時間が必要になります」

『うむ・・・我も時間だけはどうすることもできないからな』

時間と聞いてシディアは冷静になった。

「とりあえず砂糖ができるまでは酵母は作れないのだから待つしかないよ。 それよりもクーイたちに開拓地を見てもらってどこにこの家を置くか決めてもらおう」

「はい」

「ちょっと楽しみです」

「どんな場所なのか気になるからな」

クーイたちもスティクォンたちが死の砂漠をどう開拓させたのか気になるようだ。

「それじゃ、案内するよ」

『待て、スティクォン。 我も手伝おう』

珍しいことにシディアが手伝いを申し出る。

「シディア、いいのか?」

『うむ、我のために働いてくれるのだからこれくらい当然だ。 それに空から見てクーイたちの住処をどこに移動させるかを決めたほうがよかろう』

「なるほど、一理ある」

シディアの意見にスティクォンは納得する。

「シディア、お願いするよ」

『任せるがいい。 さぁ、我の背中に乗れ。 クーイ、ティクレ、アールミスも遠慮するな。 それと我のことは気軽にシディアと呼ぶがよい』

「の、乗ってもいいんですか!!」

「まさかドラゴンの背に乗れるなんて感激です!!」

「ははは、ドラゴンに乗れるなんてまるで御伽噺に出てくる英雄になった気分だ」

スティクォンはクーイたちと共にシディアの広い背中に乗る。

『それでは行くぞ』

シディアは翼を羽搏かせると空中に浮かぶ。

『さて、まずは案内か場所決めのどちらにする?』

「それなら案内をお願いします」

『では、行くぞ』

シディアは低速低空で移動を開始した。

まずは南東にある人工海へと向かう。

本来砂漠にはない光景にクーイたちは驚いた。

人工海に到着するとアリアーサ、ティエス、ソレーユたちにクーイたちを紹介する。

ソレーユの【吟遊詩神】が本当の事だと聞かされたティエスは驚いていた。

「え?! ソレーユの変な独り言は本当だったんですか?!」

「彼女たちはそれぞれ異なる種族のエルフなんだ。 ソレーユさんの(うた)の通りだったよ」

「自分でも半信半疑だったんですけどまさか本当になるなんて・・・」

これから酒造りに着手することを話すと酒を欲しがっていた海人たちから歓声が上がる。

できあがりは当分先だがそれでも酒が手に入ることを知って喜んでいた。

ティエスたちと別れると次に向かったのは南西の畑だ。

そこには色とりどりの野菜畑が広がっている。

リルたちのところに行くと早速砂糖黍の栽培に着手していた。

まずはいつも通り良質の種を作ってから本格的に栽培に移るようだ。

畑を見て回ったら最後に北西の住宅地へと戻ってくる。

「北東には行かないんですか?」

「ああ、北東はまだ未開拓なんだよ」

「そうなんですか」

マムモ、アーネル、シャンティたちにクーイたちを紹介する。

「布製品で欲しいものがあればすぐに作るわよ」

部屋内に置いてあったぬいぐるみを見てアールミスが目を輝かせた。

「こ、これってすぐに作れるか?」

狐のデフォルメぬいぐるみを指さしながら尋ねる。

「可能よ。 何を作るかにもよるけどね」

「とりあえずこれと同じ物を1つお願いするぜ」

「これが欲しいの? それなら持ってっていいわよ」

シャンティがぬいぐるみをアールミスに手渡す。

「いいのか? ありがとう!」

アールミスはぬいぐるみを受け取るとギュッと抱いて大喜びした。

案内も終わりスティクォンたちは茸の家に戻ってくる。

それからクーイたちが望んだ場所に茸の家を移動したのであった。


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